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第9話 悪意の新芽

「はぁ?」


戦闘を覚悟していたセレスは突然のカイルの勧誘に気の抜けた反応をした。


「私の剣とあなたの魔力があれば、魔王討伐もだいぶ楽になります。世界の平和のため、お願いできませんか?」


カイルは屈託のない、自信に満ち溢れた笑顔で言う


「ごめんなさい勇者様、魔王討伐も大事ですが、私は今別の使命を抱えています。申し訳ありませんが他を当たっていただけないでしょうか?」


セレスは丁重に断る


「おい!カイル様は勇者ってだけでなく王子なんだぞ?他に優先することなんてあるのかよ!」


後ろにいたソドンが怒鳴り、カイルはそれを手で『まぁまぁ』と制する


「失礼しました。突然のお誘いで困惑されると思いますが?貴女にとっても悪い話でもないんですよ?」


「と、言いますと?」


「知っての通り私は王子、次の王です。魔王討伐後は王妃として王宮に住み、勇者の血を受け継いだ子を産めるのです。私と貴女の子なら最強の遺伝子を受け継げると思うんです」


またもカイルは笑顔で自信満々に語る


「魔王討伐後はあなたの妻になるという事かしら?」


カイルとは反対に引きつった笑顔でセレスは聞き返す。


「お、おいセレス」


カイノスは冷や汗を書いていた。戦闘にならないにこしたことは無い。話を断るにしても穏便な方が良い。


しかしカイノスは知っていた。


セレスは短期なのだ。


カイノスの心配をよそにカイルは続ける


「ええ、あなた程の人でしたら第一夫人として迎え入れたいと思っています。」


「ずいぶん上から言うわね。アンタが良くてもこっちは願い下げよこの勘違い野郎。もう少し慎重伸ばして出直してらっしゃい」


カイノスは眉間を手で押さえる


「貴様!カイル様になんてことを!もう良いでしょう!斬り捨てて他をあたりましょう!」


ソドンは剣を抜く


「あら、剣を抜いたわね?戦う意志とみなして良いのかしら?」


セレスも魔力を高める


「セレス落ち着け。勇者様申し訳ない、この通り娘は精神に異常をきたしておりまして、勇者様の足手まといになりかねません。今日はお引き取り願えませんか?」


カイノスがセレスの前に出る


「ちょっとお父さん!誰が精神異常者よ!こんなやつら今討伐しちゃいましょ!」


「落ち着きなさいセレス!今ここで戦えばこちらも無傷ではすまない!」


しばらく沈黙していたカイルが口を開く


「今の言い方ですが、私たちと戦って、あなた方が戦って勝つ可能性があると・・・?」


「それは・・・」


カイノスはしまったという様な表情をして黙る


そこへ興奮さめやまぬセレスが言う


「勝てるわよ。試してみようかしら?」


セレスは魔力を更に高める。家が少し揺れる程に。


・・・セレスを怒らせないようにしよう


ブライは物陰に隠れながら様子を見ていたがセレスの強大な魔力に驚いていた。


「上等だぁ!2人ともここで剣の錆にしてやろう。」


詰め寄るソドンをカイルは腕で押さえ、少し黙ったのちに・・・


「そうかもしれません。あなたとカイノスさんの実力は首都まで知れ渡る程です。今回はあきらめます。また気が変わったらよろしくお願いします。突然の訪問失礼しました。仲間の非礼もお詫びします。」


カイルは深く頭を下げる。


「い、いいんですか?それにカイル様がこんな奴らに頭を下げて。」


「話が終わったなら帰ってもらえるかしら?」


「このアマ・・・!」


「ええ、今日は帰らせていただきます。失礼しました」


カイルは怒るソドンを半ば強引に連れて離れていく。


 「ふう、セレスよ、もう少し気を長くできないのか?ヒヤヒヤしたぞ。」


ドアを閉めたカイノスがどっと疲れたというように椅子にかける。


「ごめんなさい。でもムカつくじゃないあのチビ。余裕ぶってて鼻につくわ」


「大賢者はそんな事で怒らんぞ。そうだ、カイル、出てきて大丈夫だぞ」


カイルはひょこっと顔を出し、おそるおそるセレスの隣に座る。


「とりあえずの危機は去った。準備してドムス街を向かおう」


・・・一方カイル、ソドンは


 「ムカつく女でしたね、カイル様、あんな言いたい放題言わせて良かったんですか?」


カイルはソドンの方を向かず、何も答えない。


「カイル様?」


ソドンはカイルの顔を覗き込み旋律する。


「あの女・・・俺の誘いを断るどころか、この俺に向かってチビと・・・絶対に許さん・・・!必ず後悔させてやるぞ・・・!」


先ほどまでのような笑顔や余裕の表情はなく、怒りと憎悪に満ち溢れた表情でカイルは拳から血を垂らしていた。


生まれた時から王子として勇者として持て囃され、怠らぬ鍛錬で実力も身に付き、人生で思い通りにならない事は無かった。


身長の小ささを除いて。


ただ身長が小さくてもカイルになびかない女性もいなかった。


それゆえに今日起きたことは到底容認できるような出来事ではない。


カイルは報復を誓い、ジュベナイル霊峰を後にする。


 ブライ達に新たな悪意が芽生えている頃、3人はカイノスの自動車でドムス街に向かっていた。


「着いたらまずはブライのIDを取って、武具を買うか。」


「ドムス街ってどんなところ?」


ブライの旅していた時代にドムスという場所は無かった。


「うーん、王国も近寄らないという点では安全だが、そもそもの治安が悪くてな、強盗、略奪がはびこるスラムではあるが、金さえあればなんでも買える街だな」


大戦後に脱走兵や戦犯者が集まってできた集落が大きくなってできた街らしく、王国からも使者も何も来ない、見捨てられた場所がドムスという街だった。


「着いたぞ。ブライはともかくセレス、絶対にもめ事を起こさないようにするんだぞ。」


「はーい!大丈夫よ!早く行きましょ」


歩くセレスの後ろ姿をカイノスは不安しかないという様な表情で見ていた











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