血の繋がり
どっと疲れた。
シュヴァルトの森に帰りつくと、アリア達が出迎えてくれた。
私の憔悴しきった様子に、何も聞かず直ぐ様お茶の用意とお風呂の用意をしてくれる。
あぁ、なんて気が利くのだろうか、我が家族達は。
私は気分転換がしたくて、先に風呂に入った。
このお風呂は、私が子供の頃に魔法の研究と称して、現代のお風呂のイメージを忠実に再現したものだ。
この世界でのお風呂は、基本的に一回一回水を張り、薪で暖めて入る昔ながらの暖め方が主流だ。
電気なんてものはないから仕方ないけれど、元現代っ子日本人である私には、それが煩わしかった。
なので、魔法の応用をここにも活かすことにしたのだ。
まず、魔力の結晶を作ります。
材料は水の結晶と火の結晶。
その二つをお風呂にいれると、あら不思議!
あっという間に暖か~いお風呂の出来上がり!
とはいえ、一般人がただ結晶を使っても、お風呂は完成しない。
結晶に再び魔力を与えることで、この原理が完成するのだ。最初の頃は私がやっていたのだけど、それを見たアリアとフェイが率先してお風呂係を請け負ってくれたので、今は結晶を作らずとも二人の魔力でお風呂を用意してくれている。
THE・魔力のムダ遣いってわけ。
そんなこんなで、ゆっくりとお風呂に浸かり、上がってくると、出来立ての暖かいお茶と、今日私が買ってきたお茶菓子がテーブルに並べられていた。
ほっと一息ついて、私は今日の出来事を反芻した。
「なんでこんなことになっちゃったんだろう…」
あぁ、また頭を抱えたくなってきた。
私がお風呂に入っている間に、ルイから経緯を聞いたアリアが、何かを思い出したのか、苦い顔をしていた。
「ルイから今日の話を聞きましたが、なんと言いますか、ディースレイド殿下は、ある方を彷彿とさせますね」
『ある方』?
誰のことだろう。
「子供の頃お会いしたときには、あまりそう思わなかったのですが、やはり血は争えないのでしょうか…」
次に続く言葉に思わず私は身を乗り出した。
「……え!?
まさか、、、父様のこと?」
「その、まさかです。」
マジですか。
あ、そういえば、アリアは母様の侍女をしていたんだっけ?
「私はジュリエンヌ様の筆頭侍女であり、護衛も兼ねていましたから、この森での逢瀬にはいつも付き従っておりました。」
「その際に、幾度となくディークリート様にお会いしましたが、お話を聞く限り、かなり似た面をお持ちのようですね。」
その似た面っていうのが、あまり良い意味に感じないのは気のせいではないだろう。
「それって、あの…」
私が言葉を濁していると、何を言いたいのか察したアリアは、極上の笑顔を私に向け、言い放った。
「ご覚悟なさいませ。
あの気質は、相当しつこいですわ」
あぁ、なんだか、父様と母様がどんな風に出会い、結ばれたのか、なんとなく解ってしまった。
出来れば知りたくなかったよ、こんな事実。。。
よくよく思い返せば、あの異空間での二人のやりとりに、すでにその原点を感じさせるものがある。
幼児の記憶だったとはいえ、両親のことだいぶ美化されていたんだなぁ。もっと尊い存在のように思っていたのに。
どうしよう、私もあの二人の血を引いているのかっ!!
………どうか、母様の血を多く継いでいますように。
私は父様が聞いたら泣き喚いて落ち込みそうなことを心の中で祈りながら、今日出会った殿下、いや、ディーのことを思い返していた。
うん、明日は森に籠っていよう。
そうしよう!!!
ーまたもや現実逃避に走っていたー
「…バカが」
私の後ろではルイが腕を組み、憮然とした顔で立っていたのだった。




