表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
27/76

迷い子~ディーサイド・芽生え~

こんな真っ直ぐな瞳を見たのは、初めてだ。


俺の周りには、いや、生まれてから1度も、こんなにも真っ直ぐな瞳で見つめられたことなどなかった。


俺はあんなにも悪態をついたのに、それでも彼女の目には光が消えない。それどころか、言い返してきた。


「それはこちらのセリフです。

倒れている貴方を介抱して差し上げたのに、いきなり罵声を浴びせられたら、どんな人だとて、不快な気持ちになりますわ。」


「そっ…………れは、わるかった」


まさか反論されるとは思わず、声が上擦ってしまった。…かっこわるい…。


「解れば良いのです。」


それどころか、満面の笑みを返してきた。

なんの裏もない、無垢な笑顔。俺は思いっきり動揺した。見つめていられなくて、即座に目を逸らした。


何故だ、何でそんなにも鮮やかに笑えるんだ。

得体の知れないくそ生意気なガキが、罵声を浴びせてきたんだぞ。普通、嫌がるし、もっと皮肉な笑いとかになるもんだろう!!


得たいの知れない……そういえば、この少女はどこからきたんだ…?

俺が眠るまでの間、人のいる気配はどこにも感じられなかった。俺も不審人物なわけだが、それを言うなら、彼女も同じだ。

だが、逆に言えば、王城に帰る希望が見えてきたことにもなる。


だが、俺の予想が正しければ、その僅かな希望も限りなく絶望に近い。こんな少女1人いたところで、状況は改善されない。いや、むしろ悪化したのではないだろうか。


自分を守るように、身体に腕を回し、俺は無意識に声に出してしまった。


「……ここは、どこだ」


返ってくるはずがないと思っていた返答は、さも当然のように彼女の口から紡がれる。


「ですから、私が案内しようと思っていたのに、貴方がいきなり怒鳴ったりするから…」

「ここがどこだかわかるのか!?」

「シュヴァルトの森ですわ」

「…うそ………だろ」


なにがなにやらわけがわからない。

俺は何に驚けばいいんだろうか。


魔の森と言われる禁忌の森に自らがいることにショックを受ければ良いのか。

彼女の口から予想外の正確な返答があったことに驚けばいいのか。

ちょっと拗ねたような言い種が可愛いと思った自分に驚けばいいのか。


……うん、俺、ちょっと落ち着こう。

特に最後。

なんだ、この不可解な感情は。

いや、気のせいだ!そんなはずがない。

動揺しているせいで、頭が可笑しくなっているんだ、そうだそうだ。


俺は自分の新たな感情に見て見ぬふりをし、状況を整理する。


ここがシュヴァルトの森なのは、恐らく間違いがない。

叔父上の行動やこの場所の特徴を考えても、それ以外ありえない。ここは、普通の森にしては、魔力が満ちすぎている。

それも、とても自然に。


こんなにも精霊の力が満ちているところを俺は生まれてから1度も見たことがない。

だが、あの変態との訓練の成果なのだろう。待機にある精霊の力を感じることが出来る。あの訓練場は、人工的に魔力を溜めていたが、その感覚に似ている。

そんな森は、ここ以外あるはずがない。

何より、この場所は俺の国の隣にある。

これよりも遠い場所は、あの叔父上にも飛ばせなかったはずだ。国境の問題もあるし、何より国際問題になるようなことをしたら、1番困るのは叔父上だろう。

なんと言っても、あの従兄弟殿を王位継承者にして国を牛耳ろうとしているのだから。


さて、それよりも問題はこの少女だ。


一体何者だ?

貴族令嬢のような口振りだが、こんな少女、俺は1度も見たことがない。それに、年齢よりも大人びているのが気になる。

…何かを知っているのだろうか?あの純粋無垢な笑顔の下に、腹黒い感情を隠しているのか。


いや、そんなはずはない、そうじゃなきゃ、いい。


俺は無意識に彼女を庇っていた。

どうしたというのだろうか。

今までの俺なら、間違いなく疑ってかかっていた。なのに、どうして、彼女にはそうじゃなければいいと、願ってしまうのだろうか。


俺は、最初に疑問に思ったことを尋ねた。

そうすれば、少しは本心がわかるかもしれない、そう思いながら。


そうしたら、また怒られた。

俺は必死にまた切り返す。


あれ?俺、こんなにヘタレだったか…?

彼女の前ではなんだか何やっても決まらない気がする。。。


何故か話の流れは名前の話になり、彼女の名前を知る。


マリエリア。

マリーと愛称を名乗る彼女。

やはり俺の国の名だたる貴族令嬢のどこにも聞き覚えがない。

そう思いながら、俺は、彼女に、躊躇いつつ名乗った。

「俺は、ディー…だ」


彼女には、ディトと、呼んで欲しくない。

俺の本能が訴えていた。


そんな俺の不審な態度に一瞬目を丸くしていた彼女だが、すぐに、また済ました令嬢顔をして、話を続けた。


あぁ、俺が見たいのは、そんな顔じゃないのに…。


俺は、真っ直ぐに睨み付けてきた彼女のあの眼差しが、脳裏に焼き付いて離れなかった。




あんな真面目そうなシーンで、実は既にディーの執着は始まっていたようです。


『…ようです。』ってwww


…私も知りませんでしたよwww

ヘタレ王子、ガンバ!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