Code02『ワールドオブレジスタンス』
あれからと言うもの、事務作業も不死者達のお陰であらかた片付き、俺達、『グラビティ』にもある程度の余裕が出来る程になった。
だが、書類地獄に手を休める事なく一人居たのは苦痛でもあったが。
そんなことはさておき、だ。
さぁ、準備は出来た。
反逆の準備だ。
「諸君。反逆の、蜂起の、決起の時間だ。」
「さぁ、楽しむぞぉ…っ!!」
心の底からの呟きだった。
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現在、我が『グラビティ』はブラジルにて仮ではあるが、しっかりとた拠点を置いている。
「置く」という表現が合っているのか危ういところはあるのだが…。
と言うと、ブラジル国民以外の純『グラビティ』は、ブラジル上空に地面と平行にホバリングしている、実戦型物資搬入用軍機、『ナイトメア』にて、生活、軍事行動、移動目的、として使われている。
実はこの実戦型物資搬入用軍機、『ナイトメア』、少しばかり戦闘能力も兼ね備えている。
と言うのもこの機体、世界で初の機能、「高圧粒子砲」が搭載されている。
この「高圧粒子砲」には、発動環境さえ整っていればいつでも撃てる、と言うメリットがある。その威力はかつて広島に落とされたかの原子爆弾「リトルボーイ」の威力を軽く越す程である。
だがその反面、そんな超高性能の「高圧粒子砲」には弱点がある。
それは、チャージが長いが故に、連射が出来ない、という事。それと、一度その場で打つと場所を移動しなければ、装填が出来ないと言う事。
理由としては、この「高圧粒子砲」は、空気中の「光子」と呼ばれるエネルギーを砲塔に取り込み、何倍にも圧縮して放出するーーそれがこの「高圧粒子砲」の原理である。
故に乱用は出来ず、ここぞという時ーー例を上げるとするならば、敵陣を崩したり、撤退戦の時、殿を務める時、などにしか使えないのである。
そんな使い勝手が微妙に悪い武器ではあるが、それでも攻撃力は折り紙付きである。
おっと、これは先程も述べたものだったか。
とまぁ、そんな心強い兵器があっても、俺達、『グラビティ』には詰まるところ…
残存兵力、というか、『グラビティ』に所属する人間がーー
二人しか、居ないのである。
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「なぁ、ノスフェラトゥ。時に聞きたいことがあるんだが、いいか?」
「なぁに?兄」
と、紅茶を注ぐ手を止め、その整った顔立ちと、よく手入れされているであろう長髪の髪を揺らしながらこちらを振り返るのは不死者こと、ノスフェラトゥ・ヴィオラ・ロード。俺の、実の妹だ。
さて、ここでお気づきの方もいるのでは無いだろうか。
彼女のノスフェラトゥと言う名前…俺の戦略ゲームでつけられた異名、『不死者』と同じではないか、と。
まぁ実のところ、この異名は俺の妹が勝手に付けたものではあった。
妹もその頃、俺がプレイしていたものと同じ戦略ゲームーー『ワールドオブレジスタンス』を、俺の影響か、父親の影響かは分かりかねるが、恐らくは父の影響だったのだろう。妹と俺は同時期に、しかも同じジャンル同じゲーム『ワールドオブレジスタンス』をプレイしていたのだ。
そのせいか、二人は策略と知識とある『能力』のみでここまで駆け上がったきたと言っても過言ではなかった。
実質、先日のブラジル戦だってそうだ。
流石にブラジル軍29万の兵士をたった二人でなんの考えも無しに正面特攻したりしたら勝算はゼロに等しい。
というか、ゼロだ。
なにかしらの『能力』があり、尚且つ頭のキレる者以外は、な。
「時に、妹よ。」
「はいはい、なぁに?てゆーか兄ちゃんわざと?」
と、割と険悪な顔をしながら聞き返してくる。
「ここの所、ゲームをやっていなかったではないか」
「うん。まぁ…そりゃぁあれだけ事務作業を手伝ってたら、やる暇も無かったからね…」
と、苦笑いをしながら応じる。
「おっと。はいな、紅茶が入りましたよっと!」
「まぁってましたぁっうぃぃぃ!」
と、紅茶がいれられたマグカップを片手に縦長の世間一般で言う「薄型」新世代ゲーム機器「FS-X」の電源を入れた。
瞬間、画面に「welcome to FS-X!!」のロゴが表示される。
流石新世代、次世代ゲーム機器、と言った所か、旧世代のゲーム機器とは起動の早さが違う。
機動力が違うのだよ!ふははははははっ!!
とガルダム風に言ってみる。
「っと。接続終わったぞいぞい!」
「ぞいぞい!」
「お前は青葉か」
おかしくも盛大なツッコミを入れ、一息もつかないと言うか付けないまま、俺はコントローラーを妹に渡す。
「ありがと」
と言いながらディスクーー円盤ーーまあ端的に言ってしまえば、カセット『ワールドオブレジスタンス』をゲーム機器「FS-X」に挿入する。
そして毎回恒例、先行争奪戦が始まる。
このゲーム、『ワールドオブレジスタンス』はチェスと同じように、先手が有利なゲーム。が故に、先行争奪戦が勃発する訳だ。
だが、先行にもデメリットはある。
先行が操る「レジスタンス」は、名の通り反逆軍。バックに国家レベルの組織がいる訳でもなく、ましてや、国家レベルの装備を全員まるまる一式揃えると言うのも経済的に無茶、と言うか無理がある。
そんな絶望的な状況にでも「希望」と言う、圧倒的優位性がある。
レジスタンス一人ひとりにその、潜在力を秘めている。
そんな最弱にして無敗、最弱にして最強な彼らーー
反逆軍に対し王立軍は、充実した武装、充実した戦力、充実したバックーー
そんな、圧倒的優位性を持った王立軍でも「恐怖」と言う感情には耐え難いものがある。
そんなレジスタンスは相手にどう相手に恐怖心を植え込むか、そんな王立軍はどう相手をねじ伏せるか。
が、故に。
故に、「先行」と言う初めの「一手」、「攻撃」が重要になり先行の取り合いに発展する訳なのだ。
「勝負は始まる前に終わる!」
「それは、俺も同感だ!」
「「諸君。反逆の、蜂起の、決起の時間だ。」」
「「さぁ、楽しむぞぉ…っ!!」」
こうして。
二人の戦いの火蓋が切って落とされる。
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その後は終わること無き心理戦。その時間、おおよそ八時間。
流石に体力、と言うか、精神的、というか…。
少しばかり、自分に「来る」所がある。
「「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ…」」
と、二人同時に深い、深いため息を零す。
と言うのも、今朝まで書類を捌き、徹夜漬けで疲弊しきっていた体にムチを打ち八時間もの間、ずっと思考の巡らせ合い、つまり、八時間ずっと集中を切らさず油断も隙も見せずにゲームをしていた訳なのだ。
だが、結果は「引き分け」。"また"次回へ持ち越しである。
「おま…あのタイミングの『復射波動』はない…って…」
「にぃ…こそ…あそこでの…能力…『グラビティ』は…ずるい…」
と言う言葉を残し、二人の意識は闇へ堕ちて行った。
久々の投稿となってしまい、申し訳ございません。
少し忙しく、執筆する時間があまりありませんでした。
と、自己弁護してみます。すごくダサいですね俺。
ではまた次回お会いしましょう♪