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8 続く戦い

前回までのあらすじ


ゼノアを倒すべく、セイヴァーモードに変身したアデルと、超究極聖神帝に変身したレイジン。だが、ゼノアの真の力は、二人の最終形態すら凌駕していた。この世界を守るため、かつて敵対していた者達も復活する。それを見てこの世界を見限ったゼノアは、遂に全ての力を解き放った。

 激しい衝撃に襲われ、気を失っていた美由紀。


「美由紀さん!! 美由紀さん!! しっかりして下さい!!」


「!!」


 美由紀はソルフィの声で覚醒し、そして現状に気付いた。先程まで治まっていたはずの世界の歪みが再び起き、世界を破壊しようとしていたのだ。アデルとレイジンはゼノアを倒そうとしているが、歪みの出力が強すぎて、攻撃が届いていない。他の者達は全員がかりで、歪みの拡大を抑えようとしている。

 全力とは、全ての力を使うからこそ、全力と呼ばれている。何を馬鹿なことをと思うだろうが、全力とはそういうものなのだ。ゼノアがやっていることは、今まで記録し溜め込んできた力全てを、一気に解放するというもの。技と呼ぶにはあまりに稚拙で、馬鹿馬鹿しいとしか言えない。

 しかし、その馬鹿馬鹿しいことを、セイヴァーモードと超究極聖神帝を同時に相手にして、圧倒できるゼノアがやれば、どういうことになるか。全てを消し飛ばせる、まさしく最大最強最悪の必殺技になるのだ。


「どうだ!! 強いだろう!! 圧倒的だろう!! これが力だ!! 私が唯一欲してやまない、至高の力だ!! だがまだ足りぬ!! 世界にはもっともっと強大な力がたくさんある!! 私はそれら全てを手に入れたいのだ!!」


 力を解放し、歪みを強めながら、ゼノアはなおも力を求める理由を説く。強大な力に圧倒され、魅せられ、故に欲した。今は自分が圧倒する方である。しかし、ゼノアは満足していない。するはずがない。満たされたその瞬間から、力の成長は止まる。ゼノアは力を記録したい反面、自身も全てを凌駕する強大な存在になりたいのだ。そのために、これからも力を集め続ける。この世界を滅ぼした後も、ずっとずっとずっと。


