一話
ー日本某所ー
中空に向かって話しかける青年が一人。
「どうも、こんにちは。...えーっとあなた今どんな感じになってるか理解されてるでしょうか?」
...つくづく、こんなことをしてると変人にしか見えないよなぁ…
まぁそんなことよりも今はこれをどうにかしないと
「あぁ、はいはい意識がすぅーってところまでは覚えていらっしゃると。えぇ、そういう方、多いですね。では冷酷かもしれませんが、現状を説明させていただきます。では自分の体を見ようとしてください。
...え、なぜ見てくださいではないかって?やってみれば分かりますよ。...はい、見えませんというか視界を動かした、という感触がありませんね。...はいはい今説明しますよ。あなたは死にました。もしくはそれに準ずる状態、まぁ端的にいえば意識もなく、死ぬ一歩手前です。...あぁはいはいやっぱりそう言いますよね。私は話していて意識もはっきりしていると。では意識のなくなる前を頑張って思い出してください。病院かもしくは、迫ってくる地面や、車や、そんなところではありませんでしたか。あ、でもすぅーっと意識をなくしたのなら病院の線が濃厚ですね。...思い出しました?冷酷かもしれませんが、もう一度言います。
あなたは、死にました。ではあまり悲しませて、なにもできない状態で放置するのもなんなので、」
軽く息を吸って告げる
「さようなら。最後のほんの数分間、顔も知らないこんな僕が相手で申し訳ないです。では今度こそ。 」
ーさようならー
その瞬間、僕の目の前からそれが消え去る。なんということはない。ただ、送った。それだけだ。今回は比較的簡単なモノだった。ある種の事故によって残ってしまっただけだ。恐らくほっといても勝手にそのうち消えていただろう。ただ、だれも自分の声にきずかず、なにがなんだかわからない。そんな状態が続くのは辛いだろう。そんな押し付けで送った。
たまに、自分はなんの金にもならない、感謝もされないこんなことを、ともするとボランティア以上に利益を求めず、自己満足すらほとんどないこんなことをしてるのかと思う。まぁこれが所謂、僕の性というやつなのだろう。
そんなことを思いながら青年はそこから立ち去っていった。