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【完結】30歳、処女が恋愛指南していたけど、自分の恋愛は対象外です!  作者: 結城トウカ


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エピローグ お詫びに その1

「うわぁ~、すごい!!」


思わず声に出るほどの豪邸が目の前に広がる。


---------------------------

2週間前、水橋屋との新たなプロモーション企画の話をするため、由井のもとへ訪れたときのこと。

退席しようと、荷物をまとめているところに由井から声を掛けられる。


「中城さん、GWにうちの別荘にきませんか?」

「え?」

「ああ、いえ、私が軽率な発言をしたせいで、ご迷惑をおかけしてしまったので。お詫びといってはなんですが、うちの別荘にいらっしゃいませんか?おもてなしさせていただきますよ」


返事に悩んでいると、さらに彼が私の背中を押すように言葉を付け加えた。


「奥村さんやお友達も誘っていただいて構いません」

「ありがとうございます…。じゃあ…お言葉に甘えて…」


---------------------------


そういうわけで、私たち5人は由井の招待で、彼の別荘を訪れている。

玄関で由井が出迎えてくれた。

その姿はいつもの着物姿ではなく、アウトドアに適した軽装だった。

着物以外の(よそお)いは新鮮に感じる。


「ようこそ、いらっしゃいました」

「お邪魔します」


玄関を進むと、天井の高いリビングが広がる。何畳あるのかわからないほど広い。

リビングには10人は座れそうなソファ、8人掛けのテーブル、見たことがないほどの大きいテレビが陣取っている。

全てが規格外だった。


「2階は皆さんの自室になっています。どの部屋でもご自由にお使いください。私はあそこの1階奥の自室にいますので、もし何かお困りのことがあれば、お声がけください」


階段の下にある扉を指し示しながら由井は言った。

彼もこの別荘にそのまま泊まるということらしい。


「それと、冷蔵庫のものも自由にしていただいて結構ですので」


私たちは2階の部屋に荷物を置きにいく。

8畳ほどの部屋に、整えられたベッドが備え付けられている。

部屋もトイレや風呂、洗面台全て完備されていた。

この部屋だけでも生活するのに困らないだろう。

扉がノックされたので返事をすると、友香と高須が入ってきた。


「中城さん、由井社長からこの辺にきれいな滝があるって聞いたんですけど、一緒に見に行きませんか?」

「ううん、私はちょっと疲れたからひと休みしてるよ。2人で行ってきて」

「じゃあ、行ってくるね」

「行ってらっしゃい」


私は手を振って、彼らを見送る。

せっかくなら2人にしてあげたい、なんていうのは余計なお節介だったかもしれない。



高須の先導で、別荘の裏手にある山道を上がっていく。

由井から事前に道順まで聞いていたのか、高須は迷わず進む。

道は舗装されていたので、サンダルでも歩きやすかった。

別荘の宿泊者がよく訪れる場所なので、手を加えたのかもしれない。

10分は歩いただろうか。それでも滝の姿形は見えなかった。


「安達さん、大丈夫ですか?疲れてないですか?」

「うん、大丈夫」


もう5分歩くと、滝が落ちる音が聞こえてきた。

道のりの傾斜が緩やかになってきた。

更に進んだところで、目的地に到着する。

思ったより大きな滝だ。

他に客はおらず、滝の落ちる音だけが響いている。

滝が落ちた先の水辺(みずべ)は透明度が高く、泳ぐ魚の姿まで確認できた。


「わぁ〜、すごい」

「ですね〜。しかも涼しいですね」

「うん」


山登りを終えた火照(ほて)った身体にちょうどいい涼しさだ。

ひとしきり涼んだところで、帰ろうかと話していたところに、高須が別の話題を切り出す。


「あの、安達さん、今度映画とか観に行きませんか?」

「え?」

「友達からタダ券もらったんで、どーかなと思って」


少し照れくさそうに話す高須。

可愛らしいところもあるし、頼りになることも少しはあることに気づくようにはなったが、それでも正直、彼を恋愛対象としては見れない。

私のことを気にかけていたら、本当に良い相手を見つけられなくなってしまう。

彼に期待をさせないように、釘を刺しておくべきだろうか。


「高須くん、そんな私にばっかり構ってないで、次の相手探しなよ。君はまだ若いんだし」

「そんなこと言わないでよ」


彼は小声で何かを呟くが上手く聞き取れなかった。


「え…なんて?」

「俺が好きなのは安達さんなんですよ!」


珍しく声を荒げる高須に物怖(ものお)じしてしまう。

彼は私の手を掴むと自分の胸にあてる。


「俺がドキドキしてるのわかりますか?」


彼の心臓の鼓動が、熱が、手のひらから伝わってくる。


「俺が安達さんと話すとき、こんくらいいつもドキドキしてるんです。だから、そんなすぐ次の人みたいな言い方しないでください…」


彼の気持ちをないがしろにしてしまったことを反省する。


「ご、ごめん」

「俺が安達さんのこと好きなんだって伝わりました?」

「わ、わかった…」


彼は私の手を離さず、そのまま手を繋ぐ。


「あ、あの、手…」

「安達さんが本当に嫌なら離します」


高須の強い眼差(まなざ)しに断ることができなかった。

ガッシリとした男性の手だなと感じる。

別荘に戻るまで、繋がれた手は(ほど)かれなかった。

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