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第二十九章。はじめての気持ちに気づいた乙女は夢の世界へと旅をする。

今回は優佳の視点から書いている珍しい話です。宇都宮にいる間に優佳に何があったのか、読めば盛岡に着いてからの優佳の行動の意味がわかるはずです。

 千春さんと宇都宮で別れてから1時間半ほどが経過した頃、私はようやく親戚の家にたどり着くことが出来た。家出中の身である私にとっては、母の姉の家に足を踏み入れる勇気がなかなかでなかった。インターホンを押そうとしてやめる、ということを何度か繰り返していると、後ろから誰かに声をかけられた。

「あれー?。優佳じゃない、どうしたのこんなところで。あ、お母さんから聞いたよ、家出したんだって?」

振り返るとそこに立っていたのは私がまさに会いに来た人物、冴子おばさんであった。

「あ、えっと、こんにちは」

しどろもどろになりながらも挨拶をすると、おばさんは家の中へ招き入れてくれた。

「ちょっと前にアンタのお母さんが、アンタが家出したって半分ヒステリー起こしながら連絡してきたよ。一体どうしたのさ、まさか私の家に来るためじゃないよね」

 冴子おばさんは冷たい麦茶を用意しながら訪ねてくる。どう説明しようか悩んだけど、やっぱり素直に話すのが一番だと思ってすべてを話すことにした。喧嘩の事、家出の事、広島のこと。おばさんはその間黙って私の話を聞いていた。

「そういうことなのね。アンタの気持ち、わかるよ。お父さんに会うにはこれしか無かったんだよね。あたしは怒らないから安心して」

優しくそう言われ、涙がポロポロと出てきた。怒られると思っていた。怖くてずっと誰にも言えなかった。それがここで今許してもらえたんだ。嬉しくて、ホッとして。流れる涙を止めることができなかった。

「ほらほら、泣かないの。それにしてもよくここまで来れたね。お金あんまりもってなかったでしょ」

冴子おばさんは心配そうに私の涙を拭いてくれた。そうだ、千春さんたちの事も話さなきゃいけない。

「広島に着く前に、お金がなくなっちゃって。そしたら親切な二人が助けてくれたんです」

そして千春さんと何があったか、すべて話した。

「親切な人に出会えてよかったね。それにしても。へー、やるじゃん、優佳。恋の力は偉大ってやつですな」

冴子おばさんは私の脇腹を指でつつきながら茶化してくる。恋?。恋ってなに?。そんなわけあるはず…。

「こ、こ、恋なんかじゃ、ないですよ!。ただ、千春さんと一緒にいると、楽しいというか、安心するというか、もっと一緒に居たいというか、この気持ちを、時間を、ずっと共有していたいというか…」

また涙が溢れそうになる。顔は真っ赤になり、火が出そうだった。

「それを恋っていうんだよ、おちびちゃん。私も旦那と出会った時、そんな感じだったなぁ。あーあ。若いっていいなあ」

これが、恋なの?。胸が張り裂けるほど思いつめて、千春さんをずっと見つめていたくて。これが恋なの?。

「ちがっ、ただ、千春さんには感謝していて…」

冴子おばさんはワシワシと頭を撫でた。千春さんのように。

「アンタはまだ恋をしたことが無かったから、どんなものかわからなかっただけだよ。お姉さんが教えてあげよう。それはれっきとした恋という感情なのだよ。初恋乙女くん」

恋、だったんだ。私は恋をしていたんだ。千春さんに、恋を…。

「どうしよう…。これから千春さんと、どう接しよう」

不安で胸が張り裂けそうだった。私が千春さんに恋をしているとわかってしまった以上、今までどおり接することはできない。だって今こうやって千春さんの顔を思い出すだけで恥ずかしくなって倒れそうなのに、実際にあったらどうなるかわからないわ。

「そんなの、悩むことじゃないぞ。好きってわかった以上、もっともっと彼にアピールしなきゃ。彼にも自分を好きになって欲しいでしょ?。だったらもっと仲良く慣れるようにアピールしないとね」

