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【完結】30歳、処女が恋愛指南していたけど、自分の恋愛は対象外です!  作者: 結城トウカ


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第66話 今後の対応

「どうして…」


記事にはお見合いについても書かれていた。お見合いは破談となったが、由井と取引先として偶然再会したことで急接近したという内容が載せられていた。

他にも私の経歴や由井の過去の火遊びまで(さかのぼ)り、長文で書き記している。

こんな記事が載れられていることに唖然(あぜん)とする。


「なんでお見合いのことまで…」

「SNSでもけっこう炎上してるみたいね…」


友香が見せてくれたスマホには、私について言及しているものが多かった。


《あみぃ》

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

あの女だれ?

薫様と釣り合ってないんだけど

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


《ゆう》

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

取引先って一般の人ってってこと?

ってことは、私にもチャンスあるのかなあ

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


《エミエミ》

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

由井さんが結婚したらマジでロスだからやめてほしい

結婚しないでーー

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


友香が深刻さを(にじ)ませながら呟く。


「もしかしてプロモーションで由井さんがメディアに出るようになったから注目度が高いと思われたのかな…」

「たし…かに…そうだね…」


私の提案したプロモーションが裏目に出たということだろうか。

いや、あれで売上や認知度も伸びたのだから間違っていなかったはずだ。

彼の知名度を考え、不用意に会うのは避けるべきだったか。

遅すぎる後悔が大きくなっていく。

私はストンと椅子に滑り落ちた。

放心状態の私に友香が心配そうに声を掛ける。


「翔子、大丈夫…?」

「うん、たぶん…」


私はどうすればいいのだろうか。

この記事の影響力はどれくらいあるものだろうか。

(つの)る不安をかき消すように、机の上に置いてあったスマホが着信を知らせる。

画面を見ると渦中(かちゅう)の相手からだった。

私は空いている会議室に入ると、そっと応答ボタンを押す。


「はい、中城です」

「由井です。実は、NN出版の雑誌に私と中城さんのことが載っていまして…」

「あ、はい、ちょうど今見てました…」

「驚きましたよね。ご迷惑をおかけしてすみません」


電話越しでも彼の声に元気がないのがわかった。

水橋屋が勢いに乗ろうというタイミングなのだ。

私よりも反響が大きかったに違いない。


「あの、この件についてどこかで話しませんか?」

「え…?」

「今後の対応も含めてお話できればと思いまして。セキュリティのしっかりした店を知っているので」

「…わかりました」


とても仕事ができる状態ではなかったので早退することにした。

年明け早々、散々である。

せっかく奥村と話せて幸せ最高潮だったというのに、気分は一気にどん底まで落ちていた。

重い足取りで由井から指定された場所に向かう。彼から告げられた場所は高級ホテルの20階にあるバーだった。

入口まで来たところで自分の場違いさに不安になる。


(こんなヨレヨレのスーツで入っていい場所じゃない…!)


由井に断って着替えてから出直そうと考えていたところに、ちょうど待ち合わせ相手がエレベーターから現れた。


「中城さん、お待たせしてすみません」

「あ、いや…」


私に構わず由井はバーの入口に立つ店員に声を掛ける。

彼が店内に消えていくので、私も慌ててあとを追う。

彼に追いつくと後ろから小声で(ささや)く。


「あの、ここドレスコードとかはないんでしょうか?」

「大丈夫ですよ、そんなこと言われたことないので」


それは由井がいつも着物姿だからではと思ったが、口にする前に店員の足が止まる。

そこは個室の部屋だった。

中に通されると、店員は(うやうや)しくお辞儀をして扉を閉めた。

5人は座れそうな大型のソファにローテーブルが置かれていた。

壁際には高級そうな花瓶に鮮やかな花が彩られている。

ただ窓はなく、全て壁に囲まれていた。セキュリティという観点から窓はあえて設置していないのかもしれない。


「ここは会員制の場所ですし、盗聴の心配はありませんので安心してください」


私はソファに腰掛けると、思ったより柔らかい座り心地に深く沈み込む。

扉から静かにノックが響く。

由井が返事をすると先ほどの店員が様々なフルーツとサンドイッチ、シャンパンを持ってきた。

彼は美しい動きで液体を注ぐと、(またた)く間にグラスがゴールド色に光り輝いた。

こんな昼間から酒を出すのかと思いながら、店員の所作を眺めていた。

役目を終えると、店員は再び部屋から下がった。


「どうぞ、好きなものを召し上がってください」


彼はシャンパンをひと口飲むと、シャインマスカットを一粒味わっていた。

私はそんな気分にはなれず、本題の話を切り出す。


「由井さん、あの記事って…」


私が言い終わる前に彼が差し込んで話す。


「私は何度か記事に取り上げられたことはありますが、あそこまであることないこと書かれるとは。記者について調べましたが、最近は鳴かず飛ばずの男でした。恐らく感謝の会で私が言った冗談が広まって、その男が真に受けた結果、話題性があると思って記事にしたのでしょうね」


そういえば由井が言った婚約者という話は外で案内係をしていた奥村の耳にも届いていた。

その冗談が外に広がっていく過程で、内容が変わっていってもおかしくはない。

だが、それで記事にまでするのは納得いかなかった。


「あの、それで、これからの対応って…」

「その前に、中城さん。あの記事を事実にするつもりはありませんか?」

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