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 「ついに、美南さんに正体がばれてしまいましたね。

 僕は、霊は霊でも、生き霊です。だから、『桜谷翔』という人間は、この世に存在したことはありません。

 あと、これで僕が西神社に行きたくなかった理由も、お分かりになって頂けたかと思います。

 僕は、生き霊ですが、本当に、美南さんのことが好きでした。だから、美南さんと離れたくなくて、別れたくなくて…。

 あらゆる種類の霊を成仏させる、西神社には行きたくなかったんです。

 でも、僕は今、こうも思います。

 これ以上、美南さんを引き止めておくわけにはいかない。僕は、幽霊だから、美南さんを幸せにすることは、できない。だから…、

 僕は、美南さんとお別れしないといけません。

 美南さん、今まで本当に、ありがとうございました!幽霊の僕を、ここまで楽しませてくれて、ここまで好きになってくれて、僕は本当に、感謝しています。

 だから…、

 さよなら、美南さん。

 あと、言い忘れていましたが、僕の『生き霊』を作り出したのは、ある人物、美南さんにとって身近な人物です。その人物は、男性で、美南さんのことを本当に、好きでいる人物です。

 僕は、その人なら、美南さんのことを任せられると思い、身を引くことに決めました。

 これで、僕との交信も、終わりですね。最後に、『ありがとう』を直接美南さんに伝えることができて、本当に良かった。

 これで、正真正銘の、『さよなら』です。

 では、失礼します。」


 翔さんとの交信を終えた私は、おばあさんの小屋を出て、走り出していた。

 今まで、どうして、気づかなかったんだろう。

 どうして、見過ごしていたんだろう。

 私の心の中は、翔さんとの交信を終えた直後、ある「あいつ」への想いで、支配された。

 『翔さん、私も、翔さんのことが大好きでした。

 翔さんと過ごした時間は、かけがえのないもので、私にとって、大切な想い出です。

 だから、さよなら、翔さん。

 それと、私、気づいたことがあります。今まで、ずっと気づかなかったんですが…、

 私、『あいつ』のことが好きです。

 『あいつ』は、翔さんと違って背は高くないし、気も利かないし、ちょっとがさつな奴です。

 でも私、気づいたんです。そんな『あいつ』との他愛もないやりとり、どうでもいい会話が、私にとって、本当に大切なものだったんだ、って…。

 だから翔さん、ごめんなさい。これからはその『あいつ』と、幸せになります!

 最後に、今まで本当に、本当に、ありがとうございました!』

 私の想いを、私はどれだけ、翔さんに伝えることができただろうか。本当に、翔さんには、感謝してもしきれない。

 そして、私の足は、私の職場、川北園の方に向かっていた。本当は、

「今日は風邪で休みます。」

と言っていたので、職場には行きづらいのであるが、そんなことは、今の私にはどうでも良かった。

 私には、今の自分の素直な想いを、伝えたい人がいる。

 それを、「あいつ」に、伝えないといけない。

 そして、私は川北園の玄関を勢いよく開け、休憩中の職員室の中に入り、こう叫んだ。

 「哲人!」

それは、私が本当の幸せを見つけた、瞬間であった。 (終)


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