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君のために

とりあえず、遠のきそうな意識をむりやり起こして、場所を移動することにした。


だってさ、さっきのプロポーズ?な出来事さ、ぜーんぶ道の往来での話だよ!


片や、護衛の兵士を従えたキラッキラの王子様。片や、庶民服を身につけた一市民。


そんな2人が街中でこんな目立つことしてたらどうなるか、誰だって想像出来るだろう。


沢山の野次馬に囲まれましたよ。

あっ、菓子屋のおばちゃんが遠くでガッツポーズしてる!

やめてぇ~そのニコニコ顔!居たたまれない気持ちになるから!これ、決して私が望んだことじゃないからー!!!!


************************************


そんな精神的にも削られまくった私は、何故かこの街1番の宿屋のVIPルームにいます。


どうやら、ここはこの街に滞在するために王子に与えられたお宿らしいです。


さすが、王族。

ってか、ここほんとに宿屋!?


貴族様のお屋敷とほぼ変わらない豪華さと広さなんですけど!?

いや、入ったことはないけど、街で辺境伯のお屋敷を見たことがあるから、それと比較しただけなんですが。


やっぱり王宮に住んでいる人はこれが当たり前なんだなぁ。


そこでふと疑問が湧いた。

この国の王太子ともあろう人がこんな辺境の街で一体何をしていたのかってこと。


わざわざ、こんなところに宿を取ってまでやることってなんだろう?


この街は私が住むシュヴァルトの森に1番近い街だ。

とは言え、この辺りでは盗賊騒ぎもなければ、この街を管理する伯爵も街でも評判の温厚篤実な人柄で庶民にも人気の人だ。


視察が必要な地域だとも思えない。

それとも、私が知らないだけで、こんな風に定期的に各地域を視察していたのだろうか。


だとしたら、王太子というのは物凄く大変なお仕事なんだなぁ。休む暇もなさそうだ。


そんな同情心たっぷりの目で見ていたら、彼と目が合ってしまった。


ソファの向かいに座る彼は、目が合うと、ニコッと人好きする笑顔を向けてきた。

う、眩しい。さすが、王子様!!

こりゃ、普通の人ならイチコロだろうね。



え、私?

好きか嫌いかと言われれば、嫌いじゃあない。

でもね、いきなりほぼ初対面の人にプロポーズ紛いの告白されても、動揺するだけで答えられる訳がないでしょ!!


それに、王族は、ダメだ。


面倒くさいとか、荷が重いとか、そういうのも本音だけど、何より私の出生の問題がある。


私は王族に関わるべきではない。

私には混ぜてはいけない血が半分入っている。


それも、恐らくだが、母の血の方が私は濃いように思うのだ。


夜の方が落ち着くし、魔法も安定するのがいい証拠。何より身体の中に巡る光と闇の力は、大人になればなるほど、はっきりと自覚出来るようになってきた。


自身の力でコントロールしてはいるが、闇の力の方が強いのは私が1番わかっている。



だからこそ、この国の王太子となんて冗談じゃない。


それに、私は今生は、自由に生きたいのだ!!

魔法を堪能して、ルイ達と楽しく生きたい。


いつかは恋愛を…とは思っていたが、それは今じゃないし、王族なんて、もっての他アウトでしょ。


『王子様に見初められて、お妃に!』


なーんて、TL&異世界ファンタジー大好きオタクだった私は、そんな本を大量に読み漁っていたわけだけど、転生してみて思ったのは、"恋愛は平凡が1番"ってこと。


冷静に考えて、王族との結婚なんて、面倒くさいに決まってる。

各国との交流や国内でのお茶会や舞踏会。

参加しなきゃいけない行事目白押しだし、ドレスアップも大変。


それに、王族は一夫一婦ではない。

複数の妻を持てるのだ。勿論、一途に一人だけを娶り、愛す王族だっている。

だが、そうなった場合、周りからのプレッシャーは尋常じゃないだろう。

我が儘だと言われようとも、そんなのはイヤだ。

私は好きな人と2人で幸せになりたいし、子供を産むのに嫌な気持ちを持ちたくない。


恋愛経験のないやつが何を言ってる、と思われるかもしれないけど、それがほんとの気持ちだ。



************************************



『そんなわけで、殿下、私以外を見つけてね。』


…なんて、本音を言えるわけもなく。

私は途方にくれている。


代わりに建前を口にする。


「ディースレイド殿下、お申し出の内容は理解致しました。

けれど、私はただの一庶民です。大変光栄ですが、妃に迎えるには相応しく御座いません。

どうぞ、殿下にとって相応しい方にご求婚なさいませ。」


私の言い分に怒ったのか、彼はピクッと眉を吊り上げ、私を睨んできた。


「私が望んでいるのは、唯1人。

マリー、君だけだ。他の者などいらない。」


「貴方はこの国の王太子ですわ。

小さな頃の恩人だとは言え、私などに同情なさらなくとも…」

「同情などではない。マリーが欲しい。

マリーしかいらない。

その為に、王太子になったんだ」


………はいっ?


今、聞き捨てならない言葉が聞こえた。


「君が危惧しているであろう問題は、私だって考えたさ。

だから、国を変えることにしたんだ。」

「は?」


さっきから、この人は何を言っているのだろう。

もし、彼の言うことを全て鵜呑みにするなら…。


ー彼は、私と出会って好きになって、そんな私と結婚する為に王太子になり、国を変えたー


ということになる。


はぁー!!!??

何それ何それ何よそれー!!!!


あぁ、頭が痛くなってきた。


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