基本的な舞台背景&簡単な用語解説(64話時点)
この世界には南にエークス、北にゲルバニアンという超国家連合がある。
この二大勢力は、元々、とある鉱産資源を巡って対立していた勢力同士。そして、12年前に国境付近で勃発した〈レオーツ戦役〉を機に、全面的な戦争状態へと突入してしまった。
現在、直線距離にしておよそ5000kmという、国境地帯を巡る一大戦線が構築されている。また、戦線の中でも特に重要な20近くの戦域、〈国境戦線〉が点在しており、未だに戦争は終わる気配を見せていない。
そしてエークスは反攻の為に、陸上艦隊を北上させている。艦隊は幾つかに分かれつつ、各地で要所を攻略しているという戦況。その中でも艦隊旗艦〈グランパスA-1〉を擁する戦力は、北方進出を行う上での障害であった〈デルタ14〉基地を無力化し、本格的な合流を目指して動き出した。
他方、試験先行運用部隊は〈グランパスA-1〉の艦隊戦力から離脱。敵地たる国境地帯への進攻を命じられ、〈ホエール〉単艦でオーディン旧研究所へと向かう事になった。特殊情報局との合同任務を進める形で旧研究所に辿り着いたものの、彼の地でフェンリルの襲撃を受けて実働部隊の半分が壊滅。更にゲルバニアン軍の襲撃を受けて、旧研究所付近から撤退せざるを得なくなった。増援戦力が到着する見通しも無いままに、ホエールは敵地を彷徨う事となる。
・レオーツ戦役
この戦争の発端となった一連の戦闘のこと。かつて国境付近に存在していたエークス領の都市〈レオーツ〉で始まった事から、レオーツ戦役と呼ばれている。軍は秘匿しているものの、レオーツに現れた謎の巨大人型兵器が引き起こした悲劇である事は確か。この黒い人型兵器を用いて破壊活動を行ったのは、テロリスト集団〈フェンリル〉だとされている。
なお、このレオーツ戦役を境にゲルバニアン軍は南下。エークスの領土を多数占領下に収めて、エークスから貴重な資源地帯を奪うことに成功している。
エークスにとっては奪われた領土、即ち〈旧領土地帯〉の中にレオーツも含まれている。12年経った今でも、奪還には成功していない。
・機動歩兵〈トール〉
11年前に、巨大複合企業G.K.companyから発表された、新たな兵器規格。全高20m程度、動力はMHD発電方式核融合炉、戦車をも駆逐し得る機動性、総じて高い装甲防御力が特徴。現在の陸軍における主力兵器。
実は12年前にも、レオーツでトールのような巨大人型兵器が稼働していたが、この事実は当事者以外には公表されていない。なおこの際に現れた黒いトールは、当時最新鋭機種だったY5戦車を悉く撃破しており、もはや時代錯誤の代物とも言える性能を発揮していた。
そしてトールは、MNCSと呼ばれるインターフェースを搭載しなければ成立しない人型兵器でもある。
第一世代型トール:ごく初期に開発された実験機群。既に退役済み。
第二世代型トール:現在、両陣営が配備している主力トール。
第三世代型トール:現在、4機だけしか配備されていない最新鋭世代機。
第四世代型トール:現状、フェンリル保有機に確認されている世代区分
・運動情報抽出システム〈MNCS〉
トールと同時にG.K.companyで実用化されたとされる、非接触式思考走査型ブレイン・マシン・インターフェース。つまり、パイロットの脳から運動情報を取り出し、トールという機械の動作へと反映させる為の情報仲介装置。全てのトールにはMNCSが搭載されており、MNCS無しにはトールはそもそも稼働できない。トールという兵器規格の根幹をなすシステム。
しかし、MNCSには、軍とG.K.companyが秘匿し続けて来た反動症状が存在する。適性が高ければ高いほど発症が早く、逆に適性が低ければリスクは著しく軽減される。軍が把握しているだけでも、意識の混濁、錯乱、幻聴、幻覚を伴う症状が発現するとされており、最も重篤な症状を呈する者は廃人と化す。そういった者はステージⅣに分類され。軍直轄の精神病院への入院措置が執行される。
・機兵師団
陸戦で圧倒的な戦闘力を発揮するトールを、戦力の中核として運用している師団。1300機近いトール部隊、更に多数の陸上艦艇からなる〈陸上艦隊〉を組織できるという点で極めて強力な打撃力を発揮する。エークス軍には4つ存在する。
・G.K.company
