貴女に出会えた奇跡【~過去語り~ルルージェ視点】
私の名前は、ルルージェ・ヴァレンティノ。
公爵家の長女として産まれたの。
軍部の長を担う父は、国王陛下の信頼も厚く、将来的に私は王族に嫁ぐか、有力貴族の妻になることがほぼ約束されていたわ。
そんな私がディースレイド殿下にお会いしたのは、彼が5才の時。当時私は10才だったわ。
貴方は、知っているかしら?
殿下は当時王太子であったイルバーノ殿下とその母上…つまり当時の正妃様に、ずっと生活を脅かされていたの。
毒殺や暗殺未遂は当たり前で、その対象はディースレイド殿下だけではなく、そのご生母であらせられる現正妃様にまで及んだわ。
父はその度に何度も危機を救ってきたようだけれど、父の目の届かない所では多くの被害を受けていたらしいわ。
ある茶会で殿下にお会いした時、私は思ってしまったの。
"あぁ、なんて暗い瞳をしているのだろう。希望というものを何処かに置き忘れてしまったみたい"…と。
その後とある傷害事件がきっかけで、ディースレイド殿下は益々周囲と距離をとるようになっていったわ。見ていて痛々しいほどに…ね。
陛下とサラ様の仲睦まじいことは父もよく知っていたから、後ろ楯になるためにと、婚約話が出ていたのも知っていたわ。
私は、それもいいと思っていたの。
どうせ女は自由には生きられないし、あの第一王子の妃になるくらいなら、この可哀想な第二王子の傍で私くらい寄り添ってあげよう…って。
…ふふ、卑屈な考えでしょ?
私はね、憐れんだの。【異端者】と呼ばれ、恐れられる孤独な王子。少ないながら魔力持ちの私は、そんなに恐ろしいとは思っていたかったから。…だからこそ、同情したの。
何もかも自由に生きられない、この第二王子に。
私の方がまだましだって。
…酷いでしょう?私はね、別に清廉潔白な人ではないのよ。公爵令嬢として、人に恥ずかしくない程度にマナーや教養を学んできたと自負しているわ。でもね、その心は別に綺麗でもなんでもないの。
…ほんとはもっと自由にやりたいことをして生きたかった。貴族の娘として生きてきた私が、そんなことをするのは無理だとわかっていたけれどね。
そして、そんな関係性はディースレイド殿下の10歳の誕生パーティーの日をきっかけに何もかもが変わったの。
ほんとなら、あの日、何事もなければ、私は父を介して改めて殿下と顔合わせをして婚約する予定だったの。
…でも、その前に事件が起こったわ。
その件に関しては、貴女の方がご存知かしら?
何はともあれ、行方不明のディースレイド殿下が発見されたと聞いて、後日改めてお会いしたときには、もう、私の知る殿下ではなかったわ。
まるで、憑き物でも落ちたかのように、瞳には光があって、希望に満ち溢れていたわ。
そして、こう告げたの。
『ごきげんよう、ヴァレンティノ公爵令嬢。
貴女に、どうか御協力頂きたいことが御座います。お力を御貸しいただけませんか?』
その時にね、仮の婚約者として誓いを立てたのよ。…王城に巣食う悪を排除するために。
そうして、数年であっという間に彼は国の中枢を変えていったわ。
まず、イルバーノ殿下と正妃、そして、暗殺未遂を犯したボルモア公爵とその親類共々、国外追放したわ。
そして、その悪事に連なる貴族の粛清も行われたの。その最たる人が、当時の宰相よ。
そして、ミュラー公爵がその後を継いで、今に至るってわけなの。
***********************
「殿下は、貴女に出会って、変わったのだと言っていたわ。」
「…私に…」
王妃様にも言われたけれど、私がしたことで何故そんなにもディーが私を想ってくれるのか、本当にわからない。
聞けば聞くほど場違い感が半端ない。
「…それにね、間接的にとはいえ、私も変えてくれたの。」
「…え?」
どういうことかとルルージェさんを見ればにこやかに微笑んでこちらを見ていた。
「魔力を持っている人が、嫌な思いをしないように。
いつかやってくる未来、貴女を迎える為に、【異端者】の価値観を変えようと行動に移したのが、あのルルージェ加工店の出来るきっかけなのよ。」
あぁ、そういうことか。
王妃様が言っていたこと、そして、ルルージェさんがあそこにいた理由。
ようやく理解出来てきた。
ルルージェさんは、仮の婚約期間中に精霊の存在を諭され、その後契約を結んだ。自由を求めていたルルージェさんは、ディーに相談してあの加工店を開くことを提案され、婚約破棄後、あの街に移り住んでルルージェ加工店を開いたらしい。
「だから、私とあの人は何もないのよ。」
そう言って安心させるように私の手を取り微笑むルルージェさん。でも、私は曖昧な笑みを返すしか出来なかった。
というわけで、ルルージェさん視点です。
なかなかディー本人が出てこない…。
主役なのに…主役なのに…っ!!(笑)
近いうち、ディー活躍の場を作れればと思います…っ!!( ̄- ̄)ゞ