「さぁ、これ以上の抵抗をやめて、お前達の力を私に差し出せ!!」


 さらに力を解放するゼノア。


「このままでは……もたない……」


「気合いを入れろゴーザ!! 今こそ我らの恩を、ミライ様にお返しする時!!」


「三将軍の意地を見せろ!!!」


「影斗!! 大丈夫!?」


「オレに構わずやってくれ!!」


 ミライを守るため、力を振り絞るヴァルハラ組。


「首領をお守りしろ!!」


「わかってますよ!!」


「新しい道を歩き始めたアプリシィを、てめぇなんぞに殺させるか!!」


「兄さん!!」


「我には守らねばならんものがある!! 首領と息子だ!!」


「父上!!」


 デザイア組も必死だ。


「どうしたシエル!! お前の力はそんなものではないはずだ!! 私がいなければこの世界を守れんか!!」


「守れます!! 守ってみせます!! 私は、兄様の妹だから!!」


 ブランドンはシエルを叱咤する。兄として、最後の務めを果たすために。


「何をしているカルロス!! もっと力を込めんか!!」


「これでいっぱいいっぱいなんだよ!! てめぇこそもっとしっかりしやがれこのボケ老人が!!」


「二人ともこんな時まで喧嘩しないで!!」


 デュオールとカルロスはこんな状況でも仲が悪い。シャロンは歪みの拡大を防ぐだけでなく、二人の仲裁もしなければならず、苦労人だ。


「エリック! どうすればこの状況を打開できるか、わかっているね!?」


「……ええ。少々癪ですが」


 ナイアはビャクオウに問いかけ、二人は融合する。ビャクオウ ケイオスゴッドモードだ。ゼノアの力が強すぎて今までは近付けなかったが、これならアデルに近付ける。


「無茶だ!! 戻れ!!」


「心配いりませんよ!!」


 自分ですら近付けない力の波動の源に向かって飛んでいくビャクオウを、カゲツは止めようとするが、ビャクオウは聞かない。


「……ミライ殿。わかっておられるのだろう? 彼らが何をしようとしているのか」


「……ええ」


 闘弍は、ビャクオウが何をするつもりでいるのか、気付いているらしい。それはミライも同じだった。この二人が生前目撃している、よく知った方法。ゼノアを倒せるとするならば、もうこれしかあり得ない。


「ここは私と、残った者達に任せて欲しい」


「!? 私にも行けと!? 無理です!!」


「あなたなら彼は間違いなく受け入れる。彼自身も望んでいることだ」


 ミライは躊躇ったが、闘弍は行くように言う。何にしても、迷っている時間はない。


「……お願いします!!」


 ミライはこの場を闘弍達に任せ、アデルの元へ向かった。


「ゲイル!! エルピスシステムの起動を!!」


 アデルの元にたどり着いたビャクオウは、エルピスシステムの起動を依頼する。

 エルピスシステムで融合できる人数の限界は、設定されていない。ゲイルが心から信頼している者ならば、何人でも融合し、パワーアップできる。いくら多人数がかりとはいえ、バラバラに立ち向かうのと融合して立ち向かうのとでは全く違う。


「わかった!!」


 エリックもナイアもゲイルが信頼しているから条件は満たしているし、アデルとビャクオウの力を合わせれば、とてつもない存在になれるはずだ。


「ゲイル!! 私も……私もお願いします!!」


「!!」


 追い付いたミライが、同じように融合を申し出てきた。


「……はい!!」


 彼女もまた、融合条件を満たしている。アデルは了承した。


「……輪路さん……!!」


 今のままでは勝てない。ゼノアに勝つためには、さらなるパワーアップが必要だ。そう思った美由紀は、指輪に霊力を込める。レイジンに直接近付かなくても、自分の指輪に霊力を込めれば、連動してレイジンの指輪にも届く。

 しかし、美由紀の手を隼人が掴み、霊力注入を中断させた。


「悪いが、こっちの方に霊力を込めてくれ」


 隼人が霊力を込めるよう言ったのは、隼人の討魔剣だ。


「どうするんですか!?」


「とにかく霊力を込めてくれ。後は僕がやる」


 何か作戦があるらしい。優子も霊力を込める。


「隼人さん。私の霊力も」


「助かるよ。霊力があればあるほど、彼を助けられる」


「それなら、俺の霊力も使ってくれ!!」


「私の霊力も!!」


 ヒエン、ソルフィと、次々に霊力を込める。


「僕のも!!」


「私も!!」


 学生組も次々と霊力を渡そうとするが、隼人は止める。


「これだけあれば大丈夫だ。君達は、防御の方に回ってくれ」


「隼人さん。何をするつもりなんですか?」


 美由紀は隼人の作戦が気になり、詳細を尋ねる。


「この剣を輪路に使ってもらう。本当は僕も一緒に戦いたいんだが、あの時のような力はもうない。オウザもリョウキも消えてしまった」


 今も高い霊力を持つということは変わらない。だが、二年前に比べれば大幅に弱体化しており、邪神帝もない。かといって隼人の全霊力を輪路に譲渡しても、ここにいる全員が協力しても、レイジンをゼノアを倒せるほどに強化することは不可能だ。しかし、自分達の力をプラスすることが目的ではない。目的は、きっかけを与えることだ。輪路はとてつもない成長力を持っている。自分達の霊力を与えれば、レイジンをさらに成長させるきっかけになるはずだ。強化ではなく、成長。それが、隼人の作戦だった。本当は隼人も一緒に戦いたいが、彼の力はゼノアにもレイジンにも遠く及ばない。だからこそ、自分の力の結晶であるこの討魔剣に、霊力を込めてレイジンに渡すのだ。


