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【完結】30歳、処女が恋愛指南していたけど、自分の恋愛は対象外です!  作者: 結城トウカ


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第48話 遊園地 その3

俺は少し離れた先にあった自販機で水を買う。

草太も飲むかもしれないと思って小銭を入れるが、ボタンを押す手を止めた。

返金レバーを降ろすと、小銭とペットボトルを取り出す。

自販機の隣にあるベンチに腰掛けると、勢いよく水を飲んだ。

ベンチに背を預け顔を上げると、そこには青空が広がっていた。雲がゆっくりと流れているのがわかった。空は青いな、と当たり前のことが頭に浮かんだ。


「陽介!」


呼ばれた方向に顔を向けると、草太がこちらに駆け寄ってきていた。

彼は少し息が切れている。走らせてしまったようだ。

草太たちから離れて何分経っただろうか。

時間のことを考えていなかったが、心配させてしまったかもしれない。


「なんだよ、なんで来たんだよ」


俺は前かがみになり地面を見ながら、ぶっきらぼうに答える。

もう家に帰りたかった。今、草太とは話したくなかった。

布団にくるまって、何も考えず眠りにつきたかった。

そんな子供じみた事を考えている俺に対し、草太は気遣うように言った。


「なんでって、陽介の様子変だったし」

「中城さんは?」

「お手洗い行ってくるって」

「ふーん。中城さん待ってた方がいいんじゃないの?」

「陽介、どうしたの?なんか変だよ」

「そんなことない…俺はずっとこうだったんだ…」

「何かあったんでしょ?」


草太は隣に腰掛けると、俺に身体を向けた。


「もしかして、俺ばっかり中城さんと話してたから…?」

「え?」

「え、だって陽介、中城さんのこと好きだって…」


その設定を忘れてしまっていたことを思い出す。

自分の余裕のなさに驚いた。

それほどまでに動揺していたのか。

いや、そんなことよりも今すぐ言い訳を考えなければいけない。

どう言えば誤魔化すことができるだろうか。

冷静に考えている思考と判断を迫られる思考が同時に駆け巡る。

そして、俺は考えることを放棄することを選んだ。


「あ~それか」

「それかってどういうこと?」


怪訝(けげん)な顔をする草太。

ほんの少しの気まぐれで正直に話してしまおうかと思ってしまった。

自分の気持ちを解放したくなったのだ。

明日の俺は、後悔しているかもしれない。

そうなった時、今日の俺を責めるだろうか。


「俺さ、ずっと好きな人がいて」


俺の予想外の返答に草太は目を見開く。

しかし口を挟むことなく、俺の言葉を待っているようだ。

彼の顔色を窺いながら言葉を続けた。


「でも、その人には好きな人がいて俺は見向きもされないんだ。だから中城さんを好きになろうって思ったんだけど、やっぱりだめだわ。その人のことが忘れられないんだ」


全てを正直には話せなかった。ほんの少しの理性が俺を型に留めようとした。

そのまま伝えれば、もう二度と草太と話せなくなる。

ただ、それだけが怖かった。

草太の顔をみると、言葉を選んでいるように見えた。

こんな話を打ち明けたことはない。いきなりの告白に戸惑っているのだろう。


「陽介はどうしたいの?」

「俺は…どうしたいんだろうな…」

「まだ答え出てないなら、俺も手伝うし。陽介の答えを俺は応援するよ」


草太と真っ直ぐに見つめ合う。

その純粋な眼差(まなざ)しが、俺の真意を見抜くことはない。

でも、もし、この想いを告げたら草太はなんて言うだろうか。


『俺は草太と幸せになりたい。 だから、俺じゃダメかな…』


(なんて、言えないよな…。そんなこと言えるくらいなら、とっくに言ってるよな…)


言葉にはできない気持ちが溢れるように、俺はふっと口を緩ませた。


「草太、ごめんな、ありがとう」

「俺はいいけど」

「まだ俺の中ではその答え出てないけど、少なくとも中城さんのことは諦めるよ」

「陽介はそれでいいの?」

「ああ、あとはお前に任せるよ」


話を切り上げるように俺は立ち上がる。それを見た草太も合わせて腰をあげた。

そのとき、寒風が俺の全身を強く撫でていく。

ただその冷たさも気にならなかった。むしろ気持ちいいとさえ感じた。


(もし、中城さんに振られたら、そのときは…)


俺は中城と合流するために、2人と別れた場所に向かって歩き出した。草太も横に並んで歩き始める。

すると、こちらに歩いてくる中城の姿があった。


「前野さん、大丈夫ですか?」


彼女も心配そうに俺の様子を窺う。


「なんか心配かけたみたいでごめん。もう大丈夫」

「そうですか、体調悪いなら、ここでちょっと休みます?ジェットコースターの待ち時間、2時間って出てから、友香たち待ってる間には乗れなさそうですし」

「2時間はすごいですね…」



ピロンッ


私はスマホを確認すると、それは親友からの連絡だった。


「あれ、友香からだ、今どこって…」

「え?」


私たちは現在地を伝え、その近くのベンチに座って彼女たちを待つことにした。


「あ、いた」


10分後、こちらに手を挙げる友香がこちらに歩いてくる。

その彼女の肩に、だらんと脱力した高須が担がれていた。

何事かと思い、私たちは急いで2人のもとへ向かった。

奥村が高須を担ぐ役を交代する。

高須に話しかけるが放心状態で口がきけない状態だった。

私は友香に事情を尋ねる。


「ど、どうしたの?」

「それが、皆来ないから、せっかくだし2人でお化け屋敷入ろうってなったんだけど、序盤の方で高須くんが驚いて倒れちゃってさ。途中リタイアしてきたってわけ

「高須くん…」


結局、高須が正気に戻るまで皆でレストランで過ごすことになった。

彼は意識を取り戻すと、気絶した経緯を思い出し、青ざめた顔で再び倒れ込んでいた。

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