○○からの招待状
「…なんで、こうなったのかしら…。」
私は重い溜め息を溢し、独りごちた。
この魔研に留まるようになってから、早くも1週間。ディーは本当に仕事してるのか不思議に思うくらい毎日会いに来た。
でも、間違いなくディーは優秀なんだと思う。
毎日来ると言っても、その時間帯や長さは日によってまちまちで、時には10分程のお茶の時間を取ったと思ったらすぐに戻っていくなんて日もあったりで。
私が身バレしたくないのをわかってるからか、ディーは魔研に来るときは私がお城で働く人と鉢合わせしないように伝令は全て精霊にさせていた。
そんなディーの働きっぷりに尊敬の念を抱くようになったけれど、毎日のように告げられる愛の告白は笑顔でスルーしてきた。
正直、『愛してる』とか『君が必要なんだ』とか毎日のようにあんな格好いい人に告白されて、悪い気はしない。
…というより、恥ずかしくて堪らない!!
前世、恋愛歴皆無の真理恵の記憶のせいか、それとも生粋の日本人の魂故か、こういう台詞に慣れてないのよ!!
赤面しているのを悟られないように毎日必死にかわしている私を横で楽しそうに生温い視線が向けられている状況も余計羞恥を煽るのよね…っ。
お願いだから、助けて下さい、レイニー様!!
そんな私の心情はさておき。
そんな風に私の約束を守って顔を見せてくれているはずなのに、何故、こうなったのかしら…。
「王妃様のお茶会かぁ。
…さすがに行かないわけにはいかないわよね。」
そう、私の元に届いた書状は、王妃様からのお茶会の招待状だったのですよ。
最初こそ、『なんで、ばらしたのよー!!しかもよりによって王妃様だなんて!!!』とディーに文句を言いに行こうかと思ったけれど、冷静に考えて当たり前かと納得した。
だって、いくら城から離れた森の外れにある魔研だとはいえ、国の公式な機関なわけで。
そんなところに、極秘で1人滞在させるなんて、普通あってはならないでしょ。
もし私が他国の間者で潜入していたのだとしたら、あっさり国家機密をばらしているようなものだし、王族に、仇なすことだって容易に出来てしまうわよね。
そんな存在を皇太子という立場の人間が容認してしまえば、国はあっさりと傾くことにもなりかねない。
だから、ディーが王様や王妃様にそのことを報告していたって当然なのよ。
…私ってばこんな簡単なことに何故早く気付かなかったのかしら…。
1番バレて欲しくない人には最初っからバレバレだったってことじゃない!何が悲しくて、求婚されている人のご両親に私の存在を報せなくちゃならないのよ…。
…お茶会の作法はアリアのスパルタ教育に含まれてたから粗相をする心配がないのが唯一の救いよね…。
問題は、何故、呼ばれたのかってことよ。
王妃様は、私のことどう思っていらっしゃるのかしら。いきなり現れた平民の仮婚約者。いくらディーが望んだからと言っても、母親として、王妃として、私の存在は邪魔になるはずだわ。
…怒られるのは嫌だけど、いっそ私を追い出してくれたらいいんだけど。そしたら、私はこの仮婚約者という立場をさっさと捨てて、シュヴァルトの森に帰って、また皆とのんびり魔法と精霊に囲まれて過ごすんだ。
…ここに長くいるのは、良くない。
その内絆されてしまいそうで、怖いのよ。
「マリエリア様、とってもお似合いですわ!」
「ありがとうございます、クララさん」
鏡越しに映る侍女のクララさんに手放しの称賛をされ、恥ずかしくなり少し俯いてしまった。
「お礼など必要ありませんわ。それに私に敬語を使う必要も御座いません。
それにしても殿下が用意した薄紅色のドレス、白い肌に映えてとても素敵ですわ。」
ほぅと息を溢し、頬に手を当てうっとりとしている彼女は、私に付けられた侍女さん。
男爵令嬢である彼女は、小柄でとても可愛らしい人で、栗色の髪を後ろで編んで止めている。
きっと、こういう人こそほんとは婚約者に相応しいんだろうな。
「そんなことないです。
それより、髪、ありがとうございました!
とっても素敵…っ!!普段あまり結わないからなんだか新鮮で。」
普段、髪を下ろしているかひとつ結びにするかどちらかなので、こうやって複雑に結われているのがとっても新鮮だった。
アリアがたまにやってくれるけど、私が動き回ることが好きであまりやりたがらないのを知ってるから、髪型は私の意思に任せてくれてるんだよね。
サイドを編み込んで後方で一纏めにし、それ以外はさらりと下に流してある。編み込んだ上から花モチーフの飾りを差し込んでいて、まるで花吹雪をそのまま髪に飾っているようで可愛らしい。
この薄紅色のドレス、ディーが用意していたみたいなんだけど、基本的に魔研から出ない私はそんなものが用意されていたことを今日知ったばかりなんだよね…。
用意周到というか、なんというか。
…っていうか、なんで私のスリーサイズ知ってるわけ!?今度会ったら問い質してやろうかしら…っ。
私なんかにこんな無駄遣いしないで欲しいんだけど、正直今回は助かったかも。
だって、こんな長旅になると思ってなかったから洋服はそんなに持ってきてないからね。
よし。
身支度も整ったし、いざ向かいますか!!
王妃様のお茶会に!
やってやろうじゃないの、淑女らしく!
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『おい、無駄に肩に力入れてると、いらない失敗するからやめとけ。』
…………。
ルイ、毎回私の心情先回りするの、ほんとなんなの!?
お待たせしました!
というわけで、招待状の中身は王妃様からでした。
マリーはディーのことを殆ど知りません。
当然家族のことについても。
そんな二人が初対面!!…といきたかったのに、準備だけで終わっちゃいました( ̄▽ ̄;)
次回こそ!二人を会わせようと思います。
さて、どうなるのでしょう?
次回更新までしばしお待ち頂ければと思います!




