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兄弟

平和だったこの国は、俺が生まれたときから、数多の陰謀が渦巻くようになった。


ディースレイド・ウィリアム・サンフェリオ。


サンフェリオ国の第2王子であり、光の巫女の血を受け継ぐもの。


それが俺が生まれたときから背負っている宿命だ。


俺は、生まれたときから強い魔力を持っていた。それ故だろうか。頭の回転が早く、子供らしくない大人びた子供だった。


魔力持ちが年々減る中で、俺の存在は、歓喜と恐怖の象徴だった。


あるものは、再び巫女が誕生し、この国がより栄えると喜び勇み、またあるものは、光の巫女が男であることに過去の悪夢の再来だと怯え、畏怖の感情を抱いた。


そんな二分する思想の貴族同士で揉めることも1度や2度ではなく、時には政権争いにまで発展してしまうことも少なくなかった。


【ディースレイド】

通称【ディト】


それは、この国の最後の巫女の通り名。

俺の名前は、俺であって俺ではない。


俺の名は、まるで戒めのように重くのし掛かった。



物心つく頃には、俺は自分自身が忌み嫌われている存在なのだと理解するようになり、自然と周りと距離を取るようになった。


平和に生きたい。

唯それだけが俺の望みだった。


しかし、5歳になったばかりの頃、その事件は起きてしまった。


************************************




「おい、ディト」


後ろから不機嫌そうな声を掛けてきたのは、この国の第1王子、イルバーノ・ウィリアム・サンフェリオ。


俺の3つ年上の異母兄は、こげ茶色の短髪に濃い紫色の瞳をしている。

異母兄は母譲りのそのくすんだ髪色が嫌いで、いつも金髪碧眼の俺の容姿に少しの羨望と嫉妬の視線を送ってくる。

それが原因でひどい言い掛かりや、ありもしない罪を擦り付けてくる。つまるところ、逆恨みだ。


所詮、子供のやるイタズラの範疇に過ぎないので、俺は当たり障りのない範囲で受け流していた。


しかし、この日の彼はいつもと違っていた。


「なんでしょうか?

イル義兄上」


なるべく穏便に済ませられるよう、いつもの作り笑いを浮かべる。


イルはディトの首元を見て、小バカにしたように鼻で嗤った。


「お前、まだそんなもの付けてるんだな。

どうせ正妃の地位が欲しいあの女が、周囲に嘘をつかせて作った偽物だろうに。」


聞き捨てならない台詞に、思わず口が動いてしまった。


「恐れながら、イル義兄上。

このペンダントは間違いなく生まれたときからこの身にあるもので、誰にも取ることが叶いません。」

「そんなもの、みていないところで取ってるかもしれないじゃないか」

「それに、母はそんなことで嘘をつくような人ではありませんし、まして、正妃など望んではおられません。」

「嘘をつくな!!

父上の寵愛を欲しいままにし、オレの母上を蹴落とそうとしている賤しい牝狐のくせに!」


その言葉に俺はカッとなって反論してしまった。



「俺の母様をバカにするな!!」



その怒号に呼応するように、俺の周りで光っていた塊が、光を増した。


「な、なんだ!?この光は…っ。

や、やめっ……うわーーーーー!!」



俺は、この日初めて、自身の魔力で人を傷つけてしまった。


************************************

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