「ううっ!」


「くっ!」


「美由紀さん! 翔くん!」


「……よし。もう充分だ」


 美由紀が苦しみ、ヒエンの変身が解けたところで、隼人が霊力の充填をやめる。全員が手を離し、


「輪路ぃぃぃぃぃ!!! 受け取れぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」


 隼人は討魔剣を投げつけた。


「!!」


 高速で回転する討魔剣を、レイジンは掴み取る。これをどう使えばいいか。レイジンは、以前ヒエンが優子との決戦でやったことを思い出す。シルバーレオの柄と、討魔剣の柄を連結させた。


「「「『『『エルピスシステム、起動!!! モード・グランドアークセイヴァー!!!!』』』」」」


 エルピスシステムを起動し、唱えるアデルとビャクオウ。


「神帝、至天聖装!!!」


 隼人と美由紀達から霊力を受け取り、さらなる力に目覚めたレイジンが、心の中から浮かび上がってきた呪文を唱える。



 黄金に輝く八枚の翼。右手にはプライドソウル。左手にはホワイトスイーパーを持つ、全身黄金のアデル。これこそ、アデルの新しい力と姿。偉大なる真の救世主、アデル グランドアークセイヴァーモード!!




 シルバーレオは西洋剣に変化し、隼人の討魔剣、いや、スピリットスパーダと連結して両刃剣となった。レイジンも、両手両足にオウザのような装飾が追加される。究極の先の超究極。超究極のさらに先にある、至高の現人神。至天聖神帝レイジン!!


「こ、これは……!!」


 突如として二人に発現した新たな力を前に、ゼノアは目を見開く。先ほどまでとは、比較にならないほど強大な力だ。


「……はははは!! やればできるではないか!! いいぞ、いいぞ、いいぞ!! その力、もっと私に見せてくれ!!!」


 強大な力の出現に自分を抑えられない。ゼノアは自身が集めた無限強化、その他諸々の全てを使い、力を解放していく。


「無駄だ!! 既に勝敗は決した!!」


『あなたが馬鹿にした絆がどんな力をもたらすか、今見せてあげる!!』


 アデルはプライドソウルとホワイトスイーパーを、合わせるようにして両手で持った。すると、二つのガンブレードが一つに融合し、巨大なガンブレードに変わる。同時にアデルと、アデルに融合している者達全員が、力を合わせ、高めていく。

 融合したガンブレード、エターナルソウルの刀身から、黄金の刃が伸びる。


「『『『『『エンドオブ……!!!』』』』』」


 名前はこれまでと変わらない。だが、その威力はセイヴァーモードなど足元にも及ばないほどに強化された、アデルの代名詞とも言える技、エンドオブソウル。


「『『『『『ソウルッ!!!!』』』』』」


 アデルはそれを、全力でゼノアに叩きつけた。


「何!?」


 ゼノアは驚愕する。ダメージは受けていない。しかし、ゼノアが解放し続けている力が全て吹き飛ばされ、歪みも修正された。フォースリベレイションが解除されたのだ。


「レイジン、ぶった斬る!!!」


 まだ終わらない。今度はレイジンが新たな武器、デュアルレオの両刃に霊力を込める。


「レイジン……!!!」


 ありったけの霊力を込めたレイジンは、


「シャイニング!!!」


 まず片方の刃をゼノアに振り下ろし、


「クロス!!!」


 持ち変えて、


「ブレイクゥゥゥゥゥゥゥ!!!!」


 もう片方の刃で真横に斬りつけた。


「ぐおおおおおおおおああああああああアアアアア!!!!」


 レイジンシャイニングクロスブレイク。最終必殺剣を受けたゼノアは、十字状の白銀の光に呑まれる。

 だが、まだ終わらない。


「「『『『『『はああああああああああ!!!!』』』』』」」


 アデルとレイジンは、拳にさらなる力を込めて、ゼノアの胸の中心を殴りつけた。二人の拳から放たれる光が、金と銀のコントラストが、ゼノアの胸を貫く。


「……く、くく、くははははは……はっはっはっはっはっ!!」


 ゼノアは笑っている。だが、アデルもレイジンも、追撃を掛けようとはしなかった。わかっていたからだ。ゼノアはもう、助からない。ゼノアの身体が、足から消えていっている。


