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ルルージェさんと侯爵令嬢。

「ハーベイ侯爵令嬢。

ここに貴女がいることは、お父上はご存知なのかしら?

マリエリア様のことは一部の限られた方しか知らされていない機密事項よ。一体誰に聞いてこちらにいらっしゃったのかしら。」


ルルージェさんは、綺麗な瞳をスッと細めて侯爵令嬢に対峙する。

侯爵令嬢はその気迫に圧倒されながら、しどろもどろに言い逃れをしようとした。

しかし……。


「…そ、それは…う、噂で仮婚約者様がいらっしゃったと聞いて……っ」


「…噂ね。ご令嬢方の前には一切姿を見せず、王族と一部の限られた者としか交流していないマリエリア様が、一体いつご令嬢の噂話に上がるのかしら?」


お見事…としか言いようがない。反論の余地もなく、侯爵令嬢はだんまりを決め込む…かと思いきや、顔を上げて話し始めた。


「…わ、わたくし、ディースレイド殿下には、ルルージェ様のような素晴らしい方が相応しいと思って婚約者候補を辞退したのですわ。


……っそれなのに、何故こんな何処の家の者かもわからない田舎者が、仮婚約者候補なんですの!?

…わたくし、どうしても納得出来ないわ…っ!!」



最初の言葉に、ズキッと胸が痛んだ気がしたけれど、次の言葉に呆れを通り越して感心してしまった。


結局、ルルージェさんのことを立てるようなことを言っておきながら、自分が選ばれず、いきなり出てきた見ず知らずの私が仮婚約者になったのが気に入らないだけなのだ。自分勝手にも程がある。


彼女は、プライドやら嫉妬やらの気持ちから、こんな行動に出たのだろうけれど、今回の問題はそんな些細なことでおさまらない問題だ。

けれど、当の本人はきっとそのことに気付いていない。


第三者であるルルージェさんの方がよっぽど理解しているだろう。


その厳しい表情からもその様子が窺える。


「ハーベイ侯爵令嬢。

私が素晴らしいと思って下さったことは嬉しいわ。


…けれど。

貴女の行動は、一歩間違えれば国家反逆罪になってもおかしくないのよ。それを正しく理解していて?」


その言葉を聞き、分かりやすいほど動揺を見せる侯爵令嬢。


「…っな、何故そのような……っ!!

わたくし、殿下にはもっと相応しい方がいらっしゃるはずだと、ただ、その方にお伝えしたかっただけで………っ」


「先程私が言った言葉を、もう忘れてしまわれたのかしら。

マリエリア様が仮婚約者として、この王宮に滞在されているのは、【最重要機密】なのよ。つまり、どこにも公表はしていない情報ということ。

それを一令嬢でしかない貴女が知っているということは、すなわち、どこからか情報が漏洩しているということなのよ。」


「………あ……っ」


やっと、ルルージェさんの言葉の意味に気付いたのだろう。

ハーベイ侯爵令嬢は、顔を真っ青にしてガタガタと震え始めた。


「…詳しい話は、私ではなく、しかるべき場所でお話なさって。

…そこにいるわね?彼女を頼んだわ。」


「…はっ!」


いつの間に近付いていたのだろう。

気付けば近衛とおぼしき騎士が複数控えていて、あっという間にハーベイ侯爵令嬢を連れて姿を消してしまった。


呆然とその光景を見送っていた私は、目の前にルルージェさんが近付くまでその存在に気付けなかった。


「マリエリア様、どこもお怪我をされていらっしゃいませんか?」


「…っ!!は、はい!

私は大丈夫です!」


突然視界にさらさらと光に反射する綺麗な金髪が見え、やっと焦点があった。

目の前にいるのは、どこからどう見てもルルージェ加工店の店主のルルージェさん。

けれど、その格好は街娘のそれではない。

…噂は、本当だったということか。


「…あ、の…。

ルルージェ、様、は、貴族のご令嬢…だったのですね?」


その反応を見て、ルルージェさんは苦笑いを浮かべ私の手を握ってきた。


「様なんていらないわ。

今まで通り、ルルージェと呼んでちょうだい、マリエリア様。


…それから。私の身分はご想像の通りよ。

私は、ルルージェ・ヴァレンティノ。

ヴァレンティノ公爵の娘よ。

黙っていてごめんなさいね。」


そう言って、令嬢の挨拶をしたルルージェさん。


その姿は、女である私が見惚れるほど、優雅で美しい挨拶だった。

またまた遅くなりました!!(>_<)

新しい登場人物が、出てくると人間関係複雑になってきて頭を悩ませます。


ルルージェさんの再登場は、ずっと書きたかったシーンなので、頑張って彼女には活躍してもらおうと思います(*´∇`*)

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