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【完結】30歳、処女が恋愛指南していたけど、自分の恋愛は対象外です!  作者: 結城トウカ


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第75話 告白

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ご連絡ありがとうございます。嬉しいです。

早速ですが、明日の夜はご都合いかがでしょうか?

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


奥村に連絡したあと、すぐに返事が来た。

日程を延ばそうかと悩んだが、このままの勢いで言ってしまおうと決心する。

了承の返事をしたものの、いざ明日と思うとなかなか落ち着かなかった。

ただの先輩後輩に戻りたい気持ちもないわけではない。

むしろ、奥村からしたら私との関係を戻したいと思っているだろう。

でも、私といたらまた彼を傷つけてしまうかもしれない。

奥村の未来を思えばこそ、なのだ。

それでも、好きな人ともう会わない、会えないと決意することの辛さを改めて痛感していた。


「うぅ…緊張する…」



翌日。

こういうときに限って仕事がスムーズに進み、定時過ぎに退社できてしまった。

外に出ると、少し肌寒さを残しつつも、流れる空気はちょうどいい気温だ。もうすぐそこに春の気配を感じさせる。

待ち合わせ場所に向かいながらも、逃げ出したい気持ちがこちらを覗く。

しかし、ドタキャンすることもできず、一昨日(おととい)前野と来たばかりの喫茶店に再び訪れる。

腕時計を見ると、待ち合わせ時間ピッタリだ。

昨日、何を話すか何度もイメージトレーニングを行った。

大丈夫、練習通りにすればいい。

緊張で心臓の鼓動が速くなる。

もう彼はいるだろうか。

彼と会うのは病院で会ったとき以来だ。

一度、深呼吸をする。

私は思い切って入口のドアを力強く押した。

ドアのベルが私の入店を知らせる。


「中城さん」


奥村の姿を探す間もなく、彼は立ち上がり居場所を知らせてくれた。

彼がお辞儀をするのに合わせ、私も軽く頭を下げる。

店員に待ち合わせであることを伝えると、彼の座るテーブルに向かった。

奥村に気づかれないように、そっと息を吐く。

席につくと、店員が注文を取りに来たので、カフェラテを頼んだ。

奥村も来たばかりのようで、テーブルに置いてあるコーヒーはまだ湯気が立っていた。


「お待たせしてすみません」

「いえ、こちらこそお時間いただいてありがとうございます。お会いできて嬉しいです」


そんな台詞(せりふ)を恥ずかしげもなく言わないでほしい。

思わず赤面してしまう。


「お、お身体はもう大丈夫ですか?」

「はい、もう大丈夫です」


私が頼んだカフェラテが運ばれてきたので会話を一度止めた。

店員が去ると、奥村が話始める。


「仕事の方は大丈夫でしたか?」

「はい、忙しい日もありますが、今日は落ち着いていたので…。お、奥村さんの方は大丈夫でした?」

「ええ、月初の対応も一段落したので、今は落ち着いています」

「それはよかったです…」


世間話が一区切りつくと、間が空く。

本題に入ろうと思うが、なかなか言い出せなかった。

すると、奥村から話を切り出した。


「中城さん、あの…僕はもうこうして元気になりました。だから、少しずつ中城さんの不安を拭えるように手伝わせてください」


相変わらず彼の優しさが胸に沁みる。

言いたくない。

でも、彼のためにも言わなければ。

そのために来たのだ。

私は大きく息を吸った。


「あ、あの…私のことは気にしないで大丈夫です。奥村さんは、その…好きな人と幸せになってください」


私の言葉を受け止めた奥村は、無言で荷物をまとめて立ち上がった。

突然の出来事に声も出なかった。

彼を怒らせてしまったのだろうか。


「中城さん、少しお時間をいただけませんか?」

「え…?」


私は彼に連れられて外に出ると、ゆっくりと歩き出す。

今日で最後なのだから、彼の()(まま)くらいには付き合おう。

彼は駅とは反対の住宅街の方へと歩いていく。

しばらく歩くと、ブランコとベンチがあるだけの小さい公園があった。

こんな場所があったなんて知らなかった。

彼はすぐそばにある自販機でお茶を購入すると、私の分まで手渡してくれた。


「どうぞ」

「あ、ありがとうございます」


両手で包み込むと、じんわりと温かった。


「まだ新卒で会社に行き慣れてない頃に偶然見つけたんです。夜は誰もいないし静かな場所なので、気分転換に何回か来たことがあるんです」

「こんな場所があるなんて知りませんでした」

「この場所は誰にも言ったことないんです。誰かと来たのは、中城さんが初めてです」


特別な場所に、なんて聞いてしまうとつい意識をしてしまう。

これ以上、彼のペースに乗ってはいけないというのに。

小さなベンチに2人腰掛ける。

とても静かだ。まるで私たちだけがいるような、そんな感覚にさえ(おちい)る。


「覚えてますか?最初に2人で出掛けたときのこと。中城さんに色々アドバイスもらったりしましたよね」

「はい、覚えてます」

「その夜、中城さんにお付き合いしている人はいるかって尋ねたんですよね」

「…そうでしたね」

「あのときは、すごく緊張していました。今ではそれも懐かしいです」


そういえばあのときは私も男性と出掛けたことがなくて、我ながらテンパっていたなとを思い出す。

あれからもう半年以上経ち、奥村とも色々なことがあった。

それも今日が最後にーーー


彼は(おもむ)ろに立ち上がると、公園の中央に向かって歩く。

空を見上げると、こちらを振り返った。


「中城さんに話したいことがあるって言っていたの覚えてますか?」

「はい」

「僕はあなたに謝りたかったんです」

「え?」

「僕はずるいことをしました。好きな人に嘘をついて、恋愛相談をお願いしました。そうしないと、その人に近づくのが怖かったんです」


思わず目を見開く。

繁華街で奥村と共に歩く女性の姿が脳裏に浮かぶ。


(奥村さんの好きな人はあの人なんじゃ…)


「でも、今では後悔しています。ちゃんとあなたに向き合えばよかったと。そうしたら、こんなにあなたを悩ませることもなかったのに」


雲間から月明かりが差し込み、奥村の姿が少しずつ照らされる。

彼の言葉を繋げていったとき、その意味が胸の中で紐解(ひもと)かれていく。

彼は私に一歩前に歩み寄り、真っ直ぐと向き合った。


「中城さん…僕はあなたが好きです。あなたの好きな人を僕にしてもらえませんか?」

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