私の生活事情
なかなか幼児から抜け出せない…
王子に出会うのはいつになるのか。
個性の強い妖精達に囲まれて、私は少しずつ、この世界に馴染んできた。
5歳になる頃には、基本の魔法は全て習得してしまった。さすがチートである。
とは言え、魔法も万能というわけではない。
好きな洋服に早着替えしたり、食べたいものが何でも出てくる!!……なんてことはできない。
勿論、植物の成長を促して、早期収穫!とか、水を火の精霊の力でお湯に変えてお風呂に!とかそういう範囲のことなら出来る。
ちなみに、これは実際に私が日頃実践している魔法の使い方である。
こんな使い方する人見たことない…と妖精達を呆れさせたが、私にとっては大事なことなんです!!
生活する上で一番問題だったのが、実は服装の問題だった。
目が覚めた時着ていた服はシンプルなワンピースだけで、着替えなんて勿論ない。
最初の頃はアクアとルイの力を借りて、毎日洗濯しては着てを繰り返してたんだけど、やっぱり1枚だけじゃ不便で仕方ない。
どうしようか考えていたら、ルイがサラッとこう言った。
『魔法も慣れてきたんだし、水晶作って売ればいいんじゃない?』
売る……だとっ!?
まさか魔法が売れるとは知らなかった。
正確に言えば、魔法の力を込めた水晶が売れるのだと言う。
そこからはもう必死で水晶作りの為に練習しましたとも!!
それこそ、言い出しっぺのルイが嬉々としてスパルタ特訓をしてくれやがりましたよ。
……まさか、このために提案したんじゃ……と思わず疑いたくなる程の扱きでした……くそう。
苦労の末、出来上がった水晶は、どれもスッゴク綺麗だった。それぞれの属性毎に色が違うらしい。
基本ベースは緑、青、赤、黄。
複数属性が入っているものは、色が混じり合い、様々な色になるらしい。
色が濃いほど、濃度は高いみたいで、今の私は……まぁ、この年にしてはましな方だよね!!!
幼児の私には、さすがに売りに行けないし、そもそも街がどこにあるかも知らない。
一瞬、訓練のために嘘をつかれたのかと思わずルイのいた方を振り向くと、知らない男の人がいた。
「ふうん。初めてにしてはまぁまぁなんじゃない?」
私が作った水晶を手に取り、色を確認するように太陽に透かしてみている。その口振りとさらさらな緑の髪がどこかで見覚えがあるような気がするがそんなまさか。
だって、ここには私以外に人がいない…はず。
可愛い顔に似合わない深ーく刻まれた眉間の皺に気付いた男の人が、その反応ににやりと口角をあげた。
「ん?オレがわからない?
いつも一緒に添い寝してやってるだろ?」
「ってことは…やっぱりルイーー!!?」
妖精サマは、人に、なれるんですって。
なんだとーーー!!
驚きのあまり、数十秒固まったのは、仕方ないと思う。
~後日談~
「ねぇ、ルイ」
「どうした」
「私の記憶する限り、初めて会った頃はもっと爽やかイケメンの優しい風貌だったと思うんだけど、今と性格違いすぎない?」
腹黒なのは変わらないけど…と、心の中で付け足した。
「…イケメン、というのがなんのことかよくわからんが、これが俺の素だぞ」
「え」
「いくら俺でも、出会ったばかりの幼児にそんな厳しく出来るわけはないだろう。猫を被ってたんだ。」
「な、なんだと!?」
「こら、もう少し女らしい反応しろ」
呆れながら頭を小突かれた。
しまった。本音が駄々もれだ。
そうか、あれでも一応優しくしてくれてたんだ。
本当に、一応、だけれど。
「………………ドS」
ゴツン。
「イッッッターーーー!!」
「意味は知らんが、悪口を言われた気がしてな。」
間違いなく、これがルイの素だ!
手痛い反撃に遇い、涙目で思ったのだった。