秘密の特訓
そんなわけで、無事にお金を手に入れ、新しい洋服もたくさん手に入れました。
洋服は、なんとルイが選んでくれました!!
…これがまたセンスが良い服ばかりで、私はルイは女たらしに違いないと心の中で呟きました。
「いっ、痛!ルイ!!何するのよー!」
「いや、なんとなく」
…心の声も駄々漏れのようだ。
ルイにほっぺをつねられました…痛い…
絶対ルイは敵に回ってほしくない人ナンバーワンだ。
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そんなまったりライフを堪能していた6歳の頃、あの事件が起きた。
その日も水晶作りをしようと1人で特訓をしていた。
目的は2つ。
1つは、妖精達の力を借りずに、1人の力で水晶を作りたかったから。
あと1つは、妖精達には内緒で、ある実験をしたかったから。
「よぉし!今日こそ成功させるぞー!」
太陽が丁度真上に昇ったのを確認して、私は手の先に意識を集中させて、両手を空に掲げる。
実は、私は四大精霊の存在を知ったときから、あることに興味を示していた。
月や太陽の精霊に会ったことはないけれど、月や太陽にも力があるんじゃないかと。
頑張れば、水晶に出来るんじゃないかなって。
完全な興味本意から始まったこの実験だけど、結果は上々。
やっぱり四大精霊の力ほど簡単にはいかなかったけど、月の欠片(と私は名付けている)は、なんとか水晶にすることが出来た。
月のような白い水晶なのかと思いきや、オニキスのような真っ黒な水晶になった。
…宵闇の色ってことかな?
が、ここからが大変だった。太陽の力は、日中他の精霊の力も盛んになっていて、集めようとすると、うっかり緑とか黄色とか違う色が混ざってしまう。
そうやって何度も試行錯誤を繰り返すうちに、今の条件を導きだした。
『月の力が一番弱まる日の昼の太陽が真上に昇ったとき、もっとも力が満ちる』
つまり、新月の日の昼間の太陽が昇ったとき、今日、というわけだ。
色々失敗を繰り返した結果私が考えた仮説である。
そんなわけで、意識を再び手の先に集中させる。
じんわりと温かくなる感覚が全身を包んでいく。
…あれ?なんだろう?まるでお母さんに抱き締めてもらってるみたい。
おかしいなぁ。この世界に、私の親はいないのに…あれ?また違和感。
私、人の子だよね?
なんで両親がいないの?
転生したのに、なんで、産まれた時から私が目を覚ますまでの記憶がないの…?
今まで何も疑問に思わなかった部分が一気に私の中で大きな渦となって拡がっていく。
指先に何かが当たる気配がして、私は焦点の合っていなかった目をゆっくりとそこに向ける。
手のひらに乗っていたのは、真珠のような真っ白に輝く水晶。
それと連動するように、胸元に隠していた月の欠片が光り、瞬く間に森全体を包み込むような大きな光の渦が上がった。
「マリー!!!」
意識を手放しそうになる寸前、私が見たものは、今まで見たこともないくらい焦りと困惑を滲ませたルイの顔だった。
なんだか、王子様ポジションがじわじわルイに取られていく気がします。
…おかしい…こんなはずじゃあ。