未来を閉ざした少女
ある日、突然。
その女の子はやってきた。
「こんにちは!」
明るい少女だった。
人懐っこい少女だった。
そして、優しい少女だった。
僕はその少女と恋に落ちた。
いや、落とされたと言っても良いかもしれない。
僕は彼女と共に色々な遊びをした。
様々なものを食べた。
思いつく限りの場所に行った。
幸せな時間だった。
ある日。
彼女は急に言い出した。
「私、そろそろ帰らないと」
「帰る? どこへ?」
「遠いところ。とっても」
混乱する僕の前で彼女は微笑み、僕の体を思い切り抱きしめて言った。
「大好きだよ。ずっと」
その言葉と共に彼女は僕の前から姿を消した。
――そして、僕は二度と彼女と会うことはなかった。
***
「戻って来たのか」
戻って来た私にかけられた第一声がそれだった。
タイムマシンから降りながら私は仲間たちを見る。
皆、満身創痍のまま私を何か言いたげに見つめていたが――結局、なにも言う事はなかった。
「うん。ここが私の時代だしね」
「そ。馬鹿な人」
何年も共に過ごした仲間に私は告げた。
「任せたのはあなた達じゃん」
「まあな」
「その通りだが」
私はため息と共に呟く。
「これで良かったと思う」
「幸せに暮らしてりゃ良かったのに」
返す言葉もない。
「ほれ。ぼちぼち敵が攻めてくるぞ」
「ん。わかった」
そう。
敵が攻めてくる。
そして、私の目的は過去から英雄を連れてくることだった。
取るに足らない命を守って死んでしまった『私たちの時代の英雄』の代役とするために。
「抵抗は無意味?」
「聞くまでもないだろう」
残酷な現実を聞きながら私は笑う。
そう。
皆、分かっているんだ。
英雄が居ないから私達はこのまま全滅するって。
――そして、英雄が居た所で何も変わらないほど状況は絶望的だってことも。
「彼、元気そうだったか?」
「もちろん。まぁ、平和な時代だったから当然だけど」
「なら良かった」
「皆も会いたかったでしょ?」
「まあな。だけど、一番会いたかったのは恋人だったお前だろ?」
その通りだ。
「あーあ。タイムマシンがもっと早く完成していたらなぁ」
恐怖を打ち消すために呟いた言葉。
皆が笑う。
「別に戻って来なくて良かったんだぞ」
「そんな薄情なこと出来ないでしょ」
失敗した時代――いや、自分の時代で死ぬことを少しだけ誇りに思いながら、私は敵を待ち続けた。




