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サマー・ロスト 剣を捨てた無気力少年、負けたら「存在消滅」のデスゲームで覚醒する。  作者: うにまる
一章

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第22話 模擬戦?──いいえ、これは

「戻りましたー!」


 外からユウトの声が響いた。ちょうどいい、相談してみるか。

 立ち上がり、店の外へ出る。 駐車場にはユウトたちの車が停まっており、その隣に真田の車がちょうど滑り込んでくるところだった。


 ユウトが手を振ってくる。


「ただいま。こっちも順調に調達できたよ」


「おかえり。……なぁユウト、ちょっと聞きたいことがあるんだけど」


「ん? どうした、改まって」


 少し言いにくさを覚えながらも、俺は口を開いた。


「……模擬戦とかって、できるのかな。試しに他の能力者と戦ってみたいんだ」


 ユウトは一瞬きょとんとした後、にやりと笑った。


「へえ、その気になったんだ」


「いや、もちろん本気じゃなくて練習だよ。ダイゴのマネキンとか、どう倒すか試したくてさ」


「なるほどね……」


 ユウトは腕を組んで考え込む。 すると後ろから、荷物を肩に担いだ真田が歩いてきた。


「おい、今“模擬戦”って聞こえたぞ?」


 先輩はにやりと笑い、豪快に俺の肩をバンと叩いてきた。


「いいじゃねぇか! 男なら強さを求めてなんぼだろ! 模擬戦なんかより、いっそよその学校に殴り込みに行ってこい!」


「えっ、今からですか!?」


「おう、今なら他校も夜の備えでドタバタしてるだろうしな。ここの守りはこれだけいれば充分だ。二、三人仕留めてこい。結局は実戦で慣れるのが一番だ!」


……完全に楽しんでやがる、この人。

 ユウトも苦笑しつつ、「真田さんはこういうの大好きだから」と肩をすくめる。


「守りは任せて」


 ユメが意外とノリノリで言う。ノノは……あからさまに同情の視線を俺に送ってきた。


 (……余計なこと、言っちゃったかな)


 真田は満足げに腕を組み、うんうんと頷く。


「そういや、桐谷きりたにから暁天きょうてんを削れたら削って欲しいと言われてたんだ。ユウト、連れてってやれ」


 巻き込まれたユウトが「えっ?」と言う顔をする。余計なこと言いましたね、本当ごめん。


「……じゃあ、ちょっと偵察がてら行くか」


 ユウトが仕方なさそうに言う。二人で車に乗り込む。


「ま、軽く様子を見て、少数のグループがいたら戦ってみて、危なそうならすぐ戻る。そんな感じでいいよな?」


「ああ、なんか悪いな」


「いや、俺もヨシツネの剣を久しぶりに見たかったし」


 そう言ってもらえるとありがたい。それにしても実戦で慣れるのが一番か、たしかにその通りだ。 どんな能力者相手でも、この刀と今の俺ならやれる気がする。

 

 暁天高専きょうてんこうせんはここから北西、車で二十分ほどだろうか。

 車を出して十分ほど経ったころ、ユウトが声をかけてくる。


「ここら辺が東陵と暁天の中間あたりだ。周囲を警戒してくれ。そろそろ車を降りて……」


 キュラキュラキュラ──。  

 視界に恐ろしいものが見えた気がした。


「ユウトさん? あれ……なんすか?」


「くっそ!」


 ユウトが慌ててハンドルを切る。


 ドン──!


 砲撃音が轟き、目の前が閃光に包まれる。爆風が吹き荒れ、熱が肌を刺す。

 目の前が真っ白になっていく。ユウトの方を見ると大丈夫だという顔をしていた。


……また、このパターンですか?


