表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】30歳、処女が恋愛指南していたけど、自分の恋愛は対象外です!  作者: 結城トウカ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

41/83

第39話 作戦会議 その3

思わぬ来訪者に、反射的に顔を(そむ)けてしまう。

私を気遣って、友香が小声で話しかけてきた。


「ごめん、まだ気まずかった…?」

「うん、ちょっと…」

「迷ったんだけど、前野くんも乗っかって彼を誘うから、つい…」


たしかに奥村への気まずい気持ちはあるが、嫌というわけではない。

自分の中での答えをまだ出せていないだけだ。だが、答えが出るまで過ごしてたら、彼に連絡するタイミングを失っていたかもしれない。

私は良いきっかけをもらったと気持ちを切り替えることにした。

打ち合わせのあとに彼に声を掛けようと決心する。

いざ決意を固めると、なるようになるだろうと、楽観的な気持ちになる。


高須と奥村が自己紹介を終えると、もう打ち解けているようにみえた。

高須の人懐(ひとなつ)こっさは一種の才能だろう。

3人で始まった会議が賑やかになったものだ。

奥村は私のもとに近寄ってくる。

何を言われるのかと少し身構える。


「中城さん、どこまで話が進んでるのか伺ってもいいですか?」


仕事の話でほっとする自分がいた。彼は気にしてないのか普段通りにみえる。

私は彼に説明するために慌てて資料を探し始める。


「え、あ、はい、え~と…」


手に取った資料を落としてしまい、まとまっていた資料が床に散らばる。

私の様子に見かねた友香が救いの手を差し伸べる。


「あ、私が説明するよ!翔子、お腹減って頭回ってなさそうだし」

「あ、うん、ごめん、ありがとう」


奥村は何か言いたそうにみえたが、何も言わなかった。友香は食事をしながら、現状の説明を始めた。

奥村もおにぎりを食べながら、時折彼女に質問を投げかけている。


一方、高須は前野に興味津々のようで、彼に営業トークのイロハを尋ねていた。

私は彼らの話の間で適度に相槌(あいづち)を打ちつつ、静かに食事を進めた。


皆、食事を終えると、自然とアイデアの詰まったホワイトボードに目を向けていた。

各々(おのおの)が何か(うな)りながら、考えを(ひね)り出そうとしている。

そんななか、いち早く奥村が考えを声に出した。


「企業向けのセミナーを開くのはどうでしょうか?

リアルでもオンラインでも、業界の知識や実情をまとめて発表するとか。うちが各方面とのやり取りがあるからこそできるのかなと。

高須くんの言ってたプロモーション動画も流せたら、うちに興味を持ってくれる会社もあるんじゃないでしょうか。そこから契約に繋がったり、他の企業さんを紹介してもらったりしてもいいですし」

「それいい!」

「いいっすね!」


彼の意見に賛成の声をあげる。

急遽呼ばれたにも関わらず、アイデアを出せるのはさすがとしか言いようがなかった。

私も心のなかで、彼のアイデアに賛同の意を示した。

現実的かつ成約率も上げられそうだ。なおかつ低コストで実施できるのが最大の魅力だ。

決裁も折りやすく、利益率も確保できる。

激動の定例会の翌日には、方向性がまとまりつつあった。

まだ会って間もないメンバーのはずだが、それぞれが役割を果たせているように感じた。

今日は解散し、明日はプロモーション部の3人でまとめ直したものをもとに、収益シミュレーションやプロモ動画の絵コンテ作りを担当することになった。


帰宅の準備をしていると、奥村が先んじて会議室を出る。

せっかく彼と話そうと思ってたのに、そのタイミングを(いっ)してしまう。

友香が私を追い払うように、手で払う仕草をする。追いかけろということだろう。

私は(うなず)くと、奥村の後を追いかけるために会議室を出る。

彼はちょうどエレベーターに乗り込んだところだった。


「奥村さん…!」


しかし、彼は私に気づかなかったようで、無常にもエレベーターの扉が閉まっていった。

私は咄嗟(とっさ)にそばにある非常階段に駆け込む。

3階なので、走ればぎりぎり間に合うかもしれない。


1階エントランスにたどり着くと、エレベーター前で奥村が出口に向かって歩いているところだった。


「お、奥村さん…!」

「中城さん、どうして…」


私は息を切らしながら、よろよろと彼のもとへ歩いていく。

奥村も私のもとへ駆け寄ってきた。

私は喉の痛みをやわらげるように生唾(なまつば)を飲み込む。

息も整える前に言葉を絞り出す。


「あ、あの、この前のこと…」

「すみませんでした」


奥村は私の言葉を(さえぎ)るように頭を下げた。

どうして彼が謝っているのか。謝らなければいけないのは私なのに。

保身のために嘘を重ねている私なのに。


奥村はそれ以上なにも言わなかった。

彼は振り返ることなく、歩いていった。

彼を引き留めようと手を伸ばそうとしたが、その手は少しずつ下がっていった。

彼に伝えようとした言葉は宙に舞うことなく、私の胸の中で消えていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