「素晴らしい!! なんと強く美しい力だ!! ああ、本当に素晴らしいぞ!!」


 人間の姿に戻ったゼノアが狂喜し、右手を二人に伸ばす。しかし、その右手はすぐに崩れ、消え去った。


「この力を、私のものにできないのか……残念だ……」


 名残惜しそうに二人を見つめるゼノア。自身が滅びつつあるというのに、目の前の力に夢中で、そのことには全く頓着していない。


「ならば……記録ではなく……記憶に……焼き付けると……しよう……」


 目を離すことだけは決してしない。ゼノアは自分を打ち倒せるほど強大な力を目の当たりにし、ここまで強くなったアデルとレイジンを羨むような目をしながら、安らかな顔をして、肉体も魂も残さず完全に消滅した。


「……満足そうな顔しやがって。最後まで嫌な奴だったぜ」


 レイジンとしては、もっと悔しがらせてやりたかったのだが、ゼノアの最期は真逆の反応だった。


「強い力が好きなんだ。自分より強大な力に滅ぼされるのなら、本望だったんだろう」


 アデルも、ゼノアに自分がやったことを後悔させてやりたかった。なのにゼノアは、一人で勝手に満足して死んだのだ。不愉快としか言いようがない。レイジンの言う通り、どこまでも嫌な奴だった。


『とはいえ、これでゼノアは完全に滅びました』


『ああ。魂の消滅を確認したからね。もう二度と蘇ることはないだろう』


 ビャクオウとナイアは、ゼノアの完全消滅を確認している。いくらゼノアとはいえ、魂を消されては復活などできない。


『終わったのですね。これで』


『はい。私達が、終わらせたんです』


 ゼノアは滅び、ミライはようやく安堵する。アンジェが言った通り、彼女達が、彼らが終わらせたのだ。遥か昔から存在する、歪められたこの世界の運命を。











 仲間達の歓声に迎えられて戻ったアデルとレイジンは、変身を解く。しかし、あまり喜んでもいられなかった。蘇った死者達との、別れだ。ゼノアが滅んだ以上、彼らは冥界に戻らねばならない。


「せっかく父さんと母さんにまた会えたのに、もう行っちゃうの?」


 光輝は残念そうに、隼人と優子に尋ねた。


「すまない。僕達はもう、死んでいるんだ。本来、目覚めてはならない者。だから、すぐ戻って眠りにつかなければならない」


「でも、元気そうなあなたの姿を見て安心したわ。綺麗なお嫁さんもいるし」


 優子はさだめを見る。さだめは緊張して、肩に力を入れた。


「さだめちゃん。光輝をお願いね」


「はっ、はいっ!」


 緊張のあまり、さだめの声は裏返ってしまっている。


「なぁ隼人。お前の剣……」


 戦いが終わった後、スピリットスパーダは輪路の魂の中に入ってしまった。


「君にあげるよ。僕にはもう必要ない物だし、君が使った方がいい」


「じゃあ私も、あなたに私の剣をあげるわ」


 優子もまた、自分の魂から生み出した剣、ライフカリバーを翔に渡す。ライフカリバーもスピリットスパーダと同じように、翔の魂の中に消えた。きっとこの剣も、翔の力になってくれる。


