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【完結】30歳、処女が恋愛指南していたけど、自分の恋愛は対象外です!  作者: 結城トウカ


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第24話 お菓子博覧会 その3

私は会社に戻ると、野上部長含めプロジェクトメンバーにアミュゾンの件を情報共有する。


「浅野さんより優れているレシピ…」


皆、不安そうに顔を見合わせる。

悲観的な状況であることは間違いないが、気落ちしている場合ではない。

期限の明後日まで時間がない。

私たちは、やれるところまでやろうと意気込む。


プロジェクトメンバーと野上部長を交えて、思いついたレシピ案をいくつか書き出すが、どれも無難なレシピ案に感じてしまう。

これでは、あの有名パティシエを唸らせることはできないと全員が思っていた。

どうしたらいいか道筋がみえないまま、刻一刻と時間が過ぎていく。

他業務も抱えているメンバーもいるので一旦解散し、また明日の朝それぞれアイデアを持ち寄ることとなった。


私は自席に戻り、スイーツについてネットの海を(あさ)る。

調べれば調べるほどスイーツの難しさの壁にぶつかる。

彼女の得意とするケーキには、大きく分けて4つの工程がある。

生地作り、焼く、クリーム作り、仕上げのデコレーションだ。

思いつくだけでも、ショートケーキ、チーズケーキ、チョコレートケーキ、フルーツケーキ等数多くの種類がある。

生地にしても、スポンジ生地、タルト生地、パイ生地。

クリームも、ホイップクリーム、生クリーム、カスタードクリーム。

カスタマイズが幅広い分、どこをアレンジしたらいいのか、それは作ることができるのか、そして予算と見合っているのかが素人にはわからない。

当然だが突飛なレシピを持っていったとしても、実現可能なものでないと意味がない。

パティシエの彼女と違い、我々は試作品を作って試行錯誤することはできない。

ひたすら頭の中で想像しながらレシピを考え続けるしかない。

だが、これを不利と捉えるかは別の話だ。

彼女とは違う視点で物事を見れる点はきっと武器になるはずだ。


ケーキではなく別のスイーツ案を持っていくべきかとも考えたが、ケーキ以外のレシピを持っていっても、それではアミュゾンに出店してもらう意義がなくなる。

アミュゾンの良さを活かしつつ、浅野を唸らせる必要があった。


ふと見上げると、壁時計の針が21時を指していたことに気づく。

もうオフィスには誰もいない。

私はぐ~っと大きく伸びをする。


彼女を感心させられるようなものは思いつかないが、ひと息つくことにする。

コンビニに向かおうかどこかで軽く夜食を食べようか迷っていると、オフィスの扉が突然鳴り出す。


コンコンッ


ドキッと心臓が鳴る。

扉の奥から現れた奥村を見るとほっとする。しかし、それと同時に疑問が浮かび上がってくる。

彼がプロモーション部にやってきたのか見当がつかなかった。時間的に、業務上の理由ではないはずだ。


「奥村さんでしたか、お疲れ様です。どうかしましたか?」

「えっと、小腹が空いてコンビニに行ったんですが、買いすぎちゃって。もしかしたら中城さんがいるかもしれないと思って…もしかして、お邪魔でしたか?」


彼は私の机の散らかり具合いを確認し、まだ私の仕事が終わっていないことを察したようだった。

すると、私の代わりにちょうど私のお腹の虫も勢いよく返事をする。


「…ちょうどお腹が空いたところでした」

「それはよかった」


恥ずかしくてたまらない私だったが、彼はお腹の音について触れることはなく、優しく微笑むと私の隣の席に座る。


「奥村さんもまだ仕事だったんですか?」

「あ、僕はちょうどさっき終わったところです」


奥村は持っていた2つの袋から、おにぎりやサンドイッチ、コンビニスイーツのエクレアやプリンなど、各種様々なものを取り出す。

どうみても1人分ではない。


「もしかして…奥村さんって、食いしん坊なんですか?」

「え、あ、いや、どれも美味しそうで、つい…」


コンビニであれもこれもと手に取る姿を想像すると、お茶目で可愛らしいなと思ってしまう。

私の机にある資料を見た奥村が疑問を口にする。


「今はスイーツ関係の企画をされているんですか?」

「そうなんです!今月末にお菓子博覧会があるんですが、そのプロジェクトリーダーを任せてもらったんです!」

「え、すごい!毎年人気のイベントじゃないですか!」

「そうなんです!私も成功できるようにって頑張っていたんですけど…」

「何かあったんですか…?」


私はご飯を食べながら、アミュゾンの経緯を奥村に話す。


「パティシエの方より良いレシピですか…」

「なかなか糸口が思いつかなくて…イベントテーマと絡ませられたらと思っているんですけど、余計にこんがらがってきちゃって…」

「難しいですね…「人とスイーツを繋ぐ」ですか…。美味しいスイーツに出会えて、その人が笑顔になってくれたら、それは繋げたって言えますけど、それが一体どんなケーキなのか…」

「そこなんですよね…」


2人でPC画面を見ながら、色んなケーキの画像を眺める。

ずっとケーキを見ているので甘いものが食べたくなってくる。

すると、見計らったかのように、私の前にプリンを差し出される。

私はもらったデザートを食しながら、レシピについて再び考え始めていた。


「まずどのケーキにするか決めないと…」

「あの、印刷して並べてみたらどうですか?なにか思いつくかもしれないですよ」

「たしかに、そうですね!」


ネットの画面で見ているより、並べてみたときに、なにか思いつくヒントになるかもしれない。

私はケーキの画像たちを印刷にかける。

奥村はデザートのエクレアを食べながら、印刷された資料を持ってきてくれた。

私は彼の仕草を見たときに、一筋の光が見えた気がした。

勢いよく立ち上がると、奥村に大股で歩み寄る。


「これだ!!!!」

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