語り継がれた物語
ここでチラッとこの世界のお話を。
色々と矛盾等あるかもしれませんが、変なところは随時修正しつつ、更新していきます。
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シュヴァルトという名の妖精が住む森を中心に、東西に対の力をもつと言われる大国があった。
東の国は、サンフェリオ国。
西の国は、ムーンサルト国。
それぞれの国は、太陽と月の女神を信仰していた。それはひとえに巫女の存在があったからだ。
サンフェリオの巫女は太陽の力、光魔法を。ムーンサルトの巫女は月の力、闇魔法の力を持って生まれる。
生まれるのは、王族や貴族の子とは限らず、平民の中から生まれることもある。
その為、金欲しさに偽の巫女を祭り上げ、王族に謁見を申し出るものも少なくない。
しかし、この巫女はある1つの特徴を持って生まれる。
生まれながらに、首に水晶のついたペンダントをつけているのだ。そして、それは決して取れないし、また触ることが出来ない。
とれるのは、巫女が亡くなるか、子を産んだ時だ。そうすると、ペンダントは消えてなくなり、次の巫女がこの世に誕生する。
巫女の力は新な巫女に受け継がれるため、生まれた子は巫女程の力はないが、それぞれに光魔法と闇魔法の力を持って生まれた。
そうして、次の巫女が成長するまでの間の巫女の代役を請け負うのだ。
そうやって、強大な守護の力と魔力を持って、巫女は国を繁栄に導いた。
そんな2つの国には、とある不可侵条約が結ばれていた。
『サンフェリオとムーンサルトは決して結ばれてはいけない』
永らくその条約は守られてきたが、運命の悪戯なのだろうか。その2人は出逢ってしまった。
サンフェリオに、女にしか与えられないはずの巫女の力を持って生まれた王族の男の子がいたのだ。
2人はまるで、出逢うことが運命付けられていたかのように惹かれあった。
条約のことは知っていたが、国の力を外に持ち出さないためのただの迷信めいたものだと軽い考えでいた。
だから2人は周りに内緒で逢瀬を重ねた。
その考えが覆ったのは、ムーンサルトの巫女が子を産んだ時だった。
シュヴァルトの森にある小屋で、産声を上げたその子は、生まれたその瞬間にその内に秘めた力を暴走させた。
シュヴァルトの森全体を包み込むような大きな光の渦は数刻の後消えたが、その光と共に2人の巫女と、そして、生まれたばかりの赤子も姿を消していた。
その場にいた侍従や乳母は、必死に周囲を探したが、なんの痕跡も残さず彼らは消えてしまった。
ーそして、両国から、巫女は途絶えてしまったー
いなくなった巫女の次の巫女は、待てども待てども産まれなかったのだ。
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そうして何代か世代交代を繰り返し、光の巫女と闇の巫女をなくした両国の王家は、強大な守護の力と魔力を失い、次第に魔法は稀少な存在になっていった。