「必ず役立てる。ありがとう」


「ありがとうございます!」


 翔は優子に礼を言った。


「慌ただしい兄ちゃんでごめんな。けど、またお前と一緒に戦えてよかったよ」


「俺もだ。兄さんが戻ってきてくれて、本当に嬉しかった」


「アーサー。蘇ってなお、我は汝に父親らしいことをしてやれなかったが……」


「充分です。あなたが俺の父であると、忘れたことはありません。そしてこれからも、あなたは俺の父親です」


 ウォントとアプリシィも、別れの挨拶を済ませる。


「兄様」


「言葉は不用だシエル。お前がこの世界を守るという意思を持っている。それを確認できただけでも、蘇った甲斐はあった」


「……はい! 私は討魔協会の会長です!」


 兄から認めてもらえた。それだけで、シエルは嬉しかった。


「輪路。もう美由紀から離れるな」


「ああ。今回のことで身に染みてわかったよ。離れたところで、結局美由紀を危険に巻き込んじまうってな。だったら、そばにいる。そばにいて、俺が美由紀を守る」


「輪路さん……」


「……それでいい」


「本当に輪路ちゃんてば、回りくどい子なんだから……」


 もう二度と美由紀から離れない。そう誓いを立てる輪路。それを聞いた正影は、満足そうだった。佐久真はやっと美由紀が幸せになれると思い、その光景を見ていた。


「もう俺達がお前達に言うことは何もねぇよ」


「どんな道を選ぶか。それはもう、わかっているでしょ?」


「「「はい!!」」」


「三郎。これからも輪路が苦労をかけると思うが……」


「わかってる。元気でな、戦友」


「ああ」


 死んでからも長らく戦い続けていた光弘と由姫。その二人が、ようやく眠りにつく時が来た。二人は自分の娘達と、無二の戦友に現世を任せる。


「では、行きましょうか」


「いや、そなたは残れ」


「えっ?」


 冥界に帰ろうとするミライを、闘弍が止める。


「気付かぬか? そなたはもう、ただの霊体ではない。今、そなたは神霊となっている」


 ただの霊体でしかなかったミライ。しかし、セイヴァーモードと融合した影響で、ミライは神になっていたのだ。神霊になった者は、例外的に現世への残留が許される。


「ミライさんが、神に!?」


「でも、ミライさんがそうなったってことは……」


「そういえば、セイヴァーモードを使ったら……!!」


「ゲイル! アンジェ!」


 狩谷も空子も、メイリンと室岡も聞いている。あと一回セイヴァーモードを使えば、ゲイルとアンジェは旧神になってしまうと。つまり今の二人は……


「……いいんだ。いつかこうなると覚悟していたことだからな」


「正直私達も実感ないし」


 だが、予想できていたことなので、二人も驚いていない。


「思ったより早く、こうなりましたね」


「……すまないエリック」


「謝る必要はありませんよ。興味がありましたから」


 エリックもケイオスゴッドモードを使った影響で、旧神になっている。ナイアは巻き込んだことを詫びたが、エリックもまた、ゲイル達と同じ気持ちだった。


「彼らはこれからも、旧神としてこの宇宙のために戦い続けなければならない。人手は多い方がいいだろう」


「……はい」


 闘弍の言葉に、ミライは頷く。


「ゲイル、アンジェ。それにネリー。手間がかかると思いますが、よろしくお願いします」


「はい!」


「こちらこそ!」


「よろしく」


 こうしてミライだけは残ることになった。


「では、我々は行くとしよう」


「「「「は」」」」


 デザイア組四人は、頭を下げる。それを、皇魔とレスティーが呼び止めた。


「すまなかったな。お前達から力を借りることになってしまった」


「ありがとうね。おかげで助かったわ」


「礼には及ばん。私自身のけじめのためにやっただけのこと」


「それに、もうわしらが蘇ることはない」


「ゼノアほど強大な存在など、滅多に現れないでしょうからね」


