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【完結】30歳、処女が恋愛指南していたけど、自分の恋愛は対象外です!  作者: 結城トウカ


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第32話 お出かけ その1

「奥村さん、お待たせしてすみません」

「いえ、僕が早く来すぎてしまっただけ、なので…」


奥村の発した音が(おぼろ)げになると、ついに何も聞こえなくなってしまった。

言葉の代わりに彼の視線を真正面に受ける。


「お、奥村さん?」


彼はハッとすると私から目を逸らし、自分の口を手で覆う。

彼の頬がどことなく赤くなっているのに気づいた。


「きょ、今日は、いつもと雰囲気が違って見えます…」

「そ、そうですかね。ちょうど買った服があったので…」

「中城さんに似合っていると思います」

「ありがとうございます…」


奥村と最初に出掛けた時、後悔したことを踏まえ、女性らしい服を購入していたのが功を奏したようだ。

お互い不慣れな挨拶を終えると、二人は揃って歩き始める。


「い、行きましょうか」

「そ、そうですね、行くお店とかは決まっているんですか?」

「いえ、特に好きなブランドとかもないので、中城さんに選んでもらえたらなと思って」

「じゃあ色々お店見て回りましょうか!」


照れる気持ちを振り払うように、私は明るく振る舞った。

私たちが向かったのは駅から10分ほど歩いた先にある複合型商業施設だ。

店舗数は200以上を越えており、外国人も多く訪れる観光地となっている。

休日ともなれば、観光地としてだけではなく、老若男女楽しめるショッピングモールとしての本領を発揮していた。

私たちは人混みを避けつつ、ウィンドウショッピングを楽しみながら、各フロアを覗いていく。

いくつかお店に入り、服を見てまわる。

なかなか目ぼしいものがなく、何軒目かの店舗に足を踏み入れる。


「本日は何かお探しですか~?」


にこやかに店員が私たちに声を掛けてきた。


「いえ、特に決めてはいないんですが」

「お兄さんだったらこういうの似合うんじゃないですか?」


店員はどこからともなく、秋冬用のアウターを取り出す。

鏡で合わせてみると、たしかに奥村に合っているような気がした。


「彼女さんもどうですか?彼氏さんカッコよくないですか?」

「か、か、彼女なんかじゃないので…!」


私は大げさな身振りで否定すると、店員と奥村は時が止まったように私をじっと見ていた。

店員が口を開くことで、ようやく周りの時間が動き始める。


「あ、それは失礼しました。お兄さん的にはどう?」

「…そうですね、一度着てみようかな」

「じゃあ、これとこれもどう?このアウターとコーデもできるし、汎用性あるからお兄さんの持っている服とも合わせやすいんじゃないかな」


私の視界は床を写してばかりで、彼らを見ることも(はばか)られた。

自分の行動に呆然としてしまう。

傍で話す2人の会話も上の空になっていた。


(あんなに必死に否定して変なふうに思われたかな…私、なにしてるんだろう…)


「中城さん」


私は自分が呼ばれていることに気づいて、勢いよく顔を上げる。


「大丈夫ですか?」

「あ、はい。大丈夫です!」

「僕ちょっと試着してみます」

「あ、じゃあお店の中で待ってますね!」


私は試着室へと消えていく奥村を見送る。


奥村は試着室のカーテンを閉める前に、中城をちらっと見る。

どうも今日の彼女はいつもと様子が違うような気がしていた。

彼女のことを心に(とど)めつつ、カーテンを閉めた。


「お待たせしました」


数分後、奥村がカーテンの奥から現れる。

黒のモッズコートに、紺のインナーとジーパンといったコーディネートだった。

彼らしさを残しつつ、大人っぽさが付け加えられていた。

直視できないほど、魅力的に感じた。


「どうですか?」

「すごく、カッコいいと思います…!」


つい思った言葉を口にしてしまう。自分の身体が熱くなっていくのを感じる。

つられた彼も頬を染めながらお礼を言う。


「あ、ありがとうございます」


軽く微笑む彼の表情でさえ、今の私にとっては眩しく感じる。

店員はその様子を見ると、うんうんと頷く。彼女の言葉もあり、奥村はそのまま服を購入した。

どうやらそのまま購入した服を着ていくようだ。


目的を果たした私たちだったが、お昼時ということもあったので、

フードエリアにある洋食を扱うレストランに入る。

お店のオススメのメニューを堪能する。


「中城さん、このあともご予定って空いてますか?」

「は、はい」

「ここの施設に小さいんですが、水族館が併設されているので、よければ寄っていきませんか?」


ごくんとオムライスを飲み込む。

水族館といえば、デートスポットとしては定番の場所だ。

これ以上奥村と一緒にいると、彼のことをより意識してしまいそうだ。

しかし、彼が好きな人とのデートプランの一角かもしれない。

断ろうか行こうか悩んでしまう。


「今日、ペンギンのお散歩があるらしくて、近くで見れそうですよ」


ペンギンたちが歩いている様子を想像すると、その可愛らしさが目に浮かぶ。


「いいですね!行きましょう!」


ペンギン見たさに彼の申し出を受ける。

私たちはお会計を済ませると、水族館へと向かった。

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