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【完結】30歳、処女が恋愛指南していたけど、自分の恋愛は対象外です!  作者: 結城トウカ


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第27話 お菓子博覧会 その6

1日目の売上は予想通り午後もさほど伸びず、目標の売上には程遠い数字となってしまった。


お菓子博覧会2日目。

雨予報に反して、どんよりとした曇り模様となった。これはありがたい誤算だった。

気温も暑すぎない程度に落ち着いたが、湿度が高く(まと)わりつくような空気が(わずら)わしく感じる。


そんな天気にも関わらず、私は晴れ晴れとした笑顔を浮かべている。

なぜなら、会場には予想を上回る来場者が訪れていたからだ。

賑わいをみせている人の多くが若者の姿だ。

彼女たちの手には、赤を基調としたチケットが握られていた。


(こんなにうまくいくなんて…)


我ながら自画自賛の秘策だったと喜ばしく思う。

昨日の努力がこれで報われたというものだ。


私は昨日の午後、会社でデザイン案を出し、付き合いの長い印刷業者に懇願し、急いでチケットを刷ってもらった。

企画メンバーにも協力をしてもらい、近隣の中学、高校で学生に向けて配りまわっていた。

配布したチケットは、1枚につきお菓子博覧会で販売されているスイーツを1つ無料で食べることができる。


休日ともなれば、若い世代は家族や友達同士で訪れてくれる。

トレンドに敏感な彼女たちによるSNS効果や口コミ効果も期待していた。

そして会場が賑わっていれば、その様子が気になってお菓子博覧会を知らなかった人も足を運んでくれると(にら)んでいた。

おかげで、この盛況を呼ぶことができたのだ。

会場内はアミュゾンを筆頭に、多くの店舗で長蛇の列を成していた。

飲食スペースも満席で、会場の各所で彩り豊かなスイーツを堪能する人々の姿が目を引いた。


「いや~、賑わってるね」


顔を向けると、そこには私服姿の前野の姿があった。

周りにいる女性客の視線がスイーツから前野へと移り変わっている。小声で話しているのは、きっと彼についてに違いない。

だが、慣れているのか彼は全く気に留めていない様子だった。


「前野さん、来てくれたんですね!」

「そりゃあ中城さんが手かげてるイベントなわけだし。軽く挨拶をと思って」

「ありがとうございます!ぜひ満喫していってください!」

「忙しそうだけど頑張ってね」

「はい!」


前野はその場を離れる。

彼の後ろを女性たちが歩いている気がするが、気のせいだということにしておこう。


その後も雲がもちこたえ、雨粒が降り注ぐこともなかった。

2日目の売上はV字回復をすることができた。


お菓子博覧会3日目。

昨日に引き続き多くの反響を呼んでいた。

天候にも恵まれ、この日は日差しが(まばゆ)い秋晴れとなった。

私はトラブルがないか会場を見て回る。

幸せそうにスイーツを頬張(ほおば)る人たちを見ると、お菓子博覧会をきっかけに「人とスイーツを繋ぐ」ことができたと胸がいっぱいになる。


関係者スペースに戻ってきたところで、こちらに向かって歩く私服姿の奥村の姿が目に入った。


「あ、奥村さん!」

「中城さん、お疲れ様です」

「来てくれたんですね!ありがとうございます!」

「アミュゾンのケーキも気になってましたし。中城さんが準備したイベントなので」

「アミュゾン出店も奥村さんの協力あってなので、今度是非お礼をさせてください!」

「いえ、気にしな…」


彼は言葉を止めると、何か考え込んでいるようだった。

どうしたのかと彼の様子を(うかが)っていると、考えがまとまったのか彼は言い直す。


「お礼…その、例えば前みたいに一緒に出かけるとかもよかったりしますか…?」

「え、私とですか?」

「は、はい。気になっている服があるんですが、中城さんの意見ももらいたいたいなと思って…」


彼は恥ずかしそうに理由(わけ)を話す。

私の意見ということは、デートで着ていく服ということだろうか。

そういうことであれば、恋愛相談役として断ることはできない。


「私でよければ!」

「ありがとうございます!」


彼の申し出を受けた途端に嬉しそうに微笑む奥村。

出会った頃より、彼の表情の変化にも気づけるようになったなと感じる。


「忙しそうですけど、頑張ってください」

「はい!」


(このやり取り、なんかデジャヴだな…)


鮮やかな青空が少しずつ彩度が落ちていく。

3日間行われていたお菓子博覧会もその幕を閉じようとしていた。


3日目の閉場間近。人の出入りがまばらになった頃を見計らって、アミュゾンの店舗を訪れる。

店舗にはイチゴ、オレンジ、チョコレート、マンゴーの4種類のメニューが掲示されていた。

しかし、そのどれも「SOLD OUT」の文字が重ねて貼り出されていた。


「中城さん、やっときたわね」

「遅くなってすみません…!ずっとバタバタしてまして…」

「いいのよ。あなたも忙しいのはわかっていたから。でもこれだけはあなたに食べてほしくて、取っておいたのよ」


彼女は小さなクーラーボックスから、カップに入ったケーキを差し出した。

大きなイチゴがのったケーキ。そしてイチゴに添えられるように星型のクッキーがのっていた。

食べるのがもったいないくらいだが、私はその場でケーキを口に運ぶ。


「ん~~~~!!」


イチゴの酸味と甘さ控えめのイチゴのクリーム、そしてそれを際立たせるようなヨーグルトのクリームが、それぞれ絶妙なバランスで口の中に広がる。

クッキーの甘みを噛み締めながら、再びもう一口(ひとくち)

食べ進めていると、冷えたクリームが少ずつしっとりと濃厚になっていくのがわかった。

ケーキを楽しんでいるうちに、あっという間に完食してしまう。

私が提案したレシピだったが、さらに彼女の力でここまで満足感のあるケーキに仕上げたのは、さすがとしか言いようがなかった。


「どう?美味しいでしょ」

「すっごい美味しいです!あの短期間で本当にケーキを作り上げるなんてすごすぎます!」

「気に入ったら、またぜひウチのお店に買いに来てね。サービスさせてもらうわ」

「もちろんです!」


閉場後、無事撤収作業も完了し、会場はまっさらな場所に戻っていた。


社内でプレゼンをしたり、イベントのスケジュールを組んだり、アミュゾンの出店辞退のトラブル、奥村とレシピを考えたり、台風の対策で学校を駆け回ったりと、激動だった日々の思い出が蘇る。


「終わっちゃったんだなぁ…」


一抹の寂しさを感じながら、私は会場をあとにする。

結果的に、最終日の売上は2日目もさらに越え、お菓子博覧会はめでたく大成功に終わった。

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