 コレクとメイカーの言う通りだ。今後、彼らの力を借りねばならないことは起きないだろう。


「ミライ様! どうか我々の分も戦って下され!」


「俺達を部下にして下さって、本当にありがとうございました」


「お元気で。我らの誇り高き盟主よ」


「はい。ありがとう、私の将軍達」


 ミライに別れの挨拶をする、マヴァル達三将軍。


「ミライ様、さようなら! 影斗。あんた私に会いたいからって、死に急ぐんじゃないわよ?」


「誰がてめーなんぞに会いたいなんて思うかよ! バーカ!」


 フィスは影斗をからかい、影斗も嬉しそうに応える。


「私達も行きましょう」


「うむ。カルロス、お前隼人様の言い付けは覚えているな?」


「ちゃんと地獄で刑を受けろ、だろ? わかってるよ……」


「それでいい」


 死怨衆も去っていく。


「じゃあね、光輝。それから、輪路も」


「いつか、私達が生まれ変わったら、また会いましょう」


 最後に隼人と優子が結び、生き返った死者達は全員冥界へと戻った。


「……行っちゃった」


「あの人達とは、もっと違う出会い方をしたかったですね……」


「きっと、友達になれたはずなのに……」


 鈴峯姉妹と七瀬は、残念そうに言う。ゼノアに運命を歪められ、本来なら戦わずに済んだはずの者達。


「でも、もうあの人達は、苦しまなくて済む」


「ようやくってところかね」


「さすがにまだ死人をどうにかしようなんてやつはいないでしょ」


 だが、彼らの宿命は終わらせた。もう、苦しむことはないのだ。賢太郎と巫女二人は、安堵した。


「我々も帰りますか」


「ああ。あまり、長居するわけにもいくまい」


 ヴォルヴァドスに言われ、クタニドも旧神達に帰るよう命令する。


「ありがとう。クタニド」


「新しい旧神を迎えるのは、もう少ししてからにしましょう。我々が迎えに来るまで、いましばらくお過ごし下さいませ」


「うん。待ってる」


 本来なら、ゲイル達も行かなければならない。だがクタニド達は、また力を使いきってしまったので、回復させなければならない。力が戻れば迎えに来る。ネリーにそう告げて、旧神達も帰っていった。


「……これで、本当に終わりか」


「終わりましたね。また、我々の忙しい日々が帰ってきますよ」


 ダニエルとシルヴィーは笑い合った。帰ってくる。帰ってくるのだ。いつもの日常が。守り抜いたのだ。愛しいこの世界を。




 ヘブンズエデン。


「やれやれ、ようやく終わったか」


 ゼノアのエネルギー反応が消えたのを確認したエドガーは、エネルギー炉の供給量を下げる。

 エドガーの悲願はやっと達成された。この日のために、ヘブンズエデンを創立したのだ。


「だが、もうヘブンズエデンは私一人のものではない」


 今や世界中がヘブンズエデンを必要としている。閉鎖することはできそうにない。目的を達成した今、エドガーは次は世界の役に立つ研究をすることにした。


「次の研究を始めようか」











 その後の顛末を、少し語ろう。

 光輝とさだめは、家に帰った。それから二ヶ月後にさだめが妊娠し、光輝は喜びながらさだめをサポートしている。アプリシィはまた旅に出てしまったが、二人との仲は以前よりも近くなり、手紙ではなく、ひと月に一回は遊びに来ているようだ。

 皇魔とレスティーは、会社に戻った。以前よりもいい会社にするため、エドガーと契約を結び、新型エネルギー炉の開発に着手している。やる気満々なエドガーに、アーサーは引きずり回されっぱなしだ。

 狩谷と空子は、孤児院に帰った。しばらく留守を預かっていたシュリュズベリィに謝ったが、さほど苦労はしなかったらしい。

 影斗は、また姿を消した。

 学生組も、それぞれの進路に進んだ。賢太郎の中のナイアの欠片は、結局これからも賢太郎の中にいることになり、七瀬は相変わらず茉莉に甘え、巫女達もより一層修行に励んでいる。