アピール、そんなものが私にできるのだろうか。

「しかしまあ、引っ込み思案でうちの息子とは全然遊ばなかったアンタが恋をするなんて、その千春ってのはよっぽどいい男なんだろうね」

ニッコリと冴子おばさんは微笑んでくれた。

「はい!」

千春さんに、もっと好きになってもらいたい。私の気持ちは大きくなるばかりだった。


 「お母さんには上手く話しておいてあげる。あと、お金必要でしょ?もっていきな」

冴子おばさんは箪笥から封筒を出すと私に手渡した。

「あんまり大金あげるとよくないから、アンタが自分で返せるくらいの金額ね。いつか返してくれればいいよ」

封筒の中には四万円ほどが入っていた。

「ここから新幹線で盛岡まで多分一万三千円くらいだから、残りの二万と数千円で泊まりとか食事とかどうにかするんだよ」

こんなに大金を受け取っていいのか、わからない。家に帰れば貯金があるから返せるけど、どうしよう。

「こんなにいっぱい、いいんですか?」

不安になって聞いてみると、冴子おばさんは笑っていた。

「いいのいいの。どうせ私のへそくりなんだから。好きに使っていいのよ」

冴子おばさんは本当に優しかった。お金の事も、私の、気持ちのことも。

「ありがとうございます。必ず、必ず返しますね」

私は深々と頭を下げて冴子おばさんに感謝した。


「お昼まだでしょ。食べていきなよ」

 冴子おばさんはそう言って台所で何かを作り始めた。正直、お腹が空いていたからとてもうれしい。

「ありがとうございます」

大きめの声でお礼を言うと、

「あはは、美味しくないかもしれないから、お礼はいいって」

そんな風に笑いながら冴子おばさんは言ってくれた。

 しばらくすると、テーブルの上には美味しそうなそうめんが置かれた。透き通るような艶のそうめんを見ていると、またお腹が減ってきた。

「いただきます」

二人そろって手を合わせ、食べ始める。とっても美味しかった。琥珀色に輝くめんつゆの中に溶けこむようにそうめんが浸っていって、程よい塩加減が私の食欲をさらに刺激した。

「そうめんって、こんなに美味しいんだ」

私が素直な感想を漏らすと、冴子おばさんは照れていた。


「優佳、優佳、そろそろ起きなよ」

 そんな声に呼ばれて、目を覚ました。気がつくとそこはまだ冴子おばさんの家だった。

「そろそろ行かないと、時間まずいでしょ?」

あたりが暗くなってきていることに気づき、慌てて時計を確認する。午後六時に近かった。

「ああっ、もう行かないと、えっとその、どうしよう」

慌てふためく私を冴子おばさんは笑いながら見ている。

「ほらほら、慌てないの。荷物まとめてあるから、早く行った行った。外にタクシー呼んであるからそれで駅まで行くんだよ」

何もかも助けてもらってしまった。しっかりとお礼をしたかったが、そんな時間ももうない。なんで寝ちゃったんだろう。

「あの、本当に、ありがとうございました!」

玄関を出るときに思い切り頭を下げる。本当はこんな位じゃ表せないほど感謝しているのに。

「いいから、急いで行きな。いとしの彼が待ってるよ?」

冴子おばさんは最後まで私を茶化しながら見送ってくれた。


 タクシーを使うと一時間以上かかった道も三十分とかからずに到達してしまう。車って本当にすごい乗り物だなって思った。

「お金は多めに貰ってるんで、お釣りだけ渡しますね」

運転手さんに言われて二千円のお釣りを受け取った。こんなとこまで気を利かせてくれたんだ。

「じゃあ、お気をつけて」

タクシーはそう言って走り去っていった。

 仙台行きの切符をまず買って、そこで乗り換えして盛岡に向かう、だったかな。多分6時半のに乗れば8時半には盛岡につけるとおもう。早く切符を買わないと。

「すみません、仙台まで一枚ください」

みどりの窓口で切符を購入して、一番線に停車している新幹線の指定席に座った。席もとれたし、間に合ってよかったな。

 七分位たった頃だろうか、ようやく新幹線は発車してくれた。仙台までは一時間ほどでつくそうだ。それまでゆっくり車窓の景色でもながめてよう、と思ったけど、やっぱり頭の中は千春さんのことでいっぱいだった。

「恋、かぁ」

はじめての感情に戸惑うけれど、でも初恋の人が千春さんでよかった、千春さんを好きになってよかった。

「あったらどうやってアピールしようかな」

この時私は、まだ重大な事に気づいていなかったのだ。

どうでしょうか、はじめて別の人の視点からの話は。私としましては新鮮で面白く書くことができましたが、とても難しかったです。というかこれ小説じゃないですよね。グダグダすぎて本当に申し訳ないです。

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