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【完結】30歳、処女が恋愛指南していたけど、自分の恋愛は対象外です!  作者: 結城トウカ


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最終話 私の好きな人

「中城さん…僕はあなたが好きです。あなたの好きな人を僕にしてもらえませんか?」


その言葉が私に向けられることはないと思っていた。

これは叶うはずのない恋だから。

私は彼の幸せをお祝いする立場で、彼の傍にいることなんて想像していなかった。

まるで夢でも見ているかのようだ。

私は思わず自分の頬を軽くつねる。


「ど、どうしました…!?」

「い、いえ、もしかして夢なんじゃないかと…」

「大丈夫、夢じゃないですよ」

「本当に、私のこと…?」

「はい、僕は中城さんのことが好きです」


夢じゃない、そうわかった瞬間、頬に涙が(こぼ)れる。

今までの悩みなんかどうでもよくなった。

私はなんて都合のいい女なんだろう。

でも、今はそれよりも、この現実が嬉しくて(たま)らなかった。


「す、すみません…!僕が勝手に舞い上がってしまって…」


慌てる奥村に、私は横に首を振る。

涙を(ぬぐ)いながら、どうにか言葉を並べる。


「違う、違います…その、嬉しくて…私も奥村さんのこと好き…だったから…」


私の身体がふんわりと優しく抱きしめられる。


「僕も嬉しいです」


彼の匂いに包みこまれ、()き止めていた涙が途端に(あふ)れ始める。


「う…ぅ…う…すみ、すみません…」

「気にしないでください、中城さんが落ち着くまでずっと傍にいますから」


私たちは公園を後にし帰路についた。

並んで歩く2人の影が地面にくっきりと映っている。

今日の月はやけに明るい。

眩しすぎるくらいだ。



翌日、会社の休憩スペースで友香と高須に、奥村とのことを報告をした。

話したと同時に、友香に勢いよく抱きしめられる。


「おめでとう!よかった、本当に…」


彼女の目に少し涙が浮かんでいた。

自分ごとのように喜ぶ彼女を見て、もらい泣きしそうになる。

隣にいる高須はやや興奮気味に、こちらを見ていた。


「中城さん、おめでとうございます!!びっくりしました!」

「あ、ありがとう。高須くん、でも、もう少し声落として…」

「あ、すみません…」


口もとを手で(おお)い、周囲に目を移す。

集まった視線が散ったところで、彼は友香に声を掛ける。


「俺も負けてられない!安達さん、俺とデート行きましょう!」


声のボリュームが抑えきれない様子に、再び視線が集まる。

友香はたしなめるように、彼の頭を軽くチョップする。


「声が大きい。全く…。もう少し大人になって出直してきなさい」

「すみません…」



往訪が終わった直後に私用のスマホが鳴る。

電話に出ると、聞き馴染みのある声が聞こえてきた。

いつものバーに向かうと、待ち合わせ相手がカウンターに座って待っていた。


「陽介」


俺は草太の隣に座ると、事の顛末(てんまつ)を聞かされた。


「そうか…よかったな」

「うん、ありがとう。陽介のおかげだ」


思わず目を見開く。

俺が裏で動いていたことに気づいていたのだろうか。

いつから気づいて…いや、もうそんなことはどうでもいいか、と思い直す。

この笑顔を見られたら、俺はもう満足だ。

俺はグラスを草太の方に差し出す。

その意図に気づいた草太が、自分のグラスをあわせる。

ガラスの交わる音がきれいに響いた。



本店にある事務室の一室で書類仕事をしていると、スマホの着信音が鳴る。

電話口で仕事の確認が終わると、歯切れの悪い様子で彼女は話し始めた。


「そうですか、それはおめでとうございます。わざわざご丁寧にありがとうございます」


電話を切ると、部屋の入口に(まこと)が立っていた。


「兄さん、そろそろ会合の時間だよ」

「ああ」


俺は立ち上がると、部屋を出る。

派閥争いを終止符を打つために、派閥のトップと話し合うことになっている。

話し合いも3回目だ。前回が平行線で終わったので、今日は少しは話を進めたい。

背中を押してくれた彼女のためにも良い報告をしたいところだ。

俺は(まこと)とともに会議室に入った。



「よしっ!」


化粧、服装も我ながら気合いが入っている。

等身大の鏡で何度かチェックし終えると、家を出た。


待ち合わせの広場に向かう道中、桜並木が続いている道に出くわす。

桜が舞う様子を眺めるながら歩く。

待ち合わせ時間の10分前に着くと、そこには読書をして待つ奥村の姿があった。

その立ち姿も絵になる。

しばらく見ていようかと足を止めたが、彼が私に気づいたので、彼のもとへと歩み寄る。


「中城さん!」

「奥村さん…!お待たせしてすみません!」

「いえ、僕もちょうどさっき来たところです」


彼はいつものように優しく微笑む。


「じゃあ、行きましょうか」

「はい!今日はどこに行くんですか?」

「着いてからのお楽しみです」

「それはお手並み拝見、ですね」

「お手柔らかにお願いします」


左手に彼の温もりを感じながら、今日のデート先へと向かった。


あの日、駅で彼のパスケースを拾ったときから始まった恋。

これから楽しいこともあれば、辛いこともきっとあるだろう。

でも、彼となら全てを乗り越えていける気がする。

きっとその思い出を積み重ねた先に幸せが待っていると思うから。

今までご愛読くださりありがとうございました!

長編を書いたことは初めてで慣れないところもありましたが、無事最終話を迎えることができて嬉しく思います!

また、エピローグ(全2話)も掲載予定なので、もうしばらくお付き合いいただけますと幸いです。

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