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その十二

短めです。

 二人が降り立ったのはバルコニー。欄干には蔦が巻き付いている。

「ジューク、小瓶を……」

「わかった」

 そう頷くと、ジュークはフェニルの手をひき部屋の中へ入った。

 フェニルは頬をほんのりと朱に染めたが、それに逆らうことはしない。


 部屋の中と外では、ずいぶんと違う――――……と、そこであることに気づく。

「先ほどの部屋と違いません?」

 先ほどの部屋はベッド、机などしか置かれていない質素な物だったが、こちらは長椅子(カウチ)などもあり比較的豪華だ。

(それにあの部屋にはバルコニーなんて付いていなかったわ)

「ああ、それがどうかしたのか?」

「いえ……」

 きっとそんなこと思っていないのだろうけれど、『気づかなかったのか』と少々バカにされたように感じた。

「それより小瓶ですわ。見せて頂戴」

 フェニルが言うとジュークは机に目を向け、そうしてからその上に置いてあった小瓶を手に取った。それからフェニルの手にそれを渡す。

 じっと見たり、裏返してみたり、としているうちにあることに気づいた。


(これ……)


 栓をしていたコルクにうっすらと埃が積もっていたのだ。

 いくらうっすりと、とはいえ余程保存している環境が悪くなければこの短時間で埃など積もるはずがないだろう。

 つまりこの小瓶は今日開けられたものではないということ。

 ならばこの小瓶に入っていた毒を粥に混ぜることなど不可能だろう。コルクを外さずに、また瓶を壊すことをせずに、毒だけを外に出す方法などないのだから。

 しかし、とフェニルは再び違和感を感じる。

(こんなこと、誰でも気付くのではないかしら?)

 それなのになぜ、コルクに埃が積もっていることを見逃したのか。

(意味が、わからないわ。

 ただ気づかなかっただけ? 誰も追及しないと考えたの?

 それとも……わざとこうして誰かが気がつくように?)

 全くわからなかった。

 ラフィットは一体何を考えているのだろう。それともラフィットは関係ないのだろうか? まさか。


 いいえ、とそこでフェニルは思考を止めた。

 考えても意味は無い。

 今最優先すべきはフェニルがジュークを屠ろうとしたのではない、と証明することだ。

「ジューク」

 フェニルは顔を上げた。

「この城に仕える者を全て呼び寄せて」

「どこに?」

「……――――大広間に」

 ジュークは一拍置いてから頷く。


 もしもラフィットがフェニルを陥れようとしたのならば、きっとどこかでぼろを出すだろう。


(後悔させてやるわ。私を陥れようとしたこと……!)


 フェニルはぐっと小瓶を握りしめた。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


「私がこうしてあなた方を呼び集めたのは他でもない、私にかかった嫌疑を晴らすためよ」

 ジュークの後ろから歩み出て、ぐるりと使用人らを見回す。

 すると、ラフィットが少しだが目を見開いたのがわかった。けれどすぐに無表情に変わるラフィット。

 それを見て顔をしかめたが、そのような場合ではないと考え口を開く。

「リタ、この小瓶を私の部屋で発見した、と言ったわね?

 それは具体的に、どの場所でかしら? 戸棚の中? 机の上?」

(大丈夫よ。私の考えは間違っていないはず)

 ―――――さあ反撃の始まりだ。

次回、推理パートです。推理と言っても立派なものではありませんが……。


お読みいただきありがとうございます。

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