エークスに存在する巨大複合企業。本格的な兵器開発に参入したのは11年前に過ぎないが、その際に〈トール〉やその関連技術を持ち込んだことで、軍需産業に一大再編の流れをもたらした。また、トールを独占生産し続ける事で、エークス陸軍に対して深い癒着の根を張り巡らせている。
エークス軍の殆どは現状を維持しようとしているが、ドルテ=クローニン大佐だけはG.K.companyに反抗姿勢を見せている。その一環として設立されたのが、バルトやナオトの属する試験先行運用部隊。
・試験先行運用部隊
ドルテ=クローニン大佐が、G.K.companyの開発体制へ食い込むために設立した試験部隊。その性質上、G.K.companyで開発された最新鋭の機体が配備されている。中でも、4機しか存在しないとされる第三世代型トールは、全機がこの試験先行運用部隊に配備されている。母艦は改造輸送艦〈ホエール〉。
部隊のパイロットは4人となった。隊長はバルト=イワンド大尉、隊員はリーグ=ベイナー中尉、ルーカス=クレット少尉、そしてナオト=オウレン少尉。
当初は第二機兵師団隷下の部隊だったが、参謀本部会議において所属の変更が決定された為、現在では第四機兵師団の部隊扱いに。ただし、直後にコプレン中将が暗殺された事から、未だに部隊の指揮権はクローニン大佐が預かっている。
・改造輸送艦〈ホエール〉
試験先行運用部隊が母艦とする、大型の改造輸送艦。艦長はルデア=エドモンド中佐。第三世代型トール4機と、演習用トールを搭載している。
自衛用の砲塔や発煙弾発射装置が追加されているとはいえ、原型が輸送艦に過ぎない為、戦闘力は皆無に等しい。艦体前部と後部に、それぞれ大型の格納庫を持つ。艦体中央には充実した食堂設備が用意されている。
・可遷的構造結晶体〈VHIT〉
ケイ素系半導体素子の限界を超える為に開発された、多数の固体相を持つ人工結晶体。本来は半導体素子として開発された物質だが、後にバッテリーとしての利用法が見出された結果、準鉱物〈ミアダイト〉を巡る資源紛争の火種となった。
微細結晶の状態では、恒常的に電子の偏りが発生しており、ある種の焦電素子に近い特性を持つ。光―電子間の変換を行える素子としては、従来の加工精度では実現し得ない程に複雑な微細半導体素子として利用可能。故に、新世代の光子・電子併用型三次元集積回路は、VHIT素子の存在があったからこそ開発が進んだと言われている。
バッテリーとして利用するには、VHIT結晶を目視可能なサイズにまで成長させる必要がある。高いエネルギーを内包している事から、この状態のVHITは著しい反応性を持つ事で知られる。特に水と接触する事で容易に反応が始まる為、厳密な乾燥大気中以外では激しい爆発を引き起こす。
また、結晶の安定化に〈ミアダイト〉を用いる関係上、VHITバッテリーの利用を積極的に進めているのはゲルバニアンに限られる。一方、エークスもごく限定的な生産を行っており、両軍のトールにも補助的に搭載されている。
トールは、機動の度に相当量の電力を消費する兵器だが、その度に核融合炉自体の出力を上下させるのは非常に効率が悪い。そこでVHITバッテリーには剰余電力プールとしての機能が期待され、メインジェネレーターの出力系統に組み込まれている。しかし、VHITバッテリー特有の性質により、核融合炉破壊時のプラズマ流出現象"爆発"を深刻化させている可能性が度々指摘される。
・準鉱物〈ミアダイト〉
VHIT結晶を安定化させる為に必要な、結晶を作らない準鉱物の一種。地球外殻に起因するFe/Ni系鉱物の中から発見される事が多い。地殻表層に現れている地域は稀で、採掘可能地帯はエークス・ゲルバニアン国境地帯にある。
蜜酒を意味する「Mead」が名の由来であり、不純物の影響で透き通った蜂蜜色を呈している。また、常温常圧の大気下では急速に固化するが、一定以上の圧力下では流体相へ転移するという特異な性質を持つ。
・学術団体〈オーディン〉
かつてレオーツに最大拠点を置いていた、国際的な学術団体。レオーツ戦役を機に消滅した事から、現在は存在しない。エークス・ゲルバニアン問わずに出資者を募り、見返りとして研究成果を放出していたことで知られる。既に多くの先進技術が民間レベルにまで浸透しているが、学術団体オーディンそのものについては未だに謎が多い。放棄されて久しいものの、各地に構えていた研究支部が現存している。
