対面
遅くなってすみません!
私がディーに出した【条件】は、3つ。
1つめが、私を賓客扱いするのはやめて欲しいということ。
2つめが、滞在する場所は、この研究所の近くにすること。
3つめは、街に行く許可を得ること。
これは、ここに来た時からずっと考えていたことなのよね。
賓客扱いなんてされたら、それこそ知らないうちに囲いこまれそうで論外だし、お城の中に部屋を貰ったら、賓客扱いじゃなくても、あいつは誰だ?と素性を探られ、結果、仮婚約者だとバレて囲いこまれ…と同じループになりそうだし。
それだけは本当に勘弁して欲しい!!
そういう煩わしいことから逃げる為に、わざわざライアン様に裏から手を回して貰ってひっそりと入ってきたっていうのに、ここでバレたら意味がないじゃないの。私の目的はあくまでこの指輪を外して貰うことであって、婚約者になりにきたんじゃないんだもの。
…そりゃ、転生してきたからには1度はお城を見てみたいなぁなんて願望はなかったとは言わないけども…。
それだって、第3者の立場でっていう前提の上だ。私は、【王族に嫁ぐわけにはいかない。】
それは、私自身が何より知っているから。
私の血が、力が、ある意味誰よりも禁忌な存在だから。
だから、私はディーに…いえ、王族に嫁ぐことだけはあり得ないんだ。
………じゃあ、ディーがもしも、王族じゃなくて、只の普通の男の子だったとしたら…?
そしたら、私は求婚を素直に受けたのかな…?
ちくっと胸の一部が痛んだ気がしたけれど、その痛みは横から飛んできた怒声で掻き消された。
「ちょっと!!マリエってば、ぼ~っとしてないで、さっさとこっち手伝ってちょうだい!
手伝いを申し出たのはあんたの方からだったと思ってたのは私の気のせいだったのかしら?」
「っうぁ、はいっっ!!!
ごめんなさい、すぐ手伝いますー!!」
いけないいけない。
つい考えに没頭しちゃうのは私の悪い癖だわ。
私はディーと再会した日に色々なことを話し合った。提示した条件は、全部まるっと受け入れられたわけではなく、いくつかの妥協案もあり、決まったこともある。
そのうちの1つは住まい。
ここ王国魔術研究院には、併設する寮のようなものがある。
実際は家ではなかったのだけれど、研究バカ…もとい、研究熱心な院生が帰るのを忘れるほど没頭しちゃうことが多々あり、ならばと住まいにしてしまったのが始まりだとか。
その話を聞いたとき初めて知ったのだけど、レイニー様にしか会わないから、それ以外にいないのだと思っていたここ王国魔術研究院………長いわね。
魔研でいっか。魔研は、レイニー様以外にも研究者がいるということを知ったのよね。
ただし、その9割9部が男性。
当然、寮にいるのも、男性。
私はそこでいいと言ったんだけど、ディーに大反対されて、言い合いに。
それを見かねたレイニー様が妥協案を出してくれた結果、3ヶ月の間、女性使用人を二人つけることと、レイニー様が寮に泊まり込むという話で。
レイニー様は普段、仮宿として寮を使うことはあっても、基本的には家に帰って生活しているらしい。それをこの期間だけ滞在するのだと提案してきた。
レイニー様も男ですけど…?と思ったんだけど、実はレイニー様は公爵家(!!)の長男らしく、後継を次男に託し自身は魔術の研究に勤しむ変わり者…という人で。
とはいえ、家と縁を切っているわけではないので、公爵家嫡男という立場上、寮で何かやらかす人はまず間違いなくいないだろうという話を聞き、なるほどと納得した。
…私はね。
ディーは最後までこの提案を受け入れるのを渋っていたけれど、城暮らしは絶対無理!!という私の意見を渋々受け入れてくれて、なんとか納得して貰ったのよね。
でも、私としてはそこまでレイニー様に迷惑を掛けるのが申し訳なくて、こうして研究のお手伝いをかって出たというわけで。
それに、お手伝いは私自身にとってもすごく有難いことで。
