変人のあいつ
奇特な奴というのもいたもので、身内以外にも俺に構ってくる奴がいた。
あいつは…一言で言えば『変人』だった。
俺は今日も王宮の1番北にあるこの屋敷にやって来た。あまり人が寄り付かない森の奥にある寂れた屋敷で、王宮で働く人の中でも知らない人もいるのではないだろうか。
何せ、今のこの国に必要とは思えない場所だからだ。
無言で扉を開けると、屋敷の奥へと進む。
幾つかの部屋を通り過ぎ、目的の部屋の前に着くと、先程同様ノックもなしに扉を開ける。
中には沢山の書物と実験器具のようなもの、それから複数の草花が置かれた机や棚がところ狭しと並べられている。
緑色の髪を緩く三つ編みにして後ろで縛っているここの住人は、扉の開く音に気付き、読んでいた本を閉じ、こちらを振り向いた。
「あら、ディーちゃんじゃない。
いらっしゃーい♪」
「…ちゃん付けはやめろ。気持ち悪い。」
「まっ!随分な言い種ね!でも、そこがまた良いわ~」
「男に言われても嬉しくない」
「ひっどーい!差別だわ!」
身体をしならせながら、きゃっきゃとはしゃいでいるが、こんな口調でも、こいつはれっきとした男だ。
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レイニー・ブルネリク。20歳。
公爵の嫡男でありながら、強い魔力持ちの【異端者】だ。だが、彼は【異端者】であるよりも、変わり者として人々に知られている。
公爵家の家督を次男に譲り、本人は魔法研究のため、王国魔法研究院に所属。そのまま、研究院の屋敷に住み込んでいる。
極めつけは、男のなりをしておネエ言葉を使い、巷ではゲイなのではないかと噂されている。
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レイニーは頬に手を当て、ほんのり赤らめながら
俺を見た。
「昔の素直なディーちゃんも可愛らしかったけど、今のツンツンしてるディーちゃんも悪くないわ~」
「悪かったな、態度悪くて」
「別に気にしてないわよ。
さて。それより、早速始めましょっか。
それともここで休憩してからにする?」
「いや、構わない。始めてくれ。」
そう、ここは、王国魔法研究院、その場所だ。
イルバーノを怪我させて以来、俺はこの場所の存在を耳にし、密かに魔力コントロールのため修練に通っている。
同じ魔力持ちの【異端者】故か、レイニーは、出会った当初からやたらと俺に絡んできて、一時は通うのを辞めようかとも思ったが、ぐっと堪えて今に至る。
お陰で、めったなことでは暴走しなくなった。
ただし、この修練は、条件付きだ。
俺が魔力コントロールをここでさせて貰う代わりに、レイニーの実験…もとい、研究に付き合うこと。
どうせ部屋にいても息苦しいだけだから、俺はその条件を承諾した。
その過程で、光の幻術や花を咲かせると言った魔法をやったりもした。
後者はともかく、前者はなんの役にも立たないだろうと俺は憤慨したが、「いつか役に立つ日が来るわよ」と茶化されて終わった。
ーまさか、その数年後、この力が俺の運命を変えることになるとは思いもしなかったー