 気づけば、麗しの我が母校の校庭に寝転んでいた。


「戦車はないわー」  

 思わず本音が漏れる。 刀でどうこうできる相手じゃない。


「二日連続だな」


 ユウトも苦笑する。もうユウトと二人で車に乗るのはごめんだ。


「おかえり。昨日も同じ光景だったね」


 九条が傘をさしてにこやかに迎えてくれる。返す言葉が見つからず、俺は小さく「はい」とだけ答えた。


「どうしたんだい?」


 呆然としている俺に、九条が声をかける。


「……戦車がいたんですけど、あれどうすれば?」


「ふふっ、その刀で切ればいいじゃないか」


 うちの三年は言うことが無茶苦茶だ。


「まぁ、実際能力の相性ってあるしさ、車に乗ってなかったらいい勝負できたと思う」  


 ユウトまで無茶苦茶を言い出す。


「戦車とか? 無理だろ」


「真田さんは殴り飛ばしてたぞ」


 ……ッ。


『次はオレがやるゾ!』


 みんな感覚がバグってる。まともな人間か、まともなトカゲはいないのだろうか?


「まぁ、次は砲弾は俺が落とすから、ヨシツネは回り込んで上手いことやればいいんじゃないか」


 俺を、何だと思ってるんだ。


「……ユウト?どうしてここに?」


 望月が、ちょっと眉をひそめながら近づいてくる。  

 まるで顔に「ルークを守るのがお前の任務じゃなかったのか?」と書いてあるみたいだ。

 

 ユウトは慌てて手を挙げ、言い訳じみた声を出す。


「あ、あの、真田さんに……模擬戦代わりに暁天に突っ込めって、言われまして……」


「そういう時は一言連絡くらいしてもいいんじゃねえか?」


 望月は、不満を隠せない様子だ。


「まぁいいじゃないか、一年生が強くなりたいと願うのは頼もしいことだぜ」


 九条はにこやかにフォロー。この人はどんな事も軽く流していく。

 作戦を立てる側からしたら、好き勝手動かれるのはたまったもんじゃないんだろう。申し訳ない気持ちが胸に浮かんだ。


「はぁ……もう時間も遅いし、今回は目をつぶる──自由行動にして良いぞ」


 望月が小さくため息をつく。苦労が忍ばれるな……胃に穴が開かないか心配だ。

 時計を見ると、そろそろ五時半になろうとしていた。


「じゃあ、コンビニでも行く?」


「だな」


 車に乗る気にはならず、俺たちは歩いて向かうことにした。


「実際さ、やっぱり近接と防御と遠距離の三人が揃ってるのが理想だと思うんだよね」


 ユウトが話しかけてくる。


「たしかに、ゲームでも鉄板の編成だな」


 この世界は初見殺しに会うと即死だもんな。タンク役が欲しい。回復役は最悪キングがあるしな。


「ネムルは防御役というよりサポート寄りだからさ。純粋な防御を考えるならダイゴのマネキンの方がいいんだけど」


 ユウトの言うことにも一理ある。


「とはいえ、校内の生活に必要な能力なんだろ?」


「そうそう。そこが難しいんだよね。実際あの能力は日常生活にめちゃくちゃ便利だし、本人も性格的にオフェンス組には参加したがらないだろうしな」


「純粋な防御役となると……」


「桐谷先輩が防御なら最強だよ。けど、あの人は班長だからさ。班を組むなら、別の誰かを立てるしかない」


 なるほど──俺が班長を目指すって言ったからのアドバイスか。


「……あー、来年あたりの話か?」


「いや、人数次第じゃ今年中にもう一班できるかもしれないよ。そういうのも見越して、真田先輩は指示を出したんじゃないかな」


「じゃあユウト、お前は俺が班長になったら入ってくれるのか?」


「もちろん。先輩がなんて言おうと、俺は倉田班に入るよ」


 軽く笑いながらそう言う。


『ベンケイもだゾ!』


 ああ、心強いよ。


「実際さ、来年も続くとしたら。長谷川先輩と桐谷先輩は、そのまま班長なんだろ?」


「そうだと思う。一年から二人か三人、班長が出るんじゃないかな。多分だけど、まず望月先輩が案を出して……あとは話し合いで決まるんじゃない」


 そんな会話を交わしているうちに、気づけばコンビニが目の前に近づいていた。

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