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とある武官の独り言

俺はしがない一平民だ。


名をリューク。

そんな俺の仕事は、王子の護衛武官だ。


何故、平民である俺がこんな大役を担っているかと言えば、俺が守るべき主が、人々に忌み嫌われている存在だったからだ。


俺が初めてディースレイド殿下に会ったのは、俺が15歳、殿下が7歳の時だ。


俺は国が管理する騎士団の養成学校に通っていた。そこは身分を問わず実力主義の場所だったので、俺みたいな平民でも入れた。

だが、身分というのは決して消え去るわけではない。

俺は知力武力ともにトップの成績で卒業し、騎士団に入団したのだが、配属先として決まったのが、【異端者】の王子として皆から畏怖されているディースレイド殿下の護衛武官だった。


本来であれば名誉な仕事であるはずのこの職は、数年前に起きたある事件のせいで、1番不人気の仕事になってしまった。


それは、『王太子に大怪我を負わせた』と噂された事件のことだ。何故噂なのかと問えば、王宮内で起きた事件のことは大っぴらに公表されたものではなく、人から人へ伝聞された情報に過ぎないからだ。


次は自分が攻撃されるのでは…と、王子の周囲の侍女や護衛武官は、短期間で入れ替わり立ち替わり辞めていくのだという。


だから、俺のような平民が第2王子であるディースレイド殿下の護衛武官に抜擢されたわけだ。


俺は、正直稼げるならどこでもいいと思っていた。俺の家には、病気の母と腹を空かせている10も下の妹がいる。

養うべき父は、不慮の事故で10年前に亡くなった。だから、俺は家族を養うためならどんな仕事でも構わなかった。


むしろ、王子付きの護衛武官なんて、渡りに船。

俺は喜んでその任に就いた。

周りの貴族連中からは憐憫と嫉妬の目を向けられた。

なんとでも思えばいい。


そんな王子の護衛武官だが、特に問題もなく順調な日々を送っていた。

基本的な仕事は王子に常に付き従い護衛すること。移動の際の案内役や部屋の外での見張り番など。

たまにやってくるどこぞからの刺客の相手をしつつ、捕まえて国王陛下に報告するときは1番緊張する瞬間だ。



噂の王子はといえば、確かに刺々しい雰囲気と、口の悪さなど目についたが、無闇に人を攻撃することもなく、日々を過ごされている。

むしろ、人生何が楽しいのか解らないようなつまらなそうな表情をしているのが気になるくらいだ。


俺も人に言わせると無表情、鉄面皮の何考えてるか解らない奴だと言われるから、人のことは言えないかもしれない。


だが、それだって、必死にやってきた結果だ。

他の武官らのように、色恋に惚けたり、仕事サボったりなんてしてる余裕はないんだ。


そんな俺の転機は、そこから3年後。

ディースレイド殿下の誕生パーティーでの失踪事件だ。


パーティーの途中、王子が息抜きをしたいと珍しく弱音を吐かれた。

だが、易々と傍を離れるわけにはいかない。


「1人にするわけには参りません。」


そう言ったのだが、少しイラつきながら、溜め息と共に吐き出すように言われた言葉に俺は引かざるをえなかった。


「すまないが、10分でいい。1人にしてくれ。すぐ戻るから。」


こんな言葉を言うなんて、相当お疲れらしい。

だが、完全に1人にすることは出来ない。

俺は王子に見つからないよう、一定の距離を空けながら護衛することにした。


…まさか、目の前で、王子がいなくなるなんて、思いもしなかった。


忽然と姿を消したその中庭に駆け寄れば、そこにいたのは、肩を震わせるボルモア公爵が蹲っているだけだった。


「失礼ながら、ボルモア公爵、ディースレイド殿下はどちらに」

「…クッ」

「…?公爵……?」



「アーッハッハッハッハッハ!!

これでもう、あいつは戻らない!

これからは俺の時代だ!」

「!?……公爵、失礼する」


気が狂ったように目を見開いて高笑いを始めたボルモア公爵を見て、王子の身に何か良からぬことが起きたことを察した俺は、公爵の首もとに手套を当て気絶させた。


俺は自分の失態の報告と公爵の身柄を国王陛下に託す為、重い足を引きずりつつ、謁見室に向かった。


幸いなことに、俺は10日間の謹慎処分という極めて軽い罰則のみで終わった。


そして、罰則が明けて王城に来てみたら、何故かそこにはいなくなったはずの王子が笑って出迎えていた。


「今まで悪かったな。パーティーでのことはお前の責任じゃないから気にするな。

これからは今まで以上に忙しくなると思う。もし、まだお前が俺に従う意志があるなら、ついてきて欲しい。」


まさか、王子の口からこんな言葉を聞く日が来るとは思わなかった。この10日間に一体何があったのだろう。


ーだが、あの死んだような目を見るよりよっぽど良いー


俺は、口許に笑みを浮かべ、口にした。


「殿下のお心のままに」


そうして、俺は改めてディースレイド殿下の専属護衛武官になったのだ。



書きながら、ひっそり書いてみたかったサブキャラ目線のお話です。


ディーの周りには、実は家族や変人以外にも味方がいたんですよ~っていうのを書きたくて今回彼の視点で書いてみました。

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