心の傷
端的な言葉だけですが、暴力的な内容が一部あります。一応書いておきますね。
「とはいえ、【契約】で魔力持ちを飼おうとしていた貴族の殆どは今は処罰されているからそこまでの問題でもないんだけど…」
「……けど…?」
少し落ち着いたレイニー様が、紅茶のおかわりを用意しながら表情を曇らせる。
「問題は、その【契約】で縛られていた側の人の方ね。当然のことだけど、心に大きな傷を抱えてしまっていて、未だに社会復帰出来ていない子が多いわ。」
「……っそんな……」
でも、レイニー様の話は痛いほどわかった。
…わかって、しまった。
だって、私には同じような立場を経験してきた『第二の家族』がいるのだもの。
【契約】で飼われた魔力持ちは、大概が10代の若い子供達だったのだと言う。
その理由は簡単だ。
魔力持ちが産まれ、忌み嫌い捨てられたり、拒絶されたりした者達が、『君が必要だ』と優しい声で匿われれば、誰だとて救いの手を取りたいと思うだろう。
その心を利用されたのだ。
そして、【契約】で縛った。
物理的に捕らえて部屋から出さない者、身体で繋ぎ止めて快楽堕ちさせた者もいたという。
そう言った者達を保護し更生させるために手を尽くしているとレイニー様は教えてくれたけれど、その進捗はあまり宜しくないらしい。
「…当然よね。
同じ人なのに、ただ魔力を人より多く持っているというだけで虐げられたら…人を…信じるなんて難しいわよ…」
その言葉は、とても重い響きを伴って口から紡がれた。私に言うというより、独り言のように呟いたようにも感じた。
きっと、レイニー様も同じような思いを経験してきたのではないかしら…。
私にはルイ達がいた。だからそんな苦しみを知らずにのうのうと生きてきた。
年頃になるまで街まで行かせて貰えなかったのも、もしかしたら、こういう事情を知っていて私に見せないようにするための配慮だったのかもしれないと、今更ながら気付いてしまった。
俯いていたら、頭をぐしゃぐしゃに撫で回された。驚いて顔を上げれば、優しい眼差しで私を見下ろすレイニー様がそこにはいた。
新しい紅茶を注いだコップを私の方へ差し出しながら少し屈んで私の視線に合わせて微笑んだ。
「あんたって、ほんといい子なんだな。
ディーが惚れたのもわかる気がする。
…ありがとな、俺達の為に…泣いてくれて」
そう言いながら、目元をぐいっと親指でなぞられた。
…どうやら泣いていたらしいとようやくその時気付いた。
………ん?
なんだ、今の違和感……
そんなことを考えていたら、部屋の扉側から物凄い冷気を感じたと思ったのも束の間、後ろから羽交い締めにされた。
「…っうぎゃっ!」
「レイニー!!!
貴様、マリーに何をした!?」
可愛いげのない私の悲鳴は誰にも突っ込まれることもなく、目の前の状況に暫し呆然としてしまったのは仕方ないことだと思う…。
短いですが、ここまで。
最後にやっっっと登場した「あの人」ですが、本格的に話すのは次回、ということで。
なんだかやっと恋愛っぽい話に持っていけそうかな?なんて、思いつつ、邪魔者多過ぎて収拾つかなくなりそうな予感が致します(笑)




