第15話 教団幹部エルム
「あの2人、うまくやってるかしら・・・」
ブライとミロクが教団内に入って数時間、エルムが教団内に入っていく事も確認したセレスは不安に思っていた。
「まぁ、ああ見えてブライはしっかりしてるし、ミロクはちと心配だが大丈夫だろう。何かあれば転移魔法でその場からは離れられるしな」
一方ブライとミロクはエルムの演説が終わり、マヤノ教への勧誘を激しく受け、物陰に隠れながらエルムの控室を目指していた
「いくら何でもしつこすぎだろ・・・エルムに出て行かれる前に接触しないとな。」
「でも、ぶきもなしでたたかえるのー?」
「護衛達はともかく、エルムは無理だな、ここで武器を調達するか、外でカイノス達と合流しないと」
その後教徒に見つかることもなく、屈強そうな護衛が見張っている部屋を発見した。
護衛は2人か・・・音を出さずに倒せるか?しかし倒したところでどうする?服を変え入れ替わるにはサイズが合わなすぎる、出ていくのを待って尾行した方が良いのか?
ブライがエルムをどう攻略しようかと考えていたその時
「何かお困りごとですか?」
真後ろに立っていたその男こそがエルムだった
なっ・・・気配を全く感じなかった、いつのまに後ろに・・・!
「あっ、あの、えーっと、トイレ探してて・・・」
苦し紛れの嘘が精いっぱいだった
「そうでしたか。ご案内いたしますよ。こちらへどうぞ。」
エルムは笑顔でブライとミロクを案内する
「いやー、広い施設ですね。なかなかトイレに着かないもんな~」
どうする、人気も無いし今やっちまうか?いや、隙がない・・・それにしてもバレてないのか?
「お2人は教徒の方では無いですね?」
「えっ、ああ、はい。死にそうになってた所を助けて頂いて・・・妹がここまで運んで来てくれたんです。」
「その小さな体でここまで?良くお兄さんを運べましたね」
ギクーーーーーッ!
「そそそそうですね!妹は昔から力自慢なんですよーハハハ・・・」
「うん、みろく、ちからもちー!」
「お兄さん思いの妹さんですね」
ふぅー、危ない危ない。しかしボロが出るのも時間の問題だな。やっぱりこの施設内で闘うしか・・・
「着きましたよ」
トイレと案内された場所はトイレと言うには広く、静かな、何もない部屋だった
「ここがトイレ?あれ、壁にしちゃってとかそういう事かな・・・」
ブライは現実から目を逸らす
「こんな所まで乗り込んでくるなんて、昔の勇者殿は大胆な行動に出ますね」
しかしこうかがなかった
「勇者ブライが復活していることは聞いていましたが、ここで会えたのはラッキーでした。大方ジュベナイルの封印を解く為でしょう」
「バレちゃ仕方ねぇな、でもなんで1人なんだ?ここの人間たち全員に襲わせりゃ楽に捕まえられたろ?」
「あなたというカードがあればラムタ国に恩も売れて、私も良い立場に立てるでしょう。教団の手柄にはしたくなかったものでね」
「なるほど、巨大宗教も上層部は一枚岩って訳じゃないんだな、ま、こっちもその方が都合良いや。ミロク」
その瞬間ミロクがエルムに飛び掛かる、ブライが加速魔法をミロクにぶつける
「初連携にしちゃ上出来!行けぇぇぇぇ!」
「えーーーーーい!」
ミロクが拳を繰り出しエルムの顔の中心にヒットする
筈だった
エルムが立っていたその場所には何もなく、ミロクのパンチは空を切った
「あれ?いなくなった」
「こちらですよ」
その刹那、エルムはブライの後方に立っていた
なっ・・・まったくよける動作も見えなかった・・早いとかそんな次元じゃねえぞ?
「今度はこちらからいきますよ」
エルムが言葉を発した直後、ブライの眼前にエルムの杖が迫っていた
「うおっ!あぶねぇ!」
間一髪ブライは避けることができたが次の瞬間
ドゴォッ
体勢を立て直す前に第2撃がブライの胴にヒットした
同時にミロクも攻撃に転じていたが、エルムの頬をかすめるに留まった
「やっかいなお嬢さんですね、先に始末してあげましょう」
「べーだ!かんたんにはまけないよー!」
ミロクが挑発した次の瞬間、またもエルムは一瞬でミロクの後ろに移動し、ミロクは吹き飛ばされる
「きゃあ!」
吹き飛ばしたミロクが受け身を取る場所にエルムは先に着いていた
「終わりです」
左手を氷の刃に変えたエルムがミロクを待ち構える
横からブライがミロクを突き飛ばし軌道を変える
「あぶねぇあぶねぇ、しかし防戦一方だなこりゃ」
「チッ・・・2対1は面倒ですね」
その後もいくら攻撃をしかけても後ろを取られ、2人は攻撃を受け続けた。
「ハァ・・・いてぇな。こりゃ本格的にヤバイぞ」
あんな早い速度で移動できる奴は人間でも人外でも見たことない・・・もしかすると・・・
またもエルムが目の前から消え、ブライの後頭部へ氷の刃を突き刺したその時
エルムの氷の刃は砕け散った
「何っ・・・!?」
「オラァ!」
ブライの硬化魔法のかかったパンチがエルムのみぞおちに入る
「ぐぅっ!」
「へへへ、やっぱりな。硬化の魔法をかけといて良かったぜ。」
エルムは呼吸を整えながらブライを睨む
「お前、時間を数秒止める魔法使えるだろ?2、3秒くらいかな移動のモーションも無いし速すぎると思ったんだよな」
「ハァ・・・ハァ・・・フフフ、歴史書には勇者ブライは知能が低いと書いてあったんですがね、思ったより頭が回るようで」
「とりあえずその本の著者ここに呼べ、ま、とにかくお前の能力はわかった!今度はこっちの晩だぜ」
ブライはミロクにも硬化魔法をかける
「仕組みがわかったところでどうにかなるとでも?」
「お前時間止めてる間、他の魔法使えないだろ?」
「・・・ッ!」
「魔術師なのにさっきから物理攻撃ばっかりだもんな。物理で俺たちに勝てると思うなよ」
時間を止めエルムはブライに殴りかかるが、ダメージは通らない、時間停止が解けたその瞬間、ミロクの膝がエルムの顔面に突き刺さる
「ぐああああ!鼻が!私の顔が!」
「さーて、第2ラウンドといきますか」