乙女の大暴走
部屋に入るなり、私は寝室に向かい、布団の中に潜り込んだ。
「あっの、エロ王子っっ!!!
私のファーストキスを返せーー!!!!!」
ここに本人がいないのを良いことに思いっきり悪態をついた。
さっきの私はちょっと、いやだいぶおかしかった。
あれは、彼なりの気の紛らわし方なのかもしれない。
だがしかし。
それをやっていいのは、お互いが恋仲の場合でしょーが!!どうして、一方的に好意を持たれているだけの間柄で成立するというのだろうか。
いや、そういう関係じゃないからこそのショック療法ってこと?
でも、それは他でやってほしかった!!
中身は前世から数えてアラサーはとっくに越えている私だけど、キスは、前世含め初めてだったんだから。
「うぅ、こんなのがファーストキスなんて、最悪だ……」
これは当分立ち直れそうにない。
そりゃ、ディースレイド殿下は完璧なくらい麗しい容姿で、普通に考えたらあんな素敵な人が初めての人だなんてラッキーなのかもしれない。
でも、あんな気持ちが何も籠っていないだろう気付け薬のようなキスが初めてなんて、辛すぎる。
しかも、ほぼ記憶にない。
あの時、私は暗い感情に支配されていくのを感じていた。その正体は、他でもない私自身がよくわかっている。
私は右手のひらを広げ、それを心臓の辺りに当てた。意識を集中し、自身の魔力を視た。
ーーーやっぱり。。。
子供の頃に魔力暴走をして以来、閉じ込めてコントロールしてきたはずの魔力が揺らいでいる。
月の魔力、闇を司る力が。
何故だろう。今までは特に何の問題もなく生活してきた。
魔力コントロールのために、子供の頃から鬼のような特訓にも耐えて磨き続けてきた。
ちょっとやそっとじゃ暴走しない自信があったから、街にも出歩くようになったというのに。
…やっぱり、ディースレイド殿下の影響なんだろうか。
この身に眠る王族の血が、呼びあってしまうの?
危険だ。
このまままとわりつかれたら、私の平穏ハッピーライフに多大なる影響を与えかねない。
私は決心をした。
ディースレイド殿下にはすみやかに森を出て頂き、2度と関わり合わないように説得する。
さて、そのためにはどうするべきだろう?
そういえば。
よくよく考えれば、さっき私王族殴っちゃったんだよね…
あれって大丈夫だったのかな…
いや、ダメじゃない?
ど、どどどどどどどどーしよう!!!!
動揺してたとはいえ、不味いことをしてしまったー!
で、でも、ルイたちはちょっと過保護な所があるから、きっとさっきの行動について、弁護してくれていると信じてる。
でも、不敬を働いたことで、刑罰を受けたりしたらどうしよう。
よく前世で見ていた小説にもこういうことがあった。
私は悪役令嬢でもここがゲームの世界でもないのは解ってるけど、異世界だもの。
日本とは常識が違う。
あぁ、なんでこの国の法律についてもっと勉強しておかなかったのか、私!!!
突如あらわれたよくわからないことへの不安が込み上げてきて、目が潤んできた。
うおっと、泣いている場合ではない。
とにかく謝罪しにいかなきゃ!
私はベットの上から這い出て、階下に向かう扉に向かった。
その時だった。
コンコン。
と、扉を叩く音が。
「マリー、そこにいるんだろう?
話したいことがある。開けてもらっても良いだろうか」
で、でたーー!!!!
この1話の中で、物凄く目まぐるしくいろいろな感情が入り交じるマリー。
嬉しいやら悲しいやら怖いやら。
そして、ディーの内心の気持ちには一切気付かずにどんどん違う方向に暴走を続けるマリーに、果たして恋が成立するんでしょうか。
私もさっぱりわかりませんが、二人の今後を見守りたいと思います( ̄▽ ̄)




