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コードグラビティ・ロード  作者: 李戸 侑大
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Code01『反逆の不死者(ノスフェラトゥ)』


事務室にてーー

自分のすぐ側にある、机の上に山のように積み上げられた書類に目を向け、思わず深いため息を零す。


「意外と世界反逆、大変だなぁ…」


辛辣な感想だった。


彼ーーシャーディー・ヴィオラ・ロードは、二十代にして世界に、父を憎しみ、憎悪の感情を覚え、王国に、父に反旗を翻した男である。


その経緯は…後々、順を追って話すとするが、それにしてもあれだ。ここまで事務作業が大変な作業だとは思わなかったのだ。


俺は、父の恩恵を最大限受けて育った。言ってしまえば、親の七光りを無限に使えるような立場に居た訳だ。

ほぼチートやチーターやろそんなん!!


と言うのも、当時、数年前に遡るがーー5年前、俺は王室にいる15歳だった。思春期真っ盛りのこの時期。

「ある」出来事が起こった。

俺は、この国は腐っていると思った。こんなものを許容出来る世の中では駄目だ、と思った。だから、だから反旗を翻した。

この国を、この世界を変えてやる。

そして、この国の長となる。そう、決意したのだ。



とまぁ、そんな出来事も、そんな決意も、一昔前の話になるが…。

もう五年も前の話になる。


「五年…かぁ…」


再度、深~いため息をつく。

そう。もう5年なのだ。父に反旗を翻してもう五年。


実質、行動に移せたのはつい最近の出来事ではあるのだが、それでも、思い立ってから五年でまだこんな事務作業をしているとなると、何故だか悲しくなってくる所がある。


突然だが、正直、俺は頭が回る方だ。まぁ怠惰な生活を送って来た俺が言うのも気に障る所が多少はあるだろうが、そんな怠惰な俺でも父ーーシャルルの教育はしっかりと受けていた。


戦術、戦略ゲームと言うほぼ遊びの様な形ではあったが…。


だが、俺はそのゲーム「ワールドオブレジスタンス」ーーまぁ、簡単に言ってしまえばこれも政府、国家に反旗を翻した市民達を指揮し、勝利へと導く、と言ったものだった。


俺はこのゲームのオンライン機能で唯一無敗、尚且つ、毎月の様に高得点を叩き出していた。

いわゆるトップランカー。

いわゆるトッププレイヤー、であった。


そんな唯一無敗の俺に付いた異名は、『不死者ノスフェラトゥ』だった。

ゲームオンラインマッチングで『不死者ノスフェラトゥ』の名前が出てくると、即座に通信を切る者も居た。

そこまで畏怖され、恐怖され、と言う存在であった。


そんな戦略ゲームの知識、経験を生かし先月あたりだったか、俺、シャーディーの指揮と、俺が率いる軍隊『グラビティ』特殊戦闘専門部隊隊長、コードネーム「不死者ノスフェラトゥ」の活躍により、手始めにブラジルを降伏、我軍に介入させた。


いや、させたと言うよりはさせてくれ、と言われたからさせた、と言うのが正しいのであろう。


こうして、ブラジルを仮拠点として置いている我ら『グラビティ』は、珈琲を啜りながら、絶賛事務作業中なのであった。


もはや事務作業と言うより、刑務作業に近いものがある。


わざわざ見栄を貼るためだけにブラックにし、一口目で撃沈した俺は、その反省というか教訓を生かし、その苦~い珈琲の中にミルクと砂糖を入れ、かき混ぜながら呟いた。


「あー、エロゲしたい。」


「何を血迷った!?」


と、彼女。


「お前だって実はやりたいんだろ?ほら、この間発売されたやつ、あの、ほらあれ、あ!そうそう、「いじわる魔女と魔性の」」


「ちっ、ちがっ、それは、その///」


「あっれれぇ?何が違うのかなぁ?」


と、俺は恐らく外でやったら確実に交番に通報されているであろう顔を浮かべながら、彼女ーー不死者ノスフェラトゥをからかってみる。とはいえ、予想以上のリアクションであった。

マンガやアニメだったら絶対というかお約束だが、必ず「カァァァ」と効果音が付きそうな程に、彼女の顔は真っ赤になっていた。

もはやここまでのリアクションをしてくれると見ていて楽しくなってくる。


あれ…意外と…可愛い…かも…

なんて、な。そんな感情はあってたまるかっての!

と、自主規制したつもりだったが、不死者ノスフェラトゥは、俺の顔の綻びを、見逃さなかったようだ。


「ちょっとー?あのー?シャーディーさん?もしかしてー?可愛いとか思っちゃってます?」


口から黒い液体が弧を描いて綺麗に飛び散った。まるでかのマーライオンのような有り様であった。


「ちょ、おろって、なひ、ん、から///」


噛んだ。

しかも、めっちゃ恥じらいながら。


何やってんだ俺。男のデレなんて誰が期待してんだよ死ね、今すぐ焼身自殺でも投身自殺でも首吊り自殺でも飛び込み自殺でもいいから死にたい。死にたい。


と、額に手を当て、珈琲が入ったマグカップの取っ手に手を掛ける。

その手は震えている訳で。当然中にあった珈琲は空に舞う訳で。


「「あ」」


その後は、お察しの通りだ。


この後めちゃくちゃ怒られた。


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