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第二十一章。新たな始まりの朝日を浴びて。

 予定より少し早く、9時20分前にバスは新宿に到着した。

「ものすごく久々に東京に来た気がするな」

バスを降り、伸びをする。古泉と優佳も他の乗客に混ざり、降りてきた。

「相変わらず人の多い街ですね」

そりゃな。東京だし。通勤する人々で混雑する駅の入り口を眺めつつ古泉が言う。

「とにかくゆっくりしたいな。何処か無いか?」

キョロキョロと辺りを見回すと喫茶店が遠くに見えた。あそこにしようか。

「あっちの喫茶店で休憩しよう。朝ごはんもそこで取ろう」

指をさしながら歩き出す。とにかく疲れたから落ち着いて座りたいのだ。

「まったく。あなたはいつも先に行ってしまうんですから」

古泉が溜息をつきながら荷物をまとめ俺のあとを歩き出した。優佳も古泉のあとに続くように歩き出す。

 喫茶店の窓際テーブル席を陣取った俺らは朝食をとっていた。トーストに卵にサラダ、そしてコーヒーのオーソドックスな朝食だ。

「では、これからの予定を発表します」

古泉がお手製の予定表を開きながら喋り出す。

「10時28分発湘南新宿ラインで宇都宮まで行き、12時7分発東北本線で黒磯、13時33分発に乗り福島、15時45分発に乗って仙台、17時42分発に乗り一ノ関、そして19時32分発に乗って21時には盛岡に着く予定です」

そんなに早口で言われてもわからん。まあ、お前についてけばいいってことだよな。

「あの、お二人に大事な話が。いいですか?」

優佳がおずおずと手を上げた。

「どうぞ」

二人そろって優佳を見つめる。優佳が小声で話し始めた。

「宇都宮で一旦別れてもいいですか?宇都宮に親戚の家があるんです。私、携帯電話持ってなくて、さすがに何日も誰にも連絡とってないし、お金もずっと借り続けるわけにはいかないから。一旦親戚の家によって行かせてください」

深々と頭を下げている。なるほどな、それなら仕方ない。

「途中一人でも大丈夫か?」

そこが心配だ。お金のこともあるし、女の子の一人旅は不安だろう。

「大丈夫ですよ。私、行きは一人で広島近くまで行きましたから。だからお願いします」

こうお願いされちゃ断れないな。

「僕は大丈夫ですよ。後で合流する形ですかね」

古泉も賛成する。心配は心配だが、彼女にとってそれが一番いいのだろう。

「よしわかった。道中気をつけるんだぞ。それとこれ、持っていけ」

俺は財布からメモを取り出すと自分の携帯の電話番号を記入し、一万円札2枚と一緒に渡す。

「何かあったら電話してくれ。お金はいざというときのためだ。使わなかったらあとで返してくれればいいよ」

そして優佳の手を握り、

「何かあったらすぐ駆けつけるからな」

ニッコリと微笑んで言った。


 10時28分発の電車に乗る。車内は混み過ぎもせず空きすぎもせず普通の乗車率だった。空いた席を発見し、並んで座る。

「それじゃ、岩手に向けて出発!」

俺達は意気揚々岩手に向けて旅に出た。

「しりとり」

「りんご」

「ゴム」

 宇都宮につくまで暇なのでしりとりをする。俺、優佳、古泉の順番だ。

「虫」

「収入印紙」

「硝酸アンモニウム」

「虫カゴ」

「ゴリラ」

「ラム」

「む、む、武蔵関」

「錦糸」

「硝酸カリウム」

もう嫌だ。

「古泉お前、俺を「む」ではめようとしてるだろ」

じっと睨みつけると古泉は目を逸らした。

「なんのことでしょうか。ほら、あなたの順番ですよ」

すっとぼけていやがる。やれやれだ。

「しゃあない。ムササビ」

俺は諦めてしりとりを再開した。優佳との別れも近づいていた。

今回から盛岡編がスタートします。まだまだ先は長いですが、これから一体何が起きるのでしょうか。次の章を最後に優佳の出番は少しの間なくなります。優佳の活躍を期待している方々には申し訳ありません。また帰ってきた時を楽しみにお待ちください。

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