 そして……











 ここは、かつてアザトースが幽閉されていた異空間の宮殿。今は改造され、旧神達の拠点となっている。


「わあ! こんな遠い所まで行かなきゃいけないの!?」


「しばらく地球には戻れそうにないな……」


 クタニドから渡された資料を見て、アンジェとゲイルは驚いていた。


「この言語は、こう翻訳すればいいですね」


「そうそう」


 ナイアはエリックに、仕事のし方を教えている。新しく旧神になった者達は、連日宇宙中のあちこちで起こる事件の対応に追われていた。もうすぐ地球も宇宙に進出できるようになるので、そうしたら外交問題等も発生する。


「クタニドさん達はこんな仕事をいつもやっていたのですね……」


「今は溜まっていた仕事をやっているだけだ。こなしていけば、じきに楽になる」


 ミライは仕事の量に驚いていたが、クタニド達は力の回復のために動けなかったので、そのせいで溜まっていた仕事をやっているだけだという。


「忙しいけど、頑張ろう」


 ネリーが皆を励ます。


「……そうだな」


「顔をしかめてたって進まないし、やっちゃおう!」


 娘に言われては仕方ない。ここは一つ、親の威厳を見せるべきだ。


「ここはこう……」


「うんうん」


 エリックとナイアは、ネリーの声が聞こえないほど集中していた。




「おいシエル!! こりゃ一体どういうことだ!?」


 輪路は会長室で、シエルから渡された資料を読んで激怒した。内容は、任務についてだ。任務ならいくらでも行く。だが、その件数が十件ともなれば、話は別だ。


「今協会では人手が足りないと言いましたよね? 人員が補充できるまで、あなたに代わりの仕事をやって頂くと言いましたよね?」


「だからってこれは横暴だろ!! 十件ってことは、他のやつの十倍の仕事量ってことじゃねぇか!! しかも全部俺一人で!!」


 ゼノアとの戦いから一年が経過した。しかし、ゼノアの使い魔が協会の人員に与えた大打撃の立て直しが、まだ終わっていない。今は若い人材を次々に育成しなければならず、充分な実力になるまでは誰かが働かなければならない。今一番の適任は、最強の討魔士であり、永遠の存在となった輪路である。輪路も旧神になったゲイル達と同様、超究極聖神帝を使った反動で現人神になったのだ。


