表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

未来を閉ざした少女

作者: 小雨川蛙
掲載日:2025/09/11


ある日、突然。

その女の子はやってきた。


「こんにちは!」


明るい少女だった。

人懐っこい少女だった。

そして、優しい少女だった。


僕はその少女と恋に落ちた。

いや、落とされたと言っても良いかもしれない。


僕は彼女と共に色々な遊びをした。

様々なものを食べた。

思いつく限りの場所に行った。


幸せな時間だった。




ある日。

彼女は急に言い出した。


「私、そろそろ帰らないと」

「帰る? どこへ?」

「遠いところ。とっても」


混乱する僕の前で彼女は微笑み、僕の体を思い切り抱きしめて言った。


「大好きだよ。ずっと」


その言葉と共に彼女は僕の前から姿を消した。

――そして、僕は二度と彼女と会うことはなかった。



***



「戻って来たのか」


戻って来た私にかけられた第一声がそれだった。

タイムマシンから降りながら私は仲間たちを見る。

皆、満身創痍のまま私を何か言いたげに見つめていたが――結局、なにも言う事はなかった。


「うん。ここが私の時代だしね」

「そ。馬鹿な人」


何年も共に過ごした仲間に私は告げた。


「任せたのはあなた達じゃん」

「まあな」

「その通りだが」


私はため息と共に呟く。


「これで良かったと思う」

「幸せに暮らしてりゃ良かったのに」


返す言葉もない。


「ほれ。ぼちぼち敵が攻めてくるぞ」

「ん。わかった」


そう。

敵が攻めてくる。

そして、私の目的は過去から英雄を連れてくることだった。

取るに足らない命を守って死んでしまった『私たちの時代の英雄』の代役とするために。


「抵抗は無意味?」

「聞くまでもないだろう」


残酷な現実を聞きながら私は笑う。

そう。

皆、分かっているんだ。

英雄が居ないから私達はこのまま全滅するって。

――そして、英雄が居た所で何も変わらないほど状況は絶望的だってことも。


「彼、元気そうだったか?」

「もちろん。まぁ、平和な時代だったから当然だけど」

「なら良かった」

「皆も会いたかったでしょ?」

「まあな。だけど、一番会いたかったのは恋人だったお前だろ?」


その通りだ。


「あーあ。タイムマシンがもっと早く完成していたらなぁ」


恐怖を打ち消すために呟いた言葉。

皆が笑う。


「別に戻って来なくて良かったんだぞ」

「そんな薄情なこと出来ないでしょ」


失敗した時代――いや、自分の時代で死ぬことを少しだけ誇りに思いながら、私は敵を待ち続けた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