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コードグラビティ・ロード  作者: 李戸 侑大
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Code06『能力解放編Ⅱ』

『能力使い』と言う存在自体が世の中に登場する遥か前。第一次世界大戦と言う戦争があった…のは皆も重々承知であることかと思う。

その戦争では、一つの国ーー『日本』に米軍が開発した兵器『原子爆弾』。兵器名を、『リトルボーイ』。ヒロシマ、ナガサキと呼ばれる場所に投下され、日本は徹底抗戦を掲げていたが、その原子爆弾『リトルボーイ』の投下により、日本は降伏した。

その行動の末に、戦争は終結に至った訳だ。

そして唐突ではあるが、その戦争に纏わるある銃の話をしよう。

その大戦にて使用された銃、「AutomaticoM1913」。通称オートマチコ。正式名称を、「Moschetto Automatico Beretta Mod.1918」。名の通り、1918年に製造、導入された自動小銃だ。

自動小銃とは一概に言っても、フルオート射撃のみであったのは、製造当初のみであった。だが後に、セレクタレバーやデュアルトリガーを組み込み、セレクティブ・ファイア機能を追加したモデルも設計されたのだ。

今彼らが握っている"それ"は、セレクティブ・ファイア機構を搭載したもの。

つまり、後の後継銃となる。

突きつけられた刃ーーオートマチコの先端に取り付けられた、折り畳み式スパイク型銃剣ーーが、互いの頬に当てられ、ひしひしとその切れ味が伝わってくる。


「やっぱりィ…銃剣での突撃は最高だよなァ…ッ!」


男…狂気の代弁者、インサニティは笑いに顔を歪め、俺…シャーディーに、言葉の刃を突き立てる。


「胸に深々と突き立てられた刃、深紅に染まった胸元。痛みに顔を歪め、必死に引き抜こうとする、必死に生きようとするあの表情、生を求めるあの表情…」


「ふひッ」と、不敵な笑みを浮かべ、大きな左の掌に顔をうずくめる。


「ふ、ふふ…ッ…ふふふひひッひァッ!!」


その様は、一言で表現するのであらば、『狂気の沙汰』。その一言に尽きる。


「さいッこうだよなァッ!!」


その笑いに恐れをなしたのか。はたまた同調したのかは定かではないが、シャーディーが渋い顔をしながら、


「"一度死んだような"言い様だな。全くもって恐ろしい。恐ろしいぞ、中佐。」


「中佐とは…ふひッ、いやぁ…なかなか、堕ちたものだねェ…」


その言葉に、嘲笑混じり、微笑混じりの「ふッ」と言う笑いと共に、


「そうでもないさ。最初はなから中佐というのも粋だろう?」


先ほどのシャーディーの行動に対抗するかのように、自嘲混じりなのか、それともこちらを貶した笑いなのか。「はッ」と一つ、笑みを見せた。


「大隊を組織していた時期が懐かしい。」


「大半はお前の影響で廃人になったか、命を落としたかだろう?」


疑問符を浮かべながらインサニティに問うシャーディー。

その言葉に対し訝しげな表情を浮かべながらも、自分の『あるじ』、自分の『上官』でもあるシャーディーには粗暴な態度は取れない。

昔からインサニティは上下関係と言うものを、力の差と言うものを無下に出来ない性格であった。

幼少期にあったのだ。戦争と言うものが。

故にインサニティは、慎重に、されど的確に言葉を探すと言う昔では考えられない程の暴挙に出た。


「所詮そこまでの奴らだったってェ訳だ。俺はお前等程感慨深くは無いからなァ。切り捨てるモンはしっかり切り捨てるさァ。」


やっと言えたーー

その安堵感からか、全身の毛穴が、一つ一つの毛穴が、ぶあっ、と広がっていくのが手に取るように、わかる。

果たしてそれは、言えたことからの安堵感からなのか。

はたまた、シャーディーと言う上官への忠誠心からなのか。

そんな事は誰も、彼も、わかるまい。

そして果たして、彼の『切り捨てる』方針で、彼の鍛錬、訓練で耐え抜き、生き残る者が居たのだろうか。

そして見事に彼の能力を我がモノとする事が出来たのだろうか。


否。


そんな事が出来る筈がない。そう、出来る筈が無いのは明確。


「しっかり切り捨てる、ねぇ…」


いや、そもそもの話、否定するまでも無かったのかもしれない。

いわずもがな、彼の前に立ったものは一人残らず闇に、地に、地獄に堕ちた。

それは『当たり前』。それが『当たり前』なのだ。

それは比喩でも隠喩でも直喩でも何でもない、本当の、事柄なのだ。


「言ったろう?『お前等程感慨深くない』…となァ。」


「はは、そうだったな。中佐。」


シャーディーが「ふぅ…」と、深いため息を付く。

そのそれは、『怒り』よりもまた違ったーーそう、あえて表現するのならばーー『呆れ』。

そう、シャーディーは今確かに、自分の配下である『中佐』に呆れの感情を抱いたのである。

だがその感情とは裏腹に、『期待』の二文字ーー期待の感情も抱いてしまう。


「さァて、茶番はここまでだァ…」


「本番とでも?」


その言葉に応じるかのように、二人の目付きがギリッと鋭くなる。

それに応じるかのように、互いが握る突撃銃ーーAutomaticoM1913。

その先端に取って付けられたサバイバルナイフのような剣。

折り畳み式の銃剣の剣先、その鋭い切ッ先の輝きがより一層増し、凛と煌めいている。


「まァ…そう言うこった。」


「さぁ、やろうか。」


両者共にカチャ、と安全装置セーフティレバーを引き上げた。

さすが、"プロ"である。その手付き、その手際の良さ。


ーーいちじくの実は実らずとも。


セレクティブ・ファイア機構を用いたセレクトレバー…

三つの刻印の内、一番左に刻まれた、「Safe」と掘られた刻印。

即ち、二つ目の安全装置だ。

そのセレクトレバー…略して言えば、『セレクター』。

そのセレクターの方向を、『安全装置セーフティ』から、三段目に位置する『FULL』と刻まれた元へ、レバーを親指で弾くかのように移動させる。

直後、カチッと言う無機質な音と共に、ピストンを制御していたパーツが解除され、その音と同時に、フルオートでの射撃が可能になった。


ーーたとえその身が朽ちても。


「では始めようかァ…」


「そうだな、始めよう。」


「「修羅の道を歩み、向かいたまえ」」


互いの。

ーー戦いの火蓋が、「断ち」切って落とされた。

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