真理恵の恋愛事情
元々本が好きで、昔から本に囲まれて育ってきた。
現実では体験できないようなワクワクする物語に何度徹夜しただろうか。
母親にも『早く寝なさい!!』といつも怒られてたなぁ。
大人になり、社会人として働くようになってからもそれは変わらなかった。
いや、むしろ増えたかもしれない。
仕事に追われ、唯一の趣味とも言える読書は私にとって心の拠り所だった。
恋愛経験もほぼ0だった私は、殊更TL文庫を愛読した。
TLとは、ティーンズラブの略で、ざっくり言うと、女性向けのちょっと大人向け恋愛小説のことだ。
欲求不満か?と思われるかもだが、いい年した大人の女性が何も興味ない方が問題ではないだろうか。
じゃあ、世間で言う藻女や、干物女なのかと言われれば否、である。
日常生活で、決して出会いがないわけではない。
私がいた会社はバリバリのIT企業で、その中で私はそれなりの地位にいるキャリアウーマンだった。
当然周りは男ばかり。
女性が少ない故に、誘われる機会も何度もあった。
でも、『わたし』は非常に厄介な性格の持ち主で、公私の分別をきっちり分けてしまう性分だったのだ。
職場では、仕事の出来る姉貴分な自分を演じていた。その実、ほんとは甘えたがりな面や乙女な面もあったのに、職場で会う男性にはプライベートで上手く本音を告げられないでいた。
好意を持っているかなぁと思う人がいても、自然と壁を作ってしまい、そうこうする内に皆、距離を取ってしまうのだ。
同僚の女友達からは『あんたは鈍い!!』とよく怒られたものだ。
鈍い…のかなぁ。ただ単に臆病なだけだった気もするけど。
そんなわけで、自分に叶えられない恋愛を小説で補っていたわけです。
そのジャンルは現代ものから、ファンタジーまで様々だったけど、最近の専らのハマりものは『異世界ファンタジー』だった!!
ビバ・非現実の集大成!!
私はその世界にどっぷりとハマっていったのです。
そんな私が、異世界転生ですよ!
魔法が使えるわけですよ!!
興奮しないわけがないじゃないですか!!!
いけない、いけない。
つい興奮して、トリップしてしまった。
妖精達が心配そうにこっちを見ていた。
いや、もしかしたら呆れているのかもしれない。
これから彼らに色々聞かなくちゃいけないのに、最初から怪しまれては元も子もない。
ここは友好的にいかなくてはっ!
「あの、これからよろしくおねがいちましゅ!!」
……うん、言葉のことは諦めよう。
所詮3才児だ。
小さな身体を一生懸命動かして、彼らに挨拶をすると、皆、嬉しそうに私の周りをぐるぐる飛びながらキラキラと光り始めた。
えっ、これはなに!?
私の身に何が起こっているというのでしょーか。
『こちらこそー!!』
『貴女みたいな可愛い子で良かったわ』
『君に僕達から祝福をあげる!』
『祝福、祝福ーー♪』
ふわーーーー!!!!!
コレが小説でよく言う祝福の力ってやつですか!!
というか、こんなにあっさりでいいんですかね?
……あ、チート機能ってことかしら?
まぁ、貰えるものは貰っておきましょう!
だってこれで心置きなく魔法が使えるんだから!
そうして、私の異世界ライフがスタートしたのだった。