想い
「私はお前に婚約者を、と言ったな。」
「えぇ、はい。」
「お前は何故、婚約者が必要だと思う」
父上は何が言いたいのだろうか。良くわからないが、答えないわけにはいかない。
俺は思ってることを口にする。
「…それは、国のため、ですよね。
国にとって有益な貴族と縁戚になり、より国を発展させるためのものだと考えています。」
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王族に必要なのは、愛だの恋だのではない。有益か無益か、有害か無害か。それだけだろう。
というより、俺には愛だとか恋だとかそういうものがよくわからない。
頭では理解しているし、母上や父上に愛されているというのも理解っている。
だが、俺自身が誰かに対して恋しいとか愛しいとか思えないのだ。
今まで様々な異性に出逢って来た。王族という立場と容姿から、好意を持たれることもあった。
だが、そんなものただ煩わしいだけだった。
ある者は媚び、またある者は殺意を滲ませ近付いてくる。
人より感情を読み取る能力に優れているせいもあり、表向きの顔の裏にある感情がわかってしまうのだ。
だったら、俺は、そんな感情などいらない。
そんなものがあるから、母上は命を狙われる。
義兄上からはやっかまれる。
それでも、王族として婚約者を取らねばならないというのだから、俺の婚約者になる人は可哀想だと思うのは当然だと思う。
俺は決して、愛せないし、子をなす行為もただの義務でしかないのだから。まぁ、年齢的にまだ先の話だから、これに関しては、することもなく終わるかもしれないが…
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父上は俺の言葉を聞き、首肯し、静かに話し始めた。
「確かに王族として、その考えは間違いではない。」
「はい。」
「だが、私はディーには幸せになって欲しいと思っている。」
「…しあわせに?」
どういうことだろうか。
俺の様子に苦笑いしながら、父上は申し訳なさそうに呟く。
「お前がそういう性格になってしまったのは、私の…いや、私とこの国のせいだろう」
「そんなことは…っ」
「いや、いい。これは紛れもない事実だ。」
「それでも、私は願わずにはいられないのだよ。
お前が心から愛する、愛せる女性に出逢える可能性を。」
ー可能性ー
父上にも、わかってはいるのだ。
その存在を見つけることがいかに難しいことなのか。もしかしたら、会えないまま一生を終えるかもしれない。
それでも…思わず願ってしまうというのか。




