プロローグ
一つ、また一つと人類が創り上げた「創造物」が倒壊していく。
一つ一つと倒れゆく建造物に合わせ、奏でられる老若男女の阿鼻叫喚。
おきゃあおぎゃあ、と泣き喚く子供も、自分で見る最後の曇天の空に祈りながら儚く散ってゆく神父も、全て。
弾丸が。一発一発の弾丸が。
脇腹を抉り、脊髄を抉り、脳髄を抉り、心臓を抉り、脚を抉り、両腕を抉り。
弾丸が、一発一発の弾丸が。
眼球を潰し、眉間を貫き、海馬を破壊し、血しぶきを上げ、散ってゆく。
「人の命とは実に尊い。そして、儚い。人などそんなものだ。そんなものなのだ。」
力を行使し、兵を従わせる。
だがしかし、当然反逆する者も出現する。
だがそれは、その理由は。
主となる王の技量、知量、指揮力、統率力、掌握力に干渉し、そして絶対的に兵の信頼へと比例する。
「奴を討てば反乱は終わる!奴の司令部に攻め込め!」
「「「仰せの、ままに!」」」
敵の司令官、それとも指揮官だろうか…そんなことはまだ後の驚きには全く及ばない事柄だった。
スピーカーで音を増幅させ、敵兵をまるでチェスの駒の様に操っていく。
それは見事な様だ。
敵の一人一人が同じ思想を抱いているのだ。
精密なネットワークで構築された彼らは、ジャミング工作で通信機器の阻害を行ったとしても、各々が自らの役割を、与えられた役を演じきる事が出来る。
彼らはそんな連中だ。
そんな組織だ。
ここは舞台だ。盤上だ。
各々が各々の力を持ち、各々が各々の思想を持ち、各々が各々のルールの元に動いている。
だがそこに「意思」は無い。
与えられた命(司令)を演じきるだけの単なる手駒でしかない。
そんな人間に、「命の価値」は無い。
そこで、その時点で、命の儚さ、尊さは無くなる。
だから、だからこそ。
彼は反旗を翻した。
だから、だからこそ。
彼は国家を的に回した。
自己犠牲でも、自己満足でも無い。
ましてや、誰かの為に、なんて感情でも無い。
では何故彼は、何の目的の為に我を動かすのか。何故王を孤立させ、孤島の存在として、ノーライフキングとして生きるのか。
そこに命の価値を、尊さを、儚さを。
求めるために、その為に存在するのだから。
変わり果てたそれを呆然と眺めながら、彼は、決意する。
決心する。
「俺は…修羅の道を行け。」
「俺は…修羅の道を…行く!!」