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第二十七章。別れと再開。盛岡駅前に純白のドレスの姫君を見た。

 盛岡駅には21時過ぎについた。予定よりも三十分ほど早い。

「まにあったかよい」

笑顔で言う優作に、俺達は深々とお辞儀をした。

「ありがとう。アンタのおかげで助かったよ。本当に恩に着るよ」

優作は照れくさそうに頭をかきながら、

「いいってことよい。またいつか何処かでな」

と、言い残し去っていってしまった。

「良い人でしたね」

去りゆくトラックを見つめ、古泉が呟いた。

「ああ」

もっと色々と、話がしたかったな。


「さて、駅に行きますか」

 盛岡駅は目の前だ。優佳に早く逢いたいもんだ。

「あらら」

ふと携帯を見ると、公衆電話から留守電が入っていた。優佳だろうか、再生してみることにする。

「千春さんですか?優佳です。盛岡駅に着いたので改札外のベンチで待っていますね。お夕飯一緒に食べましょうか」

時間を見ると20時30分頃の着信だった。30分も待たせてしまったのか。急いで行かねば。

「古泉、改札の外のベンチだ。急ごう」

わかってますよ、と古泉は言いたげに俺のあとをついてきた。

 広い駅をしばらく探したが、ようやく優佳を見つけた。少し見えにくい離れたベンチに座る優佳は、着替えてきたのだろうか、白いロングのワンピースが美しかった。

「おまたせ。遅くなってごめんね」

声をかけると優佳はこちらに気づき、立ち上がった。

「意外と早かったんですね。9時半に着く予定だったんじゃないですか?」

そうだ、色々と説明し無くてはならない。

「まぁ、色々あったのよ。募る話は飯でも食いながらにしましょうか」

疑問でいっぱいの優佳をつれて近くのファミレスへと足を運ぶことにした。

 「ええ、そんなことがあったんですか?」

優佳は驚きを隠せないといった顔をしている。実際隠せていない。

「ああ、それで運ちゃんと色々話しながら来たのよ」

古泉は今晩の宿を電話予約するのを忘れていたらしく、大慌てでホテルを探しに行った。

「それで、どんな話をしたんですか?」

どんな話って。思い出すだけで赤面する。

「え、なんですかその赤い顔。もしかしてその人と良い感じになっちゃったんですか?」

いや、それはないだろう。

「断じてない。男といい雰囲気になんかなりたくない。まぁ、色々あったんだよ」

ちょうど良いタイミングで食事が運ばれてきた。

「ほらほら、食べようぜ」

ごまかすように俺は目の前のハンバーグを食べることにした。


 飯を食い終わり、ファミレスの外でしばらく待っていると古泉が帰ってきた。

「なんとか2部屋取れましたよ。安いところが運良く空いていました」

古泉のこういう事に関する運の良さは正直うらやましい。聞けば朝食付で一泊三千円という破格の安さだった。

「ビジネスですが、綺麗なところでしたしいい雰囲気でしたよ。駅からもそれなりに近いですしね」

古泉が自信満々に言うので、俺達も若干期待してしまう。一体どんなホテルなのだろうか。

「お、コンビニがある。何か買っていくか」

古泉の案内についていく途中でフランチャイズのコンビニエンスストアを発見した。飲み物とか色々補充しておきたいところだ。

 コンビニの中は空いていた。時間も時間だからだろうか。古泉は雑誌コーナーで週刊誌を読み始めた。

「終わったら声かけてくださいね」

そう一言いい、自分の世界に入っていく。俺はというと、優佳と一緒に店内を物色しはじめた。

「あ、これ欲しいです。これも買って行きましょうか」

ぽいぽいと品物をかごに突っ込んでいく優佳。あんまり入れると重いんだがな。

「俺はこれとこれかな」

飲み物とちょっとした夜食をかごに入れる。保存食なので今日食べなくても役に立つだろう。

「あ、そうだ。夜三人でパーティしましょうよ。盛岡に来た記念に」

パチンと手を叩き可愛らしく笑う優佳。提案はうれしいがその分俺の財布は軽くなるんだがな。

「いいね。やろうか」

だがたまにはそういうこともいいと思い、俺も賛成した。ジュースやお菓子を幾つかかごに入れてレジに向かった。

「私が払います」

優佳が突然そんなことを言い出した。

「ちゃんとお金あるんですよ。親戚に借りたんですけど、帰ったら私の貯金からきちんと返しますので大丈夫です」

胸を張る優佳。借りてるうちは普通胸はって言えないんだけどな。

「いや、借りてるんだろ。ちゃんと大事に使いなさい」

俺はすまし顔でさっさとレジを済ませた。

「あう。いつもお世話になってるから払いたかったのに」

しょぼんとする優佳の頭を撫でる。

「いいんだよ、これくらい。」

優佳には金では払いきれないくらいのものをもらった。これくらいいいのだ。

「さ、古泉、終わったぞ。いこうか」

雑誌を読みふける古泉に声をかけると、ちょうどキリの悪いところだったらしく、しばらく待たされることになった。

「まったく、やれやれだな」

結局店を出たのは五分後の事だった。


「ここです」

 古泉が案内した先には大きめなホテルが建っていた。綺麗な装飾が施してある外観からは、一泊三千円とは思えなかった。

「本当にここでいいのか?」

不安になって尋ねるが、古泉はしれっとした顔で肯定すると中に入っていってしまった。

「覚悟を決めるしかないかな」

 不安は拭いきれなかったが、古泉を信じるしか無かった。

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