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ルルージェ加工店の謎・1

あれから2週間が過ぎた。

びっくりするくらい何も起きなくて、むしろ拍子抜けしてしまった。


もしかして、私のことなんて一時の気の迷いでちょっかいかけただけなんじゃない?とか、自分に都合の良い解釈をして、私はお気楽日常生活を送っていた。


そんなわけで、今日は久しぶりに街にやってきた。それというのも、例の頼んでいたものが完成したとの連絡が来たからだ!!



************************************


ちなみに、森に住んでいる私が、どのように連絡を取っているかと言えば、街の中でも外れの方に位置する場所に仮住まい用の家を買い、そこの管理を任せている者から連絡を受けている、という仕組みだ。


実は、この管理人をしてくれている人。

精霊の加護を受けた魔力持ちの女の子だ。


彼女と出会ったきっかけはなんてことはない。

その魔力持ち故に、家族から【異端者】扱いを受け、シュヴァルトの森に捨てられていたのだ。


それを見つけた私は、すぐにルイ達に助けを求め、必死に看病した。

…彼女は、餓死寸前だったのだ。


許せなかった。

魔力のことをよく知りもしないで、こんなにも簡単に人の命を犠牲にする。

彼女は特に魔力が強いわけではない。清らかな心の持ち主だったから、精霊に愛された。ただそれだけだったのに。


そうやって、シュヴァルトの森にやってくるのは何も彼女だけではなかった。

その中には魔力持ちでもなんでもないただの子供もいた。貧しくて、育てられなくなって捨てられた、そんな子もいたのだ。


その全ての子を、救えた訳ではなかった。

そうやってここに捨てられて、看病の甲斐なく死んでしまった子や、見つけた時には獣に襲われて大怪我をし、死んでいる子もいた。


人の死に遭遇するのは、何度経験しても慣れることはなかった。何度も何度も無力な自分を責めた。


もっと力が強ければ…もっと力を上手く使いこなせていれば…幾度も後悔をする。

でも、魔力も万能ではない。死んでしまったら、もう生き返らせることは出来ない。


そうやって何度も泣く度にルイ達が慰めてくれた。家族の有り難みを実感した。


私って、ほんと恵まれた環境で転生してきたんだなと思った。

だから、私に出来ることは、全部しよう!!


そう思った結果、あの仮住まいの家が建てられたのだ。

あれは、街での私の身元証明のためのお屋敷でもあるけれど、1番の目的は、森で助けた子供達の住み家にすること。


名目上、私の使用人として働いているけれど、彼女達は私の第2の家族なのだ。


怪我や病気が治ったら、いつかは一人立ち出来るよう支援する気でやってきたのだけど、何故か誰も出たがらないんだよね。


なので、街にあるお屋敷は年々増築して規模が大きくなっていっている。郊外に建てておいて良かったわー。その内別宅も考えないといけないかもね、とアリアに相談しているところだ。


************************************


そんなことを考えながら歩いていたら、いつの間にかルルージェ加工店の前に着いていた。


「すみません~注文していたものが出来たと聞いてお伺いしたのですが…」


「あぁ、いらっしゃい。

マリエリアさんですね?」

「あ、はい。そうです!」

「ご注文のアクセサリー、用意出来てますよ。

奥の部屋へどうぞ」


人懐っこい笑顔で奥の部屋へ招いてくれた。

店主のルルージェさんは、下町に似つかわしくない程、洗練された立ち振舞いをする。容姿もキラキラと艶めく金髪に、ライトグリーンの瞳が印象的な美人さんだ。


噂では、どこかのお貴族様のご息女なのではないかとまことしやかに囁かれている。

噂はともかくとして、何故この仕事をしようと思ったのか、ぜひ聞いてみたいものだ。

ウズウズと気になって仕方ないのよ!

私の野次馬根性が~!


受付カウンターの横をすり抜け、商談用の大きな応接間に通される。

あれ?事前情報だと、カウンターでのお渡しか、注文受付した時の小さな小部屋でお渡しだった気がするのだけど…


小さな疑問を浮かべつつ、応接間のソファに座るよう促される。ここで押し問答したところで意味がないので座って待つことにした。


応接間の奥の方には沢山の棚が並んでいた。

ルルージェさんはそこの前に立ち、手をかざした。


『解錠』


そう言葉を発すると、フワッと光が集まり、扉が開いた。手を触れた気配はなかったのに、そのてもとには、気づけば小さな木箱が納まっていた。


私は唖然としてしまった。

ルルージェさんが、魔法使いだとは思いもしなかったからだ。


「ルルージェさん、魔力持ちだったのですか!!?」


あ、思わず大声出しちゃった。


そんな私の態度にも気分を害することなく、むしろ楽しそうにくすくす笑って彼女は振り向いた。


「えぇ、そうよ。

貴女も、でしょう?

シュヴァルトの森の魔女さん♪」


彼女の言葉に更に言葉をなくし、口をあんぐり空けたまま固まってしまった。

きっとかなり間抜けな顔をしていることだろう。


「え、と。あの…」

「あぁ、そんな警戒しないで。

貴女の正体を知っているのは私だけよ。

ご覧の通り、魔力持ち。私は特別風の精霊に気に入られているみたいで、幼い頃に祝福を貰ったの。貴女のことは、注文に来たときにこの子から聞いたのよ。」


そう言うと、彼女の傍らからおずおずと小さな緑色の光が見えた。その中には、風の精霊が緊張した面持ちでこちらを伺っている姿が見えた。


なんで、こんなびくびくしてるんだろう?

疑問が顔に出ていたのだろう。


「貴女のね。傍についている風の精霊が、恐れ多いのですって。リノは下位精霊だから、上位精霊である貴女の風の精霊の前では緊張してしまうらしいの。」

「あぁ、なるほど。」


やっぱり、彼らは上位精霊だったのか。

聞いたことはなかったけど、そんな予感はしていた。


「私の加工、不思議に思わなかった?

他の工房の物と違うでしょ。

その理由は、これだったのよ」


彼女はリノをいじりながら、愛嬌たっぷり振り撒いて私に笑い掛けてくれた。

魔力をこんなにも前向きな気持ちで使っている人がこの世界にもいたことが、私はすごく嬉しかった。

長くなりそうなので、分けようと思います。

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