01、約束を果たす日~初めての回鍋肉~
筆者作成
ここは、中華のような街並みに魔術や現代文化が入り混じるラスティアの国「紅孩公国」。
ディアーは今まで働いていた食事処「君生飯店」で皆に別れを告げているところだった。
ディアー「そんじゃ、後はよろしくな」
君生飯店の店主で給仕長のテリアが柔らかく返す。
テリア「ええ、いってらっしゃい。それにしても、わずか数週間で辞めちゃうとは、電撃移籍もいい所ね」
ディアー「それは申し訳ないっす。でも、やってきたこと、これからやりたいことが定まったから、約束を果たしに行かなきゃいけないと思って」
君生飯店料理長フラムもしっかりとした口調で言う。
フラム「そうだな。これからは昔みたいに3人で何とか切り盛りしていくさ」
君生飯店の給仕兼料理人のフリジットもはきはきと答える。
フリジット「一応私も厨房に入ることがあるくらいには成長したからな。心置きなく行ってくるといい」
ディアーは今まで働いてた思い出をすべて込めて言った。
ディアー「ああ! ありがとう!」
彼は約束の主、紅孩公国の主――紅連狼[こうれんろう]――の住む宮廷へと向かう。
宮廷へ入り、廊下で連狼の配下フェイと出会う。
ディアー「こんにちは」
フェイ「おお、ディアーか! 今日はどのような用だ?」
ディアー「約束を果たしに来たっす」
フェイは顔を綻ばせて喜ぶ。
フェイ「おお! ついに宮廷料理人として働いてくれるか!」
ディアー「はい。なので、レン嬢に会いに来たっす」
フェイ「ああ、すぐにお呼びしよう」
そういうとフェイは駆け足で奥へと向かった。
フェイが帰ってきてディアーに告げる。
フェイ「ディアーよ。レン嬢が部屋で待っているそうだ。一緒に向かおう」
ディアー「了解っす」
二人は連狼の待つ部屋へと向かう。
部屋に入るや連狼が飛びつきそうな勢いでディアーに話しかける。
連狼「おお、ディアーよ! ついに私たちのために宮廷料理人になってくれるのだな!」
ディアー「約束したからね。あ、でも堅苦しい敬語とか全然使えないんで、その辺はよろしくっす」
連狼「かまわぬかまわぬ。お主が来てくれればきっとここに住む者は皆喜ぶだろう」
フェイ「私たちもその一人だしな」
ディアーは軽く腕まくりをして自信満々に言い放った。
ディアー「よし、大船に乗ったつもりで見ててください! 早速何か作りますね。食堂へ来てくれますか?」
連狼「おう。ぜひ行かせてもらおうか」
フェイ「私も同席させてもらおう」
厨房に入るディアー。荷物から自前の包丁を入れた鞄と割烹着を取り出す。
素早く身支度を整えると食材が入った棚を見て少し思案する。
ディアー「ふむふむ。調味料は……なるほど」
一通り厨房内の食材、調味料を確認し、大型のコンロ、調理器具なども確認していく。
ディアー「じゃあ、手始めに回鍋肉でも作るとするか」
――ディアーの初料理の回鍋肉――
1、まずはキャベツをざく切りにしていく。量はひと玉。
2、肉は豚バラ肉を使う。薄くスライスし切り分けていく。
3、合わせ調味料は醤油、甜面醤、料理酒、みりん、豆板醤、片栗粉を手際よく混ぜ合わす。
4、中華鍋に豚の脂を入れて火を入れる。豚の脂は溶けて鍋に馴染んでいく。
5、スライスした豚バラ肉を炒めていく。少量の料理酒を加えて臭みを消していく。
6、ニンニクを入れて香りと味のアクセントにする。独特の香りが食欲をそそる。
7、豚バラ肉の色が変わったらキャベツを入れる。しんなりするまで炒めていく。
8、合わせ調味料を入れさらに炒める。最後にごま油を回しかけてさっと炒める。
器に盛りつけて完成だ。
ディアー「ふう、ざっとこんなもんかな」
連狼「おおお! 何と美味しそうな出来なのじゃ!」
フェイ「初めてでこの出来は流石と言わざるを得ないな」
ディアー「味は標準的にしてるんで、辛くするなら豆板醤を加えるといいっす」
連狼「どれどれ、まずはそのまま……。美味い! お肉が旨いのう!」
フェイ「どれ。……たしかに美味い! キャベツと肉の絡み具合が絶妙だな」
ディアー「キャベツは入れるタイミングでシャキシャキ食感を残したり絡み合いを重視したり出来るんだ。他にピーマンを入れたりしても美味しいぞ」
連狼「どれ、今度は豆板醤を入れてみて、と。うむ、私好みの辛味じゃ!」
フェイ「私も豆板醤を入れよう。よし。……おお、たしかに一気に辛口になるな」
ディアー「豆板醤は唐辛子も使った辛味調味料だからな。回鍋肉との相性は抜群さ!」
連狼「ごちそうさま。美味じゃった」
フェイ「ごちそうさま。これからこの食事が続くと思うと日々を過ごすのが楽しみになるな」
ディアー「お褒めにあずかり恐悦至極」
こうしてディアーの宮廷料理人としての日々が始まるのであった。
今回はラスティア群像劇の外伝、ディアーさんの料理事情にフォーカスを当てた作品です。
ディアーさんが学んできた料理のすべてを出していきたいですね。




