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ちょっと煮詰まってきたので、趣向を変えて書いてみました。
(とうとうここまできた)
フェンデル王国の王宮にて、その彼女はいた。
王宮の廊下には高い調度品が置かれており、花なども飾られている。粗相をしたものは只ではすまされないだろう。
そこへ数名の少女が歩いてきた。
一番前を歩いているのは侍女長で一番後ろにいる少女は長い前髪で顔の半分を隠しており、陰鬱そうな雰囲気を持った少女だった。
そのとき風が吹いて、廊下ですれ違った従僕が偶然その少女の顔を見てしまい思わず呻いた。
―――彼女の顔は酷い火傷跡があったのだ。
肌が醜く爛れており、その顔を見たものにはあまりいい印象を与えることはなさそうだ。
(あら、酷い顔色ね。このあと大丈夫かしら?)
従僕に顔を見られた彼女は反応を気にすることなく、ペコリと礼をしてまた歩いて行った。
※※※
「失礼します聖女様。新しい侍女候補をお連れしました」
「はぁ~い、入って~」
部屋には黒髪黒目の可憐な少女がおり、その後ろに見目麗しい複数の男性がいた。
侍女長カーラは自分の後ろをついてきた新しい侍女見習い5人を順に紹介していく。
「そしてこの子はレンカ。一番仕事ができる子ですので顔の半分を髪で隠すことをお許しください」
侍女長に紹介され、レンカと呼ばれた少女は一歩前に出て礼をする。
対する聖女様は目をキョトンとさせ、不思議そうに尋ねた。
「どうして隠しているの?とても綺麗な顔をしていると思うのだけれど?」
「恐れながら申し上げますと、レンカは顔に酷い火傷がございます。あまりにも醜いので聖女様の御目汚しになるので髪で隠すようにしております。また、声も出ないようですのでどうかご容赦を。お優しい聖女様の下で誠心誠意働くように申し付けております」
「まぁっ!!それは可哀想に!」
途端に憐れむような顔でレンカを見る聖女様。
レンカに駆け寄り手をとってこういった。
「今まで辛かったでしょう?でももう大丈夫よ!だって私は聖女だもの!守ってあげるわ!」
「さすが聖女様です、とてもお優しいことだ」
「アイカは本当に素晴らしい女性だな」
後ろの男性たちが口々に褒めはじめ、聖女を取り囲んでいく。
そのまま自分たちの世界に入りはじめたのを見て、侍女長が仕事をするよう指示を出す。
紅茶の用意をする者、寝台を整える者、本日の聖女様のご予定に付き添う者と分担してそれぞれ動き始める。
レンカも仕事をしようと動き始め、盛大に転んだ。
足を引っかけられたのだ。
一体、誰が―――・・・・。黒の瞳と目があった。
「まぁ、本当に酷い顔ね。怖いわ・・・」
「アイカこちらに・・君、聖女様にいつまでその顔を見せている、早く仕事をしろ」
隣にいた金髪の男性が聖女様を抱き寄せ、レンカに命令する。
レンカはサッと立ち上がって礼をして、仕事のために部屋を出た。
(あの女が・・姉さんの仇ね・・ふふっ、精々楽しい時間をお過ごしくださいな)
※※※
その夜。
王城の門番が二人あくびをしながら、世間話という雑談をしていた。
「最近は、聖女様のおかげで俺たちの仕事も楽ができるぜ」
「全くだ!魔物共もめっきり減ってきたしな!」
彼らは気づかない。
風もないのに松明がゆらゆらと揺れていることに。
そして、誰かが傍にいることに彼らは気づかない。
次の日の朝、門番二人が首のない死体で発見された。
城の使用人がざわざわと騒ぐ中、レンカは静かに眺めていた。
「さぁ、復讐をはじめましょう」