国境地帯に放棄されていたはずの旧研究所近くには、ゲルバニアン軍が特設基地を建造していた。そこではオーディンの遺失技術に関する調査が行われていたものの、彼らを満足させるだけの情報が得られたとは言い難い。代わりにエークス軍特殊情報局が一定の情報を得たが、立ち会っていた当事者は全て、フェンリル工作員によって殺害されてしまった。
・テロリスト集団〈フェンリル〉
12年前のレオーツ戦役で初めて活動が確認されたとされる、詳細不明の武装組織。黒い人型兵器を用いてレオーツを襲撃したという未確定情報がある他、また別の黒い機体がゲルバニアン基地〈デルタ3〉にて発見されている。交戦した部隊によれば、いずれも現行の機体建造技術では考えられない戦闘力を見せたとの事。
エークス側ではテロリストとしての認定を受けているが、これまでに政治的目的を明らかにした事例は存在しない。故に詳細は不明とされているが、この12年間に亘ってエークス軍はフェンリルを警戒し続けていた。
・陸上戦艦〈グランパス〉級
エークス軍が艦隊の中核戦力として配備する、主力陸上戦艦。口径300mm以上とも言われる主砲を9門、前面防御を重点に置いた分厚い装甲を持ち、鯱の名に恥じない外観となっている。限定的ながら母艦機能を持つ為、艦内にトール部隊を収容する事が可能。小回りが利く事から、平野や山間地帯とを問わず幅広い運用を見せる。
グランパス級にはA、B、C、D型という仕様上の差異があり、中でもA型は最も艦体が大きい。グランパス級A型一番艦〈グランパスA-1〉、即ち〈グランパス・ハルデン〉には、シーグ=ハルデン中佐が座乗する事で知られる。
・参謀本部会議
文字通り参謀本部に属する高級将校たちの意思共有を図る会議、もしくは合議機関としての参謀本部そのものを表す名前。
特にエークス軍で定期的に催される会議には、師団長レベルの高級将官たちも招聘されるのが通例となっており、参謀本部会議の意思決定に干渉する事も多い。本来の指揮権を有する司令本部は、実質的に参謀本部会議の意思に追随する合議機関へと成り果てている。
会議で特に大きな発言権を持つのは、4人の師団長。
第一機兵師団のアスドック大将、
第二機兵師団のクローニン大佐、
第三機兵師団のドーズ中将、
第四機兵師団のシーグ大佐がそれにあたる。
(※コプレン中将は暗殺された為、第四機兵師団師団長の座はシーグ大佐に継承。なおシーグは師団長へ押し上げられた際に、中佐から大佐へとなし崩し的に昇格させられている)
・構想駆動炉
オーディン旧研究所にて、データバンクの深層に封じられていた名称。学術団体オーディンが取り組んだ研究の、まさしく根源と言えるものと表現されている。テトルの言葉を借りれば、「原因や方法に囚われず、望んだ結果を直接実現する装置」だとされるが、詳細は不明。
加えて、これを使用するには一定の条件が必要だと語られており、ステージⅣに達した者が扱えるという情報もある。初期型MNCSは思考深度に関する制限が緩かった為に、このステージⅣに達するほど重篤な患者を生み出してしまった。故にレビア=ザスフットは運用可能条件を満たす人物と目されており、テトルはその名を挙げるに至った。ただし、廃人では無いトレイクやトズエルも使用している事から、運用の実態は謎に包まれている。
ロズエルはバルトに対して、フェンリル保有機〈アインド〉〈フラグマ〉〈ディエスト〉には、構想駆動炉が搭載されている事実を仄めかした。
〈簡易組織図〉
・エークス陸軍
→参謀本部
→第一機兵師団
→師団長:ヘルト=アスドック大将
→第二機兵師団
→師団長:ドルテ=クローニン大佐
→第三機兵師団
→師団長:ドーズ=ヘンデル中将
→第四機兵師団
→師団長:シーグ=ハルデン大佐
→戦艦〈グランパスA-1〉艦長代理:タリス=リート中尉
→輸送艦〈ホエール〉艦長:ルデア=エドモンド中佐
→試験先行運用部隊隊長:バルト=イワンド大尉
〃 副長:リーグ=ベイナー中尉
〃 隊員:ルーカス=クレット少尉
〃 隊員:ナオト=オウレン少尉
→特殊情報局
→局長:テトル=エリック少佐
・ゲルバニアン軍
→統合総司令部
→軍務監査委員会
→タレー特設基地司令:カルサ=ベルボット少佐
→第五十二辺境機動警備隊隊長:オフド=トーカス少佐
・フェンリル
→トレイク
→ロズエル=デルーム
→レビア=ザスフット




