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夢日記

作者: ヨルノ ホシ

「先生。あの、201号室の本田貴之さんなのですが…。」

「あぁ、彼か。調子はどうだ?」

「相変わらず日記がどうとか…。」

「そうか。安定剤を少し増やして様子を見てみよう。」

「はい。」


精神病院にはたくさんの患者がやってくる。

大抵の患者さんはストレスから精神が不安定になり自分でコントロールできなくなってしまう。


今回私は本田さんという患者さんを担当することになった。

本田さんは朝起きる度に変なことをいう。

朝起きて必ずいうことが「日記はどこだ?」

彼の日記。警察から渡された緑の小さな手帳。書き込まれた不思議な一言コメントのような短文。

「猫を飼った。」

「マンモス発見!」

途中から少し怖くなっていた。

「母さんが誘拐された」

「妹が燃えた」

「彼女を殺した」

最後の文。

彼は彼女の首を絞めて彼女を殺害した。

警察はこの日記を頼りにして捜査、取り調べを行ったが、ただの精神病ということで日記はこっちに渡ってきた。

彼の精神が安定してきたか話せる状態になったか確認するために時々質問をする。

「どうして彼女さんを殺したのですか?」

でも彼はいつも。

「彼女を殺した夢を見ただけ。」

そう答える。なぜここにいるのか。なぜ彼女は見舞いに来ないのか。といつもぼそっと言うのが聞こえる。

やっぱりわかってないのか。


空き時間になんとなく本田さんの日記に目を通した。

たくさん書いてある。

彼女を殺した夢。か…。

夢の日記?

まさかね。

なんだか少しおかしく感じてしまって笑ってしまった。

そして朝、本田さんが日記を渡せと暴れだした。

「先生…。」

「渡して見ましょう。」

「本田さん日記ですよ。」

彼は勢いよく日記を掴みとり日記に書き込んでいく。

「ナースの格好をした泥棒から日記を取り返す」…。は?全く意味がわからなかった。

本田さんはやっぱり夢の記入をしているのか。なんだかすごく疲れてしまった。

明日は休み。友人とお昼でも食べに行こう。


つぎの日友人に本田さんのことを話してみた。

「それ!夢日記じゃない?」

「夢日記ー?なんだそりゃ。」

「夢日記はね夢を朝起きたらすぐ記録するやつだよ。詳しいことはわからないけど、危ないらしいよ。ネットとかに乗ってるから見てみな。」

「うん、そうするよ。ありがとう。」

友人との食事を終え、私は急いで家に帰りパソコンに向かった。

夢日記。すごく興味があった。

カチカチと文字を打ち込んでいく。

「ゆm│」

「夢日記」

たくさんの掲示板やら書き込みやらブログを見つけた。

とりあえず1番上をクリックすると、夢日記のやり方。危険性などが書き込まれていた。

夢日記のやり方。枕元にメモをできるものを用意して起きたらすぐにメモをする。

「すごく簡単ね。」

思わずつぶやいてしまった。

危険性。まず気が狂う。

「は?」

気が狂うってなに?

その1:夢の中で動けるようになる。

夢だとわかる。

その2:夢と現実の区別がつかなくなる。

夢があまりにもリアル過ぎてわからなくなってしまう。夢の中で五感が働く。

その3:悪夢を忘れられなくなる。

けして夢とは言えないほどリアルで忘れられなくなる。

まとめ。1ヶ月あたりで異変ができます。異変あがあったらすぐにやめましょう。話がかみ合わなくなったり、わけもなく暴れたりしたら特に危険です。日記を書くことに中毒にならないで。

と書いてあった。

本田さんはやはり日記をつけていたんだ。

それにあれは1ヶ月どころじゃない。

私は急いで病院に戻った。

「先生!!!」

本田さんの日記のことそれを取り上げなければならないことを説明した。

「そんなばかな冗談はやめてくれよ。」

笑われてしまった。

「でも…。」

「じゃあ一緒に様子を見に行こう。」

私たちは本田さんの部屋へ向かった。

「本田さん。」

ギロリとした目で睨まれる。

「でた。」

ぼそっと本田さんがつぶやいた。

「はい?」

「俺をここから出せよ!!!病院でゾンビに監禁!ふざけるな!!」

わけのわからないことを怒鳴り散らす本田さんに先生がゆっくりと近づいた。

「まぁまぁ、落ち着いて。お薬お注射しましょうか。」

本田さんの腕に先生が安定剤を打とうとしたとき、本田さんが手足をバタバタさせて暴れた。

「本田さん!落ち着いて!」

私が本田さんの手足を抑えようと近づいた。

バタッ。

足元に何かが落ちた。

足元に目をやる。そこには首に注射器が刺さって動かなくなった先生。

「あは、あははは、あはははははははは」

狂ったように笑う本田さん。

「やだ。やだ。やだ。」

今度は私がやられるばんだ。嫌だ。怖い。震えが止まらない。でも、なんとかしなきゃ。

「ほ、本田さん…。」

震える声で名前を呼んでみた。

目の前には窓の淵に足をかける本田さんがいた。

「俺はここから脱出するんだよー!あはははは」

「本田さんやめて!」

「これは夢だ俺は何でもできるんだよ。」

「違うの!夢じゃないの!!お願い!やめて!!!」

どんなに叫んでも彼は聞いてくれなかった。まるで空を羽ばたく天使のように窓から飛び降りた。

数秒後に「ぐしゃっ」となるのが聞こえた。それが本田さんの最後の夢だった。

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