表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

【短編小説】並べてくれ

掲載日:2026/02/09

 強烈な印象を残す光景だった。

 工事現場に立てられた仮囲いのフェンスは、過去に不良たちの手でラクガキがされていたようだった。

 しかし現場労働者たちはそんなグラフィティーなんてまるで関係が無いと言わんばかりに、解体して再構築したフェンスがそこにあったのだ。


 

 まるでアナグラムのように美しい光景。

 ラクガキがランダム配置されたフェンスは不良たちの反骨精神と労働者たちの無骨な社会性で産まれた。

 そしてその光景は学生だったおれの精神に深く刻まれた。


 帰宅したおれは服をバラバラに切り離してくっ付けてみたり、椅子やテーブルの天板とか手足を取り替えてみたりした。

 しかし足りない。

 どうしようもなくありきたりだ。


 昆虫を捕まえては羽や手足を入れ替えてみても同じだった。

 小学生の描くキメラ昆虫みたいだった。むしろ機能を殺してしまって動かないのだから、より始末が悪いと言える。

 おれば悩みながらカップ麺を3つ開けて、それぞれのスープや麺、かやくを入れ替えた。

 不揃いの箸で蓋を抑えると、俄かに怒りのようなものが込み上げてきた。


「こんなものは違う!だらしない大学生の遊びじゃないか!」

 おれは絶叫してカップ麺をひとつの寸胴鍋にまとめると一息に飲み込み、出てきた吐瀉物をもって再構築を完成させようとしたが納得がいかない。

 知識だけで膨れ上がったイメージに押しつぶされそうになったおれは家に火を放った。

「そうだ!足りないのは背に水!」

 家なんてあるのがいけない。

 そこから出なきゃ始まらないのだ!


 そのままおれはスーパーに向かい段ボールを回収すると公園の片隅に部屋を構築した。

 ここから始めるぞ。

 おれはおれを再構築するのだ。

 理想のおれを。そして理想のおれを再構築できた暁には、理想の女を再構築するのだ。

 小学生の頃からいまに至るまで、好きだった女の子や芸能人たちを分解して再構築するのだ。

 やるぞ。やってやる。


 しかしそのためには少しばかりの金がいる。

 翌朝、おれは近所の工事現場に向かい日雇い労働者として仕事を始めることにした。

「今日は何をすればいいですか?」

「じゃあ、ここに積んであるフェンス板を並べてくれ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