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第4話 浦島的感覚

 「ゴボボッ!ガボッ・・・ガハアッ!!・・・ハアッ・・ハアッ・・・」


ブライは川底から這い上がり、呼吸を整えた。


「ここは・・・?そうだ!オグリのじいさん!」


先刻までオグリと共に王宮から逃亡し、崖まで追い詰められていた筈の自分がなぜ川底にいるのか理解することができなかった。


俺は崖から落ちて気を失っていたのか・・・今は・・・昼くらいか?クソッ!無事でいてくれよジイさんッ・・・


状況を整理し、当たりを見渡すが現在地も方角もわからない。

 

ここでジッとしていてもな。とりあえず川上に向けて歩くか


村も街もないな・・・人とも会わない。どこまで流されたんだ?今頃王国からの刺客も向かっているだろうな。武器も手に入れたい。


 半日程歩いただろうか、辺りが暗くなりはじめた時、前方に2つの光が見えた


ブライは警戒した。川沿いの草原に隠れるところはない。場合によっては素手で戦わなくてはならない。


「早いな・・・」


光の近づく速度が徒歩や馬車よりも早い。高速移動魔法かとブライも警戒を強める。


そして光の主は目視できる所まで近づいてきた。


「嘘・・・だろ・・・?」


光の主はブライにとっては見慣れているのに見慣れないもの、見るはずの無い物体であった。


正面に2つの光、鉄の装甲、4つの車輪、中には人間。ブライがまだ成田無頼であった時の世界では一般的だった乗り物。自動車。


元の世界に・・・戻ったのか?


ブライが唖然としていると自動車の中の男が声をかけて来た。


「アンタこんな田舎で何をやってんだ?しかもビショビショじゃないか!この辺に村や町はない。乗ってきな!家で暖を取らせてやる!」


「あ・・ありがとうございます・・・」


動揺しながらも男のいう通りに助手席に乗せてもらった。


「あの・・・ここはどこですか?」


自動車を見て元の世界に戻ったという可能性も考えたが、明らかに日本人ではないその男と言語が通じる。異世界に来た時からどの種族も言葉が喋れる者と言語が通じないという事はなかった。まあt、わずかながら車から魔力を感じる。まだ異世界なのだろうと理解する。


「ここは、そうだな・・・ナルディ山の南西のなんだが、ガルバディ共和国との国境手前の所だな。アンタどこから来たんだ?おっと、自己紹介が先だな。俺はダノン、都会暮らしが苦手でな、漁師をやってる。」


ナルディ山・・・確かマヤノが旅の途中で流行り病になった時に薬を生成する材料のティダの朝露を取りに行ったところだ。しかしガルバディ・・・共和国?あそこはガルバディ帝国という軍事国家で、あたりに戦争をしかける国、そしてナルディ山からはもっと離れている筈・・・


疑問はあったが、助けてもらった身で自己紹介が遅れてしまったと、慌てて返す


「よ、よろしくお願いします。俺はブライです。ラムタから川を流されてたみたいで・・・ナルディ山ってことはこの辺はアイゼル国のあたりですかね?」


山、川、海と自然に囲まれ、資源の豊かな国アイゼル。旅の途中に立ち寄り、料理がとても美味しかったのを覚えている。


「歴史が得意なのかな?アイゼルは大昔にラムタの領土になっているからね。ラムタのどこから流されたんだい?」


アイゼルがラムタの領土?そんな筈はない。しかし先ほどからずっと何かがおかしい。自動車、ガルバディ共和国、アイゼル国。


ここでブライは仮説を立てた。まず浮かんだのがタイムスリップしている可能性、他には別の異世界に転生している可能性、もしくは元の世界と混ざってしまった可能性。


「・・・今って、何年でしたっけ?」


「何を言っているんだ?今はヴィオ歴1621年だよ」


間違いない。タイムスリップしている。魔王を倒したのが1121年。500年の時が経っている。文明の発達も納得行った。そして・・・


「魔王は復活したんですか?」


「そうみたいだな!でも勇者様がこの前討伐に向けてラムタ城から旅に出発したらしいからな。それにラムタ軍の軍事力も相当なもんだ。魔物も魔族もほとんど奴隷や家畜だし、安心だよな!」


勇者・・・?結局ブライは跡継ぎは無く、勇者の血は自分のもとから引き継がれている筈がない。新たな勇者が生まれたってのか?


「着いたぞ」


車は海沿いの小屋に着いた。


「まぁ何もないところだけど、とりあえず風呂入って温まりな!」


「ありがとうございます。」


・・・


「生き返りました。何から何までありがとうございます。」


風呂上がりにブライはダノンに礼を言う。以前は火を起こして風呂を焚いていたものが、魔力で電気と炎を使い元の世界の様にひねってお湯が出る形になっていて驚いた。


「いいってことよ!」


「重ね重ね申し訳ないのですが、書庫があるような場所に連れて行ってもらいたいのですが・・・もちろんお礼はさせていただきます。」


無料で頼むのも図々しいと思ったので、ブライは懐から金貨を取り出した。


「ん?おい、そりゃ大昔の金貨じゃないか!?とんでもない価値だぞ?そんなもの受け取れないよ!」


どうやらこの500年の間に貨幣も変わっているらしい


「そうなんですか?何枚かあるので、受け取ってもらわないわけにはいかないので、少しで良いので現在の貨幣と交換してもらえないでしょうか?」


「い、いいけど、アンタ一体何者なんだ?まるで過去から来た人みてえだな!ハッハッハ!」


するどい、とブライは思った。ただ言っても信じて貰えないだろう。とにかく500年の間に何があったか調べなければ。


「まぁいいや、今夜はもう遅い。明日になったら山の向こうのムンバ地区に連れてってやるよ。今日は2階の部屋使って良いから、寝よう。」


ブライは一人考えていた。500年前のあの後、オグリはどうなったか。その後のラムタ国は?オグリの孫マヤノは無事だったのか。そしてこの時代でどう生きていくのか。


そんな事を考えながら眠りに落ちた。


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