おかしなことに捕らわれました。
再び、我が家へとやって来ました。
王子というおまけ付きで。
な・ぜ・こうなったっっ!!!!
今日は森の中で新しい魔法の研究をしようと思ってたのに。
だから、アリア達を連れてピクニックがてら近くの川まで来ていた。
そこをあのキラキラ王子に見つかったんだよ。
私の平穏返せー!!!
心の中でそうは言ってても、この国の王太子様をこんな森の奥深くにずっと立たせっぱなしは出来ない。
この森は街に比べると少し寒く、明かりも太陽や月の光など自然のものだけだ。
とは言え、精霊たちがいる。彼らが見える私にとって、ここはどの場所よりも安全で便利な場所なんだよね。
ディーも守護精霊が傍にいるし、多分、私と同じようにここでの生活は過ごしやすいはずだ。
いや、過ごされても困るけども!!
ディーは何が珍しいのか、家に入るとキョロキョロと周囲を窺っていた。
「ディースレイド殿下、お茶が入りました。
こちらにご用意致しますので、宜しければ」
「あ、ああ」
そう言いつつソファに腰掛けるが、心ここにあらず。
なんだろう?
そんなに珍しいのかな、うちの家。
ごく普通の家だと思うんだけど。
「……ディー?どうしましたか。
何かお気に召しませんでした?」
うぅ、話し掛けづらいよう。
タメ口と敬語の間ってどう話せばいいのか、頭混乱するんだけど!!
ディーが私の言葉遣いに気を悪くしていないか、思わず恐る恐る声を掛けてしまった。
私の様子がおかしいのにようやく気付いたのか、ハッと意識を私の方へ向け、申し訳なさそうに話し掛けてきた。
「す、すまない。じろじろと家の中を見られたら嫌な思いをするよな。悪かった。」
「い、いえ!気にしていませんのでお構い無く!!」
やめてやめて!
王子様にこう何度も謝られるとかほんと心臓に悪いから!
内心冷や汗をかきながら笑顔でスルーする。
「そうか、なら良かった。」
だ・か・ら、無駄にキラキラ笑顔を振り撒かないでってば!!
……というか、この人ってこんなに笑う人だったっけ?
子供の頃一度会ったきりだけど、あの時は見えない壁や棘がたくさんある影のある子だなぁって印象だったんだけどな。
何がこの人を変えたんだろう?
「ーここは…とても自然に精霊達の力を日常の中で使っているのだな。」
ポツリと呟くように、ディーはそう口にした。
あ、、、そっか。
この森以外では、この国は長らく魔法とは縁が遠かったんだっけ。
………私の父様と、母様の、せいで。
この人は真実を知らない。
だから、こんなにも真っ直ぐに好意をぶつけられるんだ。
命の恩人だという、それだけの理由で。
『貴方が【異端者】になってしまったのは、私の両親のせいなんだよ』
もし、そう告げたら、この人はどうするだろう。
怒るかな。泣くかな。
それとも、、、嫌いに、なるのかな。
なんだろう。別にディーのこと、好きでもなんでもないはずなのに、何でこんなにも心が痛むんだろう。
…あぁ、そっか。
私の前世の感情に引っ張られてるのかな?
【どうせ、私なんて、誰も好きになんてなってくれるはずがない】
私は、ずっと、独り、、、ダ。
アイシテルナンテ、マヤカシ、、。
あれ、どうしたんだろう。
思考がおかしなことになってるのに、自分で止められない。
誰か、、、だれか、タスケて、、、
「マリー!!!」
身体全体になんだか、何か暖かいものを感じた。
さっきまで、冷たくて、暗い何かに覆われていた気がしたのに、気のせいだったのかな?
「大丈夫だ。安心して俺に身を任せろ。
お前は1人じゃない。」
ヒトリ、じゃない。
独り、じゃあない。
あぁ、そうだった。私は独りじゃなかったんだ。
皆がずっと傍にいたのに、どうしてそんなことを思ったんだろう?
「わたし、独りじゃ、ない」
「あぁ、そうだ。
だから、そんな風に1人で泣くな」
さっきから私を包んでいたぬくもりは、さらに私を強く包み込んできた。
ちょっと息苦しいくらいの強さだったけれど、何故かとても安心できて、私はそのぬくもりに身を委ねてしまった。
「マリー、深呼吸してごらん。
大丈夫。"君を害するものはここには何もない"のだから」
そう、そうだ。
ここなら、大丈夫。
ここは、私の居場所。
誰も邪魔出来ない、私のあるべき場所。
どうやら過呼吸気味になっていたらしい。
ゆっくりと呼吸をすると、気持ちが和らいだ。
私に触れるぬくもりは、身体全体だけでなく、目元にも触れた。
頬に感じるぬくもり。温かいそれは、今度は私の口元にきて、小さな音を立て、離れていく。
これ、な、に?
え、あれ?
ちょっと待って。
い、今のって今のって、まままままさかっ!!!
キ、キッ………!!
急速に私は意識を覚醒させた。
さっきまでのモヤモヤとした感情は消え去り、次に沸き起こる感情に支配されていく。
「……マリー?」
私を抱く力を少し緩め、私の顔色を窺うようにこちらを見た彼を視界に入れた瞬間、私は全身を駆け巡る怒りの感情を一気に右手のひらに込めた。
バッチーン!!!!
「こ、こっの、、エロ王子ーー!!!!!」
私は、盛大にディーの左頬を平手打ちしたのだった。
ラブコメ要素で提供しようと思った矢先、またもや何故かシリアスが入ってきてしまいました。
あれー?
私の脳内どうなった。
とりあえず、マリー、王子に負けるな!