田舎暮らしの私にはわからない薬草の知識や使い方。それと魔法や街に関する常識とか、今までの生活では知ることが出来なかったことをレイニー様は、研究がてら教えてくれるのだ。
それだけでも、ここに来た甲斐があるかもしれない、と思う。ディーにとっては不本意かもしれないけどね。
「これはここで良いですか?」
「ええ。…やっぱり覚えるの早いわね。
他の研究員に任せると、半日はかかるのに。」
「…実は、ちょっとだけズルしてるから、ですかね。」
私はてへっと笑って見せた。
怪訝な顔でこちらを見てくるレイニー様に、私は彼らに会わせることにした。
…きっと、レイニー様は大丈夫だ。
「皆、顕現して貰っても良い?」
そう言うと、私の側にいた皆が瞬く間に人の形をかたどる。
「レイニー様なら、感じ取っていたかもしれませんが、私の守護聖霊です。
左からルイ、アリア、リリー、フェイ。
それぞれ風、水、地、火の上級聖霊です。
彼らに色々と教えて貰ってたんですよ。」
私の発言にぽかんと口を開けたまま固まること数秒。
レイニー様は、わなわなと震えたかと思ったら、カッとこちらを睨んできた。こ、こわいです、レイニー様!!
「…~あんたね~っ!!!
ずっと規格外規格外だと思っていたけど、守護聖霊まで規格外なのね!
なんなの!?…ほんと、私がずっと悩んできたのがバカみたいじゃない…」
言いながら、泣き笑いのような顔で言葉を溢す。
きっと、レイニー様にはレイニー様の事情が色々あったんだろうな。
「そうですよ。
私みたいな規格外もいるし、レイニー様みたいな変わりも…っ、じゃなく、力を持った貴族がいたって何も不思議じゃないです!」
私がうっかり本音を言いそうになったら、レイニー様のこめかみがぴくりと動いたので、慌てて言い直した。あ、危ない危ない。
「……ふふ。
あんたが言うと、ほんとに普通のことのように聞こえるわね。」
「はい!だって、魔法があるのが当たり前ですから、この世界は。…そうでしょ?」
「…この世界は…って、変わった言い方するのね。」
…ぎくっ。
「ま、でも、そうよね。…あっていいのよね、この力も。」
「そ、そうですよ!!
むしろ、今や魔法はこの王都で認められて、良い方向に動いているんですよね?ディー…あ、いえ、ディースレイド殿下のおかげで。」
「私の前では、呼び方変えなくても大丈夫よ。
…なんか、あんたと話してるとつい本音が出ちゃうわね。何でかしら?」
え~と、なんで、なんでしょう?
私が部外者だから、ですかね?そんなにじっと見られても、私は答えなんて持ってませんよ!?
「あんたって、ほんとに不思議な子ね。
ライアンがやられたのもわかる気がするわ…」
え。
ライアン様がやられたって、誰に?
よくわからないことばっかり。なぞなぞは得意じゃないんですが!!
「こいつは単純でバカだからな。
裏表がないから、信じたくなるんだろ。」
「成る程…」
「ちょっ!!ルイ、何よその言い方!
失礼じゃない!?
それに、レイニー様!?
同意しないで下さい!」
「ほんとのことだろうが。」
「申し訳ありません、私も否定が出来ず…。
けれど、マリー様の美徳なのですよ?」
「え、アリアまで!?
美徳って言われても、嬉しくない…。」
そんな私の反応に、皆が笑っていた。
バカにされてるのかもだけど、でもやっぱりこうして皆が笑い合ってる方が好きだな。
そんな風に和やかに1週間が過ぎていった。
ディーは相変わらず毎日時間を見つけては会いに来てアプローチしてくるけれど、私はかわし続けた。
事件が起きたのは、1週間経った日の朝。
私付きの侍女が持ってきた、1通の手紙が発端だった。
また更新滞ってしまいました!!(>_<)
そして、明けましたおめでとうございます!!!
新年一発目の更新です。
いよいよ仮婚約期間スタートです。
ここからは、マリーの心の変化を少しずつ出せたらいいなと思っています。




