仮面~本当の自分~【ディー視点】
俺には、2つの顔がある。
表向きの顔とそれ以外の顔。
それは、ほとんど無意識のうちに使い分けていた顔だった。
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俺の愛しい人に森から追い出された俺は、街に戻るべく帰路を辿っていた。そこで先程までの出来事を反芻する。
追い出された、とは言ったが、夕飯を食べ、夜も遅くなったからとマリーの家に一晩泊まり、翌朝、『さっさとお帰り下さい!』とジト目で睨みを利かせながら見送りまでしてくれた。
口では嫌と言いながら、悪者になりきれないのはマリーの美点だろう。どうか、あの素直な性格の彼女が悪い男に騙されないことを願うばかりだ。
…まぁ、現状俺が1番の【悪い男】なのだろうが…
森はすんなり抜けることが出来、途中まで一緒に来ていた騎士らと合流した。
結局、何故俺があの森の奥深くまで入れるのかは、謎のままだった。
森の入り口付近では、大騒動だったらしい。
突如行方不明になった俺の捜索を必死にしていた護衛騎士リュークをはじめとする騎士ら数名が必死の形相で一晩中俺を探していた。
俺の姿を見つけた時、皆は今にも泣き出さんばかりに歓喜の声をあげていたが、リュークだけは目許をピクピクさせ、今にもキレそうになっていた。
「だから、あれほどおやめくださいとお止めしたのに…」
とぶつぶつと小言を言い始めた。
説教は勘弁願いたい。
俺はその言葉を聞かなかった振りをして、思考を再び最初に戻した。
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誰しも余所行きの顔があると思う。
だが、俺の場合それが特に顕著に出ていた。
それは俺の生い立ちの問題だと思うが、殊更俺は表の顔を様々な面で行使してきた。
嫌われ者だった俺は、日々を平穏に生きるため【良い子】の仮面をつけ続けた。
それは社交の場でとても役に立った。
義兄上の一件があり、俺は一時期仮面を付けるのをやめたこともあったが、外交の際などほんとに必要な時にはまたこの仮面をつけ直すことを忘れなかった。
それが、国のためであり、自分のためだったからだ。
あの当時、俺は本気でそう思っていた。
けれど、マリーと話していて気付いた。
いや、気付かされてしまった。
俺は、ほんとは。
【嫌われるのが怖かった】んだ。
口では強気なことを言っておきながら、ほんとの俺を知って嫌われたくなかった。誰かに好きになってもらいたかった。認めて、ほしかった。
仮面で装われたディースレイド・ウィリアム・サンフェルトではなく、ただの【ディー】として。
そのくせ、ディーとしての素の顔を出して本気で嫌われたら立ち直れない。
だから、俺は気持ちを伝えるときにずっと【良い子】の仮面をつけたままマリーに接してしまった。
それは、ある種無意識の行動だっただろう。
王族であるならば、こうあるべきだとどこかで言い訳していたのかもしれない。
だが、俺自身が否定してきた【ディー】の部分を、マリーは受け入れてくれた。
言われた瞬間、何を言われたのか頭が真っ白になった。そして冷静になって、沸々と歓喜に打ち震えた。
こんなにも俺の都合の良い展開で良いのだろうかと思わず疑ったぐらいだ。
だが、言った当人はその言葉の重大性に全く気付いていないみたいだった。笑い出した俺の姿を見ておろおろしている姿は見物だった。
これでどうして彼女を諦められると言うのだろう。ますます好きになるだけで、一生離してなんてやれないではないか。
俺は溜まっているだろう皇太子としての仕事を終わらせる為、一度街に戻ることにした。
それが終わったら、彼女を迎えるための計画を念入りに立てることにしよう。
ごめん、マリー。
どうか諦めて?
あの日あの時、俺と出会った時点で、君は逃れられない運命だったんだ。
再びディー視点です。
言葉遣いの矛盾点を心の思うままに書いていたので、過去投稿を修正しつつ、ディー自身にも改めて自覚させてみました。
表の王子様然とした態度の方が好かれるのでしょうが、そんなものにはディーは興味ありません。
むしろ、そんな令嬢には嫌気がさして興味を失ってしまうだけ。だから、どんなに縁談を振っても悪循環だったのです。