「申し訳ないが、我々も手一杯なのだ」


「こんなにたくさんの仕事を押し付けるのは、私達としても心苦しいのですが……」


 本当なら、上の立場にあるダニエルやシルヴィーがやらなければならないことだが、彼らも彼らで忙しい。


「……またしばらく美由紀に会えなくなるだろうが……」


「出発まではまだ少し時間があります。偉そうなことを言えた身ではありませんが、挨拶をしてきては?」


「……そうする」


 輪路は会長室から出ていった。彼も現状は理解しているので、なんだかんだで引き受けてくれるのだ。


「廻藤」


「翔。ソルフィ」


 途中で、並んで歩いていた翔とソルフィに会った。


「今から任務か?」


「またどっさり押し付けられた。しばらく帰れないから美由紀に会ってくる」


「すまないな……」


「ごめんなさい。私達の力が足りないばかりに」


「いいよ。お前らには世話になったしな。時間ないからもう行くぜ」


 最低限の挨拶だけを済ませて、輪路はヒーリングタイムに向かう。


「……文句は多いが、あいつもよく引き受けてくれている」


「うん。やっぱり廻藤さんはすごいね」


 ゼノアとの戦いは次元戦争と呼ばれ、最大の功労者の一人である輪路は、英雄として全ての討魔士達から尊敬されている。


「私達も頑張らなくちゃ!」


「ああ」


 ゼノアが遺した爪痕は、決して浅くない。だが、癒せないはずはない。そのためにも、ゼノアに勝利した者達が、頑張らなければならないのだ。




「「「いらっしゃいませ!」」」


 ヒーリングタイム。いつものように接客していた麗奈、瑠璃、命斗。だが、入ってきたのが輪路だと知って、対応を変える。


「輪路兄様!!」


「おかえりなさい!!」


「おう。だが、すぐまた出なきゃならねぇ」


「最近仕事が忙しそうですね……」


「まともな戦力になるやつが、実質俺一人しかいないからな」


 三人娘に事情を説明してから、輪路は佐久真に言う。


「マスター。ちょっと美由紀を借りてもいいか? そこまで時間は取らせねぇから」


「いいわよ。ゆっくりしていきなさい」


「悪いな。美由紀、ちょっと奥まで来てくれ」


「は、はい……」


 輪路は美由紀を連れて、店の奥に入る。そのまま、二回の輪路の部屋に入った。


「すまねぇな。もうお前から離れねぇって決めたのに、俺はお前から離れてばっかりだ」


「いえ。輪路さん有能ですから、仕方ないと思います。そういう人って重宝されますし」


「俺が有能? はっ。お世辞でもお前に言ってもらえると嬉しいな」


「お世辞なんかじゃありません!!」


 美由紀が突然声を荒らげ、輪路はびっくりした。


「……輪路さんは最高です。誰よりも強くて、誰よりも優しい。それから誰よりも、私のことを好きでいてくれる。ずっとずっと、子供の頃から私を想い続けてくれた。だから私も、あなたが好きです」


「……美由紀」


「……輪路さん」


 二人はキスをした。たっぷり舌を絡ませ合い、互いに愛し合う。それから二人は、同時に口を離した。


「……またしばらくお前に会えなくなる。でも、信じてくれ。俺は必ず帰ってくる」


「信じてます。この宇宙の、誰よりも」


 愛している。信じている。だから寂しくない。これは仮の別れだ。永遠の別れではない。またすぐに会える。それがわかっているからこそ、美由紀はしばしの別れを許した。輪路はそんな彼女に微笑むと、協会に転移した。

 輪路が去って、窓を叩く音が聞こえた。美由紀が見てみると、三郎がいる。窓を開けて、三郎を迎え入れた。


「見てたでしょ」


「ああ。やっぱお前ら、お似合いだわ」


 二人のキスシーンをバッチリ見ていた三郎。だから空気を読んで、輪路が出ていくまで待っていたのだ。


「二人の時間があんまり作れなくてつらいだろうが、もうしばらく待ちな。協会でもあいつには及ばねぇが、強いやつがだんだん育ってるから、いつかあいつの力は必要なくなる。そうなったら、ハネムーンにでも出掛けろよ」


「もう三郎ちゃんたら!」


 美由紀は顔を赤くした。だが、三郎からあいつには及ばないと聞いた時、少し嬉しかった。自分が好きな人が誰よりも強いと、周りが認めているのだから、嬉しいに決まっている。

 それに、輪路と約束したのだ。全てが終わって、輪路がこの世界に必要なくなったら、輪路の力で現人神にしてもらうと。輪路は嫌がったが、美由紀が無理矢理約束させた。そして二人で神になったら、迷える魂が生きる人々に危害を加えないよう、生と死の導き手になるつもりだ。


(待ってますよ。二人で永遠を生きられる、その時を)


 美由紀は今からその時が来るのが楽しみだった。




 二つの物語を紡いだ最強の勇者達は、大いなる脅威からこの世界を守り抜いた。

 彼らの戦いはこれからも続いていく。なぜならこの世界が、彼ら自身が、それを望んでいるから。





どうも!お久しぶりです!


ゲイルと輪路の物語は、これで本当に終わりです。いや~、ここまで長かった!たくさんの方が応援して下さったおかげで、このシリーズも無事完結を迎えることができたというわけです。本当はオールスターなんで、翠や御風を始めとする短編集のキャラ達も出そうかな~、って思ったんですが、既にキャラを扱いきれていないのにこれ以上キャラを増やすと、本当に収拾がつかなくなるので断念しました。


この後、ゼノアやさらなる超越形態について記述した設定を投稿して、この作品は完結となります。重ね重ね、皆さんありがとうございました!